のんべえ
初恋の相手は中学卒業後に遠くに引っ越して行った。でも僕は彼女に告白することは出来なかった。彼女とはそれなりに仲良かったけど、もっと長く一緒に居られるものだと思っていた。
「来年から高校生だね。籠原さん。」
僕と籠原さんは冬のまぁそれなり寒い中で公園のブランコに乗りながら会話を交わす。
「そうだね。義務教育が終わって責任というものが身近になっていく気がする。」
「また来年もこうして会おうね。中学校だけじゃなくて高校でも籠原さんのことが忘れられなさそう。」
「翔(かける)君。私ね。高校は九州の方に行くことになるから会うことは出来ないと思うよ。」
突然のことだった。でも籠原さんと過ごす残り少ない日数を大切に過ごしていこうと感じた。お互いにまだ携帯電話も持っていない時だったから連絡手段なんてなかった。
「翔君。私行きたいところがあるの。」籠原さんが連れて行って欲しいと行った場所には、一緒に行った。シクラメンの咲いている丘を眺めたり、有名なラーメン屋に2人で行ったりして残り少ない中学校生活と籠原さんと過ごす日々を楽しんだ。1年間だけ教室は一緒で他は違ったけど、住んでる場所が近くだったから仲良くなった。
色々な思いを抱えたまま、中学校の卒業式を迎えた。大きな中学校だから式典には時間がかかったけど、あっという間に感じた。もう間もなくで籠原さんと会えなくなるのだと思うと。
翌日、籠原さんは引っ越していく。
「翔君。今までありがとうね。また会えるか分からないけど、お元気で。」
「こちらこそ、籠原さんと過ごせて嬉しかった。気をつけて。」
「寂しい時はこのCDを聞いてね。」
そうして籠原さんはCDを僕に渡すと、車に乗り込んで空港まで向かっていった。 見送る時は泣かずにいられたけど、もうダメだ。寂しさで涙が零れてきた。
家に帰ってそのCDを開いてみる。
こんな曲が聞こえてきた。
明日から俺らは はなればなれ
それはお互いの 夢を追うためだから
寂しいなんて 口が裂けても言わない
だから君と
お互いの夢が叶ったら 2人で飲もうね
あんなことがあったなって
語り合いながら
そんな日が来るために
今日も俺は頑張るよ
だからお前も頑張れよ
お互いの夢が叶ったら 2人で飲もうね
こんなことがあったな って語り合いながら
そんな日が来るために今日も
俺は頑張るよ だからお前も頑張れよ
約束だぞ 俺は諦めねぇから
それが籠原さんからのメッセージのように聞こえて何だか勇気付けられたようであっても涙が溢れるのには変わりはなかった。まだまだ僕は弱いなぁ。
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