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デジタルサイネージの活用を想像してみる

デジタルサイネージとはどんなものなのか、価値はありそうなのか、なんとなく実態は見えてきたので、次のステップに進めることにしました。実際の活用を想像してみると、まだまだ周辺環境の見通しが立っていなかったので、沢山の根回が必要だと考えて動き始めました。

まずは、コンテンツを作ってくれる協力者として、広報部門や社会貢献部門、人事部門などに掛け合いました。デジタルサイネージとはなんぞやという説明や、利用の仕方と見込まれる効果を説明して、最後はコンテンツを作って欲しいとお願いをして回ったのです。

皆さんイメージは持ってくれますが、気にされるのは手間と時間でした。自分達で言い出したものでもないことを業務として扱い、労力と時間がどれほどか必要になっても、コンテンツを見てくれる人からの評価もさることながら、上司や同僚からの評価もされないのではないかと、不安になっていました。

そこで、話を持ちかける人はなるべく役職の高い人にネゴをつけて、聞いていただく努力はしました。

こうして恒常的に放映されるコンテンツを、いくつかの部門にお願いできることになり、どんな場所で誰に向けたどんなコンテンツを放映するのかが見えてくると、静止画や動画ファイルがどの程度必要になりそうか、ファィル容量の想定もできるようになります。

その情報を持って、次はIT部門に回線使用の承諾をしてもらうお願いに行きました。当時の会社のインフラとしては、余裕のある回線容量でもなく、社内通信環境を構築する時点でデジタルサイネージなど全く想定していないIT部門には、トラフィックが問題になると怒られる前にお願いと根回しが必要でした。

当時は、昼休みにみんなが一斉にストリーミングするだけで伝送速度が極端に遅くなってしまうような環境でした。デジタルサイネージのデータ配信では、東京の本社部門から他県にある事業所のサーバーに向けて動画を送ったり、モニターごとに設定されたコントローラーにコンテンツを配信する必要があり、これらを夜間の予約設定にすることで了承が得られ、動画の配信もできることになりました。

ここまできて、やっとハード構成の詳細仕様決めに入ることができます。

モニター設置場所は要望や設置環境から決めることができたのですが、どの場所に何インチのモニターを設置すれば良いのかは、特に経験もないため悩みました。結局、アナログ的に模造紙を用意して、現地で設置高さも想定しながら、模造紙のモニターで大きさを決めていくしかありませんでした。

液晶モニターも1インチ1万円と言われていましたので、モニター解像度(まだHD画質まででした)もさることながら、大きさはすぐにコストに跳ね返るものでした。当時の最大画面だった56インチの迫力は多くの場所に設定したかったのですが、当然、設置場所は限られました。

さて、この時点ではまだデジタルサイネージ購入の稟議も起こしていませんし、役員への説明もしていないのですが、コンテンツの作成分担、放映場所の決定、通信回線の確保、放映内容や番組表による見通しをたてて、ようやくハードの仕様も決まり、見積もりの依頼が可能になります。

稟議前の役員への説明では、デジタルサイネージのハード構成や費用の説明にも時間がかかりましたが、それ以上にコンテンツ運用面に力を入れて説明をしています。

デジタルサイネージをどう活用するのか、広報や社会貢献部門がお客さんへ向けたコンテンツでインパクトを与え、社内に向けては、広報や社会貢献の情報に加えて、人事(秘書室)や総務が社員に一体感を抱く情報をどれだけ流せるか、果たして効果は得られそうなのか、説明を繰り返しました。

難しかったのは、効果の得られている他社の前例がなかったことで、空論にならないように慎重で具体的な説明が必要でした。

通用口やエレベーターホールなどのモニターでは、短い時間でも社長や役員の発言が社内イントラにアップされた事を伝えるようにして、みんなにきっかけを作るとか、技術の成果発表や展示会などは積極的に多くの社員が参加できる機会を増やすとか、食堂では社内活性化イベントの様子や、文化スポーツ活動の様子を流して広く知ってもらうなど、会社の一体感の醸成にデジタルサイネージが活用できることを訴えました。

役員に大きな声でもう一つ説明できたのは、防災テレビ機能でした。設置した40台のうち、10台ほどのモニターはTVチューナー付きにして、各建物ごと、主要なフロアで災害情報を得られるようにしたのです。

会社からの承認も得られて、デジタルサイネージを導入することになり、なんとも高額な買い物でしたが、導入したからには頑張って活用しようと、いろいろ考えて取り組んでいくことになりました。

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