癌日記②

開腹手術

入院当日、病院へ行って手続きを済ませました。付き添いしてくれた夫は病棟の待合までしか入れず「ご家族の方はこちらまで」と言われたので「じゃあ行ってくる」「頑張ってね」と別れて、お互い見えなくなるまで手を振った記憶があります。看護師さんは「仲良しですね」と笑っていました。恥ずかしい。

入院当日〜手術前日までやることが多かった記憶。渡された予定表のタイトルに「卵巣がん根治術」と書いてあって「私って癌なんだ……」とそこではっきり自覚したような覚えがあります。

手術の説明を受けて、下剤を飲んで、私の手術に関わってくださる方が代わる代わる挨拶にきてくれて、下剤を飲んで、「なんじゃこりゃ」みたいなご飯をいただき、挨拶に来て、バイタル測って、下剤飲んでを繰り返して手術当日を迎えました。

朝イチの手術だったので、点滴のルートを取ってもらい医療用のメディキュットを履いて、ベッドに座りながら音楽聴いて待ってました。呼ばれて、待合で待ってくれていた付き添いの夫と手術室まで向かい、ここでも「じゃあ行ってくる」「頑張ってね」と別れました。

手術室はドラマで観るようなのをもっと無機質にしたみたいな感じでしたがジロジロ見る間もなく手術台に横になり麻酔の説明や様々な処置をしてもらいました。主治医の先生が目を見て力強く「頑張りましょうね」と言ってくれたのが印象的でした。

麻酔を入れられて気づいたら手術が終わっている感覚を始めて味わいました。手術前後の記憶は曖昧ですが起きたら病室まで運ばれているところで、夫と出会って10年以上経ちますが、はじめて「頑張ったね、手術終わったよ」ととても優しい声で言ってくれました。そんな優しい声出せたんだ、とぼんやり思いました。

あんまりビビらせるようなことを言いたくないし、かと言って「楽勝!楽勝!」と嘘をつく訳にも行かないので正直に話しますが、術後はハチャメチャでした。震えるくらい寒くなったから電気毛布かけてもらったら、5分後には汗だくになるくらい暑いし、いてーし、なんか気持ち悪いし、足につけてるフットポンプは鬱陶しいし、痛いし、身体が言うこと聞かないしで漠然としんどかったです。

早期離床、私は初日ありえないくらい気持ち悪くなってサァッと血の気が引いて失敗してしまいました。迷走神経反射だと思うと言われたので、早期離床の予定の時間1時間前から足の指や動かせるところを動かしたりしてなんとかトイレに行けたので様々な管から解放された時はホッとしました。

そこから退院までは、創部の痛みと戦いながら歩数を稼ぐ毎日です。ただ、術後3日目くらいに主治医が「迅速病理診断の結果、やはり未熟奇形腫でした。ただ、手術で腫瘍は取り切れたし転移はなかったですよ」と言ってくれたので、想定内で済んだことに安心しました。

私が手術入院中に気にかけたことは「飯食って寝る」ことです。のちの化学療法でも同じですが、とにかく食って寝る、外科的手術の場合は歩くことも関係してくると思いますが食って寝ることが一番快復に良かったなと思います。昔、アスリートの友達が好きな食べ物を聞かれて「食べることも仕事だから好き嫌いとか考えたことない」と言ってたのを思い出して「食事も治療!」と思いながらシャバシャバのお粥やうっすーーーい味噌汁を飲んでました。もちろん無理は禁物。

退院日。夫が迎えに来てくれて、無事シャバに出ることが出来ました。あの時の空の色、今でも忘れらんねえよ……

次回、化学療法編


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