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ミュージカル『キングアーサー』①
新国立劇場で『キングアーサー』を観てきました。
前知識なしのまま『キングアーサー』であるということだけ知っている状態で劇場へ。金曜の夜にも関わらず満席状態の客席に驚きながら、席につきました。
そういえば、満席の客席はひさしぶりに見たかもしれません。
幕あき早々、私は前知識なしに客席に飛び込んでしまったことを後悔することになります。この舞台はなんのジャンルなんじゃい。全然わからない。
まず、なにかいつもと異なる音響。深みがあって不思議な居心地の良さ、なのだけれど…歌と音楽がごくリアル…小さい…きっとこれはストレートプ…レイではなさそう…なにこれ。セリフはといえば、昔のシェイクスピアのようなむずがゆさ。しかも早口で聞き取れない。なにこれ。これが評判の舞台???
オブラートが溶けてしまったかんじになっていますが、まあとにかく最初の印象は悪かったです。ラジオのチャンネルが全然あわせられない人のような、もどかしい気持ちでした。
ところが、ところがです。
この舞台、振付がとんでもなく魅力的だったのです。アクロバティックで有機的なダンスが続いていく間に私は気づきました…これはきっとミュージカルやストレートプレイではない、たとえて言うならばタカラヅカのショーだ。それも、ストーリーがちゃんとある中で繰り広げられている、好きなタイプのショーだ。そんなことに気づいてしまったのです。
あの、タカラヅカのショーと言ったら黒燕尾の男役さんがキメッキメに踊って娘役さんがドレスの裾を翻してリフトされて、最後にシャンシャンを振る…まあそういう作品も魅力的ではあるんですが、実はそんな作品ばかりなわけではないのです。今回のテーマではないので割愛しますが、しっかりとストーリーがあって、それを極力セリフ抜きで紡いでいくような作品というのも存在しています。たとえば有名なところでは『ノバ・ボサ・ノバ』などがその類ですね。この作品は名作…と言い始めると長くなるのでやめておきますが、案外このタイプのショーは名作も多い、と私は思っています。
さて、『キングアーサー』はまさにこの“タカラヅカのショー”の印象でした。
セリフはあるけれど、それはあまり主役ではない。音楽とダンスが芯となって物語が進んでいくんですね。ショーだな、と思った途端に、急に作品が輝きを増したような気がしました。音は二幕の後半にかかるまでずっと小さくて、もうちょっと聴かせてほしさもあったんですけれどね、それは最後まで気になったままでしたけれどね。それはそれとして、ひとつひとつの振付がよくできているではないですか…!テーマはごくごく目に見えるものの範疇でおさまっていましたが、ダンスだけはその範疇におさまっておらず、不思議な魅力がありました。ステージングも良い。音楽、はさして印象に残るものでもなかったのですが、しかしライトで謎の心地よさがあり…なんというのか、振付以外の部分はひとつひとつを振り返ると特別なんともない感覚だったのですが、全体の中の一部として見ると急に印象が変わってくる。あ、これが総合芸術というやつか。そんな感覚です。
別にストーリーがよかったかというとそうでもなくて、テーマが気に入ったかというとそんな即物的なと思ったし、それなのに結局感動させられてしまってなんだろうあれは。いや、音楽の小ささは結局そこだけエネルギー吸われていく感覚でしたのであれはなんとかしてほしいです、率直に言って。でも、それなのに感動してしまう。そりゃもう、剣で戦う場面で剣があわさるたびに「かきーん」と音が鳴った時には「そんな音を映画村で聴いたことがある」と急に時代劇がはじまった気持ちがしてしまいました。はじめは。それが最後にはあの音すら愛おしくなるのです。アンビリーバボー。信じられない。
お話しの内容ははっきり言ってアーサー王物語です。
アーサー王大活躍というよりは、その人にひっからまった運命の糸のお話しです。恋愛要素もモリモリ、恨み辛みもたくさんあって、それなりにわかりやすく帰結していく。あまり複雑な要素はなし。
あれ?私褒めようとしてこの記事を書いているんですが…!?
とりあえず睡魔に襲われておりますので、いったんここまでにして続きはまた。