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タダ飯狙い問題に声を荒げる勉強会は本当に「勉強」会なのか?という疑問

エンジニア界隈でこんな記事が話題になっていました。

「またか。。。」というのが率直な感想です。

この記事の冒頭では「勉強会の治安の悪化」と掲げていますが、どうもこの問題に声を荒げる方々は、その悪化の原因が自分たちにある可能性を排除しているようです。

特定の人物、一部の問題行動を起こしている人たちが居ることは理解できますし、それらに対応する手段を模索するのは大変良いことです。

一方で、ほとんどの参加者には関係のないことです。仮にそのような方を見かけたら退場してもらえば良いでしょうし、話に応じず過激な言動をされるようであれば、問答無用で警察に突き出せば済む話です。

参加規約やプライバシポリシーへの同意、さらには個人情報の提示…?

何だかどんどん仰々しくなってきましたね。なぜごく一部の悪質な人のせいで、多くの健全な参加者が窮屈な思いをして勉強会に参加しなければならないのでしょうか。

当事者が問題の論点をすり替えている

当事者から「なかなか共感が得られない」との発言も見かけましたが、それもそのはず。この手の話題が上がるたびに出る「有料化すればいいのでは」「そもそも飲食の提供をやめればいいのでは」「腹減るなら各自持ち込みで良いじゃん」といった有意義な意見を何故か軽視する傾向にあるからです。

これらの意見に対する返しは、きまって「そういう問題ではない」の一辺倒。これでは話が進みません。

こんな問題が起きる「勉強会」というのは「無償で飲食を提供する勉強会」だけですよね。なぜ明らかな根本原因から目をそらすのでしょうか。

そもそも飲食を提供するのが、勉強会ではないですよね。

主催側の事情

企業主体でイベント開催をする場合、イベントの企画・運営を担う人員の工数、場の確保や飲食提供などに経費がかかります。担当部署、人事、広報など、組織によって様々な予算計上の区分があるでしょう。これらのコストに対する稟議を通すため、リターンが何であるかを明確にする必要があります。

採用、組織ブランディングにおける主なKPIを例にします。たとえばイベント参加人数やコミュニティへの流入数、そこから採用の接点(面談・面接)がとれた数、最終的に内定・入社に至った人数などが上げられます。

多くの企業がエンジニアの確保に苦戦している昨今、このような導線設計、採用戦略をもとに、イベントを開催することはごく自然な光景です。僕もこれまでエンジニア組織における人材採用、イベント開催に携わってきたことがありますから、これ自体に何ら違和感はありません。

それって本当に「勉強」会??

しかしながら、本当に「勉強」が目的の勉強会であれば、飲食の提供を必須とする理由は一切ありません。件の記事タイトルに「より良い勉強会のための」という枕詞が含まれていましたが、ここに強烈な違和感を覚えました。

一部の勉強会において勉強会目的でない方々が参加しがち、という問題があります。

勉強会の「タダ飯狙い」対策どうするか?より良い勉強会のために参加規約のひな形を公開 - LegalOn Technologies Engineering Blog

「勉強会目的でない方々が参加しがち」の前に、「それって本当に勉強目的の勉強会なんですか?」と問いたい。採用、ブランディングが目的なのであれば「勉強会」と呼ばず、素直に「採用イベント」「ミートアップ」など、それらしい名前を付ければ良いのではないでしょうか。

この裏には「勉強会」という建付けであれば「学習意欲の高いエンジニアが来るだろう」「無償で飲食提供すれば仕事終わりでも参加してもらいやすくなるだろう」といった期待が感じ取れます。

決して悪いことではありません。ただ、イベントの目的に合わせた適切な名前を付けるべきではないでしょうか。

第三者視点では、タダ飯云々で声を荒げてるケースの多くが「採用・ブランディング目的のイベントなのに、なぜか厄介な客が来て困る!」と騒いでるように見えてしまいます。

飲食無償提供のスタイルを頑なに変えようとせず、利用規約やプライバシーポリシーへの同意、個人情報の提示など、参加者に求めることを増やしてくばかり。

名前と目的、行動が合っておらず、何だかチグハグしてるんですよね。

有料の懇親会にも潜り込もうと試みる人物が出没するなど、必ずしも解決策とはならないことが確認されました。また、有料化することによってイベントと参加者の関係性が「提供者とお客さん」になってしまい、コミュニティといえないものになってしまったと悩む主催者もいます。

IT系コミュニティをタダ飯狙いの不審者からどう守るべきか。あるイベントで発生した深刻な事案と提言 - Publickey

有料化に対するアンサーとしてこのような意見もあるようですが、主催側が飲食を提供することは「提供者とお客さん」の関係にならないのでしょうか…?

イベント主催者と参加者の関係性について

大前提、主催者の意図にそぐわない目的でのイベント参加、問題行動を起こす参加者は論外です。このような迷惑な人々を排除することに意欲的なのは良いことです。一定効果の得られる施策もあることでしょう。

しかしながら「勉強」すること、「懇親」することを目的にエンジニアイベントに参加しようと思う人たちは、このような議論があがるたびに辟易しているのではないでしょうか。少なくとも僕は、勉強会の本質からそれたところに一生懸命リソースをかけている人たちを見ると、とても悲しくなります。

ひと昔前は、こんなこと考えず楽しくイベントに参加できていたように思います。参考までに僕が積極的にエンジニアコミュニティの勉強会に参加していた頃(10年前くらい)の様子を振り返ってみました。

大雑把ですが、以下のようなイメージです。

コミュニティ主体の勉強会

  • 参加者であり運営者でもある

  • 皆でお金を出し合うのが当たり前、場の提供も善意

  • コミュニティ内の交流が主目的

  • 懇親会のみ参加でも咎められることは少ない(?)

企業主体の勉強会

  • 参加/運営側の立場が明確に異なる

  • 企業の経費で場や飲食を提供

  • 採用、組織ブランディングを軸とした開催もあったかもしれないが、強く意識することはなかった

  • 新規参加者大歓迎(懇親会で飲食のみ行なう参加者が問題視されることがあったかは不明)

イベント参加登録時も勉強会と懇親会が明確に分かれており、昨今話題となっているような問題は観測範囲で聞いた記憶がないです。懇親会が設定されていなくても、勉強会後に有志で集まって飲みに行くようなケースはよくありましたね。

おそらくコロナを期に、このあたりの文化が断絶され、勉強会の定義や境界が曖昧になってしまったのではないでしょうか。さらに昨今のエンジニア採用の高難易度化が重なり「企業主体の勉強会」で記載したスタイルのイベントが目立つようになったと感じています。

コミュニティ主体の勉強会も、規模の拡大に伴い企業スポンサーが入ってきます。「エンジニアコミュニティの活性化」「コミュニティへの感謝・還元」という命題が一番ですが、少なからず採用・組織ブランディングの意図が含まれるはずです。

そこに目をつけた「エンジニアではない飲食目的の何者か」が迷惑行為を行い、ここ数年で被害を訴える声が急激に出始めたという認識です。

個人情報を扱うリスク

冒頭記事で提案されていた参加規約の第3条には、個人情報に関する記載があります。

第3条(個人情報) 主催者が取得した参加の申込みを行った者および参加者の個人情報は、主催者のプライバシーポリシー(https://www.●●.jp)に基づき利用、管理します。

勉強会の「タダ飯狙い」対策どうするか?より良い勉強会のために参加規約のひな形を公開 - LegalOn Technologies Engineering Blog

参加登録で個人情報を入力するケースは、人材系企業が主体のイベントではよくありますが、エンジニア勉強会で個人情報を扱うというのは、参加者・運営者とも負担が大きいように感じました。管理もセキュアに行わなければなりません。

あくまで「ひな形」の提案ということですので、この参加規約を使うとしても、イベント開催のたびにこのような負担を強いる必要がないと判断すれば該当項目を削れば良いと思います。

また、「必要に応じて身分証明書の提示を求める」といった内容を追加するのもありでは、という意見も見かけましたが、これはタダ飯目的常習犯を把握しているから一定弾けるというロジックでしょうか。

「参加規約に違反しているため退場を促しやすい」は成立しますが、いわゆる無敵の人に対してこの手の対応は効果が薄いかもしれませんね。もちろん規約に同意したことの証明という意味では、事後対応には何かと有用でしょう。

ただやっぱり、これで問題の発生が減るとは思えませんし「こういうところにコストをかける割に、飲食の無償提供やめないの何でなん…?」という疑問が残ります。

追記:そういえばサンドイッチBOXみたいなやつを参加者各自に配って、それ食べながら懇親会するみたいなイベントがありました。タダ飯云々で怒っている人たちは、オードブル形式ではなくこういう提供スタイルを検討してみると良いかもしれないですね

一体みんな誰と戦っているんだ

お気持ち表明の文章を書く機会が少ないからまとまりがなくてごめんね。この手の話、なんかすごい怒ってる人が居るからたくさん人が集まってくるけど、みんな前提や背景がバラバラだから議論が空中戦になってモヤモヤするだけ、ってのを毎度繰り返しててイヤなんだよね。とりあえず自分のスタンスだけでも吐き出しておきたかった。

僕自身は勉強会で飲食を提供する必要性を微塵も感じません。

  • 飲食提供するなら、普通にお金取れば良い

  • 飲食提供なしの懇親会なら、各自持参するなり参加前に何か食えば良い

  • 懇親会なしだけど交流したいなら、各自自由にやれば良い

仮に飯出さないと集客ができない、盛り上がらないという話であれば、そのイベントや組織に魅力がないということです。そこをどうにかすることにリソースをかけるべきでしょう。

最後に自分たちがゆるくやってるエンジニアコミュニティの話でもしようと思ったけど「結局宣伝かよ」とか言われそう。でもここは僕のnoteだから気にせず貼るね。

完全オンラインで好き勝手やってる勉強会なので、件のタダ飯問題とは無縁ですまん。LT始める前に謎のチキン南蛮クイズやったり運営の自己紹介コーナーやらで前説に2,30分かける勉強会だよ。

意味不明だよね。僕も何言ってるかわからない。

それって本当に「勉強」会??

追記1:企業でイベント企画・運営を行なう立場の観点

本記事の内容に関して大変有用なご意見をいただきましたので、Xのポストを貼らせていただきます。ぜひご参考いただければと思います(掲載許可済み)。

※あくまで個人の見解です

@r_kawamataさん、掲載許可いただきありがとうございます!🙇

追記2:15~20年前のコミュニティ運営事例

主に会場確保やお金の管理の話について、15~20年前のコミュニティ運営事例を共有いただきました。@iwaimさん、掲載許可ありがとうございます!

その他Xポスト、引用等でも様々なご意見・情報をいただいています。建設的な議論へ向けて動いてくださる皆さま、本当にありがとうございます…!


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