運ころがし
歩道を歩いていると、タッピーの目の前にカラスのフンが落ちてきた。
あと1センチでも足を前に出していたら、靴にべちゃっとくっついていたに違いない。
運がよかったと思った。
その3日後、バスを運転しているとフロントガラスにハトのフンがべちゃっとくっついた。
運がよくなかったと思った。
以前の記事でハトよりカラスが好きと言ったのを怒っているのだろうか。
「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」という映画がある。
老人として生まれ、時間が経つごとに若返っていく男性、ベンジャミン(ブラッド・ピット)が主人公だ。
ヒロインはバレエダンサーの女性、デイジー(ケイト・ブランシェット)。
デイジーはバレエダンサーとして活躍していたが、事故に遭ってしまう。
そして、バレエダンサーとして踊れなくなっしまう。
ベンジャミンはデイジーがこの事故に遭うまでに起こった様々な出来事を振り返る。
「もしも、あの人の靴紐が切れなかったら」
「もしも、あの人が寝坊しなかったら」
「もしも、あの人がカフェに寄らなかったら」
どれか一つでも「そうしなかったら」、デイジーは事故に遭わなかったのだと。
ベンジャミンは、人間は運命に対して無力であると語る。
「時に私たちは、そうとは気づかないままに、障害に向かっていく。それが偶然でも意図的なものであっても、できることはなにもない」
運転していると、事故に遭うこともある。
「もしも、あのとき信号で止まっていれば。」
「もしも、あのとき右だけでなく左を見ていれば。」
「もしも、あのとき一秒でもタイミングがずれていれば。」
事故に遭わなかったのに。
以前、30年以上運転経験のある先輩にこんなことを聞いた。
運転士は運を転がすと書くだろ?
だから俺たちは運をうまく転がさないとだめなんだ。
日頃から何も考えないで運転していると運を使ってしまう。
そうすると、いつか運がつきて事故に遭うんだ。
運の貯金をしなければだめなんだ。
この先輩の言葉をきっかけに運に対する見方が変わったように思う。
運命に対して、自分たちは無力ではないと思う。
安全運転を心がけることで、運を貯金できると思う。
はたしてタッピーの通帳には残高が残っているだろうか。
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