なつの栞㊵ 無口だが暖かな眼差し
通勤時間帯の、ターミナル駅での乗り換えは、ある意味、のんびりした気持ちではいられません。緊張感を持って歩きます。
通勤時間帯、それぞれに皆さんほぼ同じ方向を向いて、列をなして一定の速さで急いで歩いています。
時には、その列を横切ったり、流れに逆らい真正面から人がきて衝突しないかとドキドキしますが、巧みに移動しています。
その、流れの中に、
目が見えないのでしょう、白杖をつくご年配の女性に目がとまりました。
杖の振り幅は広く、歩くテンポは、まわりに合わせようと、必死に歩いていますが、流れより遅れ気味です。
しかし、当たり前のように、そのご年配の女性を囲うように、邪魔しないように配慮し、間隔をあけたりと、その女性のテンポを乱さないように、安全を確保しながら、列を崩さず高速な歩みで進んでいる人々。
無言ながら、心のなかでは女性にたいして「気をつけて歩いてね」「転倒しないでね」「ゆっくり歩けずごめんなさい」という声が聞こえてきそうです。
皆さん、無言で必死に歩いてます。
一人一人から暖かな眼差し、心が伝わってきます。