デジタルサイネージの導入検討
10年前の話になりますが、会社にデジタルサイネージを導入してみませんかと説明を受けたことがありました。
結果的には導入をしたのですが、導入から運用までの経緯や苦労したことを書き残してみたいと思います。
そもそも、デジタルサイネージという言葉が一般的でもなかった頃、一番理解しやすかったのは「電子掲示板」という説明でした。
モニターに遠隔でコンテンツを映して、紙芝居のようにコンテンツを入れ替えて見てもらうというもので、当時は液晶モニターも大変高価でしたし、小さなフォトフレームがやっと流行り始めたころでした。
今でこそ駅のコンコースや車両でも当たり前のように目にしますが、会社の中で利用するサイネージとなると、ますます前例が少ない時期でした。
会社の中で総務が、社員向け社内向けににお知らせをする方法は、当時は放送とポスター掲示が通常でした。そしてポスター掲示には、結構な労力が必要でした。
というのも、敷地が広いうえに建物が複数あったので、掲示板の場所だけでも二十箇所以上、5階建と7階建の建物のワンフロアに最低一箇所ずつ、1階建ての細長く広い建物には一棟だけでも数箇所ありましたので、一種類のポスターだけでも2時間ほど歩き回って貼って歩いているような状況だったのです。
さらに、ポスター掲示は掲載期限がすっかり終わっているイベントのポスターが貼られているとすぐにお叱りの連絡が入ってきました。献血や赤い羽根募金のお願いなどイベントも終わっているのに貼られていると、わざわざポスターを剥がして総務の部屋に持ってきてくれる方もいました。
そんな労力の削減や鮮度維持に加え、当時は20階を超える建物を新設する計画もあって、紙のポスターを貼って歩くと半日はかかりそうな試算になったため、デジタルサイネージを計画しても良いのではないかと考え始めました。
導入検討にあたっては、コストや仕組みなどを調べて、さらに何ヶ所かの実践事例も見てみるとことにして、区役所、導入企業2箇所のデジタルサイネージを見せていただきました。
区役所では、一階入り口と各フロアエレベーターホールの7箇所ほどで、全て同じコンテンツを流しており、パワーポイントで作った静止画コンテンツの作成とスケジュール登録は、決まった部署の方が実施されていました。スケジュール登録している方に聞いてみたのですが、コンテンツ作成やスケジュール登録操作も簡単で、それほど時間もかからないとのことでした。
導入企業訪問では、場所ごとにコンテンツを変えていたため、運用が少し複雑になっていました。
来客ロビーなどのお客様向けに広報部門が作ったコンテンツが放映されるモニターがあり、執務室内やコピー機コーナーのモニターには総務からのお知らせや営業に向けた情報が流れていました。リフレッシュコーナーや食堂ホールでは、少し変わった内容でしたが、新人紹介やスポーツ部員募集など、社内イベントや有志による活動のコンテンツが放映されていました。
参考にしなくてはならないと思ったのは、番組表の作成です。
モニター設置場所によってコンテンツが異なり、誰の責任で誰がコンテンツを作ってどんなタイミングと期間で放映するのかを整理するためにも、番組表の設定は必要で、これを月に一度はコンテンツ作成者や責任者で集まって決めているとのことでした。
なにより、番組表を作らずに運用していた会社では、せっかく導入した執務室やエレベーターホールのモニターが、使われずに真っ暗になっているのも見てしまったので、番組表の作成とコンテンツ整理は必須であると感じました。
デジタルサイネージは導入検討の段階で、すでに先を見越した運用を想定し、仮の番組表やコンテンツ作成部門への根回しまで行って、運用計画の見通しが立たないと、モニター設置箇所も決まらず、コスト算出もできないものでした。
ちなみに、執務室にたくさんのモニターが設置してあった会社では、同じコンテンツをばかりが流れ、音もうるさいという社内クレームから、サイネージは使わなくなってしまい、真っ暗なモニターが増えたとの話も聞きましたので、導入による成果やコスト効果も考えると、事前運用計画の比重は大きく、計画内容の密度、運用計画の精度が高いほど、導入にあたっての説得もしやすくなります。
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