元・非当事者のセクマイサークル幹事長②
(その2:なぜセクマイサークルの幹事長に?)
さて、今回はなぜ私がセクマイサークルArco Irisの幹事長になったのか、という理由や経緯をお話ししようと思います。セクマイサークル幹部向けのモチベーションに関する話もあるので、少し長いですがお付き合いいただけたら嬉しいです。
①はこちらからどうぞ。
幹事長になった経緯
そもそも、私がArco Irisに入ったのは1年生の4月、大学に入学してから1ヶ月ほどした時のことでした。中学・高校の頃から性教育の分野に興味がありジェンダーに関する勉強もしたいと考えていた私は、大学から配布された公認サークルの紹介冊子の中でArco Irisのページを見つけて連絡をとりました。
最初は当事者の話を聞いてみたい、という勉強目的の短期的な繋がりのつもりだったのですが、先輩方と話していたらどうも所属する流れになっていたようで、そのままサークルに加入することになりました。
5月ごろに行われた新歓ではセクシュアリティに関する基礎知識を先輩から教えていただき、その後の飲み会でも友達を作ることは出来ました。しかし、その後はあまり活動の連絡もなく気づかぬうちに1年が過ぎてしまい、私のサークル1年目の記憶はかなり薄いものです。
状況が変わったのは学年が上がって最初のサークルミーティングの時でした。そのミーティングに参加したのは私を含め5人だけ。私は何を話すのかも分からないまま暇だったので参加したまで、という感覚でした。
時期的になんとなく察してはいたのですが、次期幹部をどうするか、という話題になりました。ただ、そこにいたのは4年生が2人とメインで活動しているキャンパスではないキャンパスに所属する3年生が1人、そしてサークルに入ったばかりの新入生が1人。
自然と、期待の目線は私に向けられることになってしまいました。
私は「他の人がやらないことを自分でやる」ということが大好き、というひねくれた(?)性格なので、「じゃあ…」と言って幹事長の仕事を引き受けることにしました。
こうして、私は訳も分からぬまま、明大前のガストでArco Irisの幹事長になったのです。
幹事長になってから
とはいえ、幹事長の仕事を引き受けたからといって即時にサークル活動に関するやる気が出てくる訳でもありません。
とりあえず、直近の仕事としては昨年同様の新歓がありました。大学に入ってから興味が分散してジェンダーの研究を殆どしていなかった私は、先輩が昨年作ったスライドをほぼ丸パクリしつつ、Wikipediaで単語を調べながら資料を作り直していきました。
今考えると剽窃だらけのかなり不適切な資料だったと思いますが、当時はそれが限界でした。内容としては、身体的性・性表現・性自認・性的指向の話、「LGBT」という言葉についての解説、トランスジェンダーやXジェンダー、Aセクシュアルについての追加の説明くらい。あとはアウティング予防の話とか、サークルのルール説明の話があるくらいだったと思います。
(そのスライドが入ったUSBを旅行で行ったエストニアに置き忘れてきたので今はもう見られませんが…)
当初なんとなく義務感で少しずつ活動していたのですが、サークル運営に関わる仕事の中で楽しさを見いだせる仕事が一つありました。
それは、加入希望者との面談です。
私が加入したとき、サークルの面談は「面接」の形を採っていました。私一人に対して先輩方3人、しかも先輩方は正式に教室を確保してこちらに向かい合う形で横一列に座っているという、正に(嫌いなタイプの)「面接」でした。
もちろん、アウティングのリスクを避けるためにしっかりと身元や参加の意図を確認することは非常に重要なことです。しかし、改めて考えてみると、この形式がこのサークルの加入時のプロセスとしては好ましくないとも思われたのです。
ただ、少なからず自身のセクシュアリティについて悩みを持ち、親しい友達や家族にもなかなか相談しづらいことを話したいと思って来てくれる人に対しては出来る限りリラックスした雰囲気でどんなことでも話せるような場を用意したい。そう思って、私は「面接」ではなくあくまで「面談」という形を採るようにしました。
面談に参加する幹部メンバーは原則二人までとし、基本的には私一人でほとんど対応していました。
面談では、決まった内容の説明や質問をするだけでなく、あくまで会話をする中で必要な情報を伝えたり聞き出したりするようにしていきます。「ここで話した内容を聞き手は絶対に口外しない」「話したくないことは話さなくてもいい」という基本ルールを設けておき、個人情報の保護も約束します。座る席も出来るだけ圧迫感を与えないように斜向かいなどにするよう心がけました。
こうした取り組みのおかげか、私の「幹事長」という肩書きのおかげか分かりませんが、そのようにして1時間くらい話していると多くの人が自身のことを私に赤裸々に話してくれました。
すると、「話せてよかった」「色々知れてよかった」、時には「自分のセクシュアリティについて整理をつけることが出来た」などありがたい意見を色々と頂けたのです。そこから私は、ただ直接話を聞いてくれる存在がどれだけ重要な役割を持つかを学び、聞き手としての姿勢をより質の高いものにするよう心がけるようになりました。
私としても、自分の拙いセクシュアリティに関する知識を補強出来たり、セクシュアリティごとのコミュニティの情報など私が知り得ないことを教えてもらうことが出来たりして毎回非常に有意義な時間でした。
この面談は、自分の「知識を得たい」という欲求と、メンバーの「話を聞いてほしい」という気持ち(そのような心づもりで来ていなかった人も、会話の中で色々と打ち明けてくれることが多くありました)、そしてサークルとしての「多様性を理解するメンバーが増えてほしい」という事情がすべて達成される活動だったのです。
私はこうした仕事をするようになってからセクシュアリティに関する知識への欲求を取り戻し、サークルを維持していくことの意欲を強く持つようになっていきました。
セクマイサークル幹部のモチベーション
少し本筋から逸れますが、Arco Irisが所属し私も運営として参加している「セクシュアルマイノリティ-大学連合」(Sexual Minority University Alliance 略称:SMUA)の会議で、「各セクマイサークルの幹部員はどのようなモチベーションで仕事を引き受けたのか」というテーマについて話し合ったときの話をしたいと思います。
その話の中で、幹部経験者たちのモチベーションには3つのタイプがあることが分かりました。
①自分自身が社会問題に関しての発信やコミュニティの形成に関わりたいと思って運営に関わるようになったタイプ
このタイプの人には自身でサークルを立ち上げた方もいて、モチベーションも高く運営にはかなり積極的に参加されています。
②自分の知的欲求を満たすためにサークルに入り、運営に関わるようになったタイプ
私はこのタイプです。やはり幹部としてメンバー全員と関われるような立場にいると、色々な視点からの情報が集まるので、幹部の仕事をすることが有益に感じます。他にも、自分自身のセクシュアリティについてよく知りたいということからサークルに参加して、そのモチベーションのまま幹部の活動をしている方もいました。
③サークルの維持のために仕方なく運営を引き受けたタイプ
このタイプの人には、運営幹部との人間関係があったが故に先輩の引退時期に幹部を任せられた人が多い気がします。サークルに対しての愛着はあっても、場合によっては積極的に活動に参加することはないタイプです。幹事長1年目の私も、半ばこのような感じになっていました。
サークル創設当初は、恐らく①のようなモチベーションと行動力の高い人が幹部を務めることが多いと思います。そうした人がカリスマ的存在としてサークルの中心になっている間は、サークル自体の活動も活発です。しかし、大学のサークルという性質上数年もすれば幹部員が総入れ替えになってしまいます。すると③のような人たちに引き継がれていくことになりますが、それすらも出来ない場合だと、最悪の場合廃部ということもあり得ます。
ということから考えると、サークルの長期的な維持においては幹部員のモチベーションをどのように保っていくか、ということが大きな課題になるのではないでしょうか。私の場合は②と③を兼ねているような感じでしたので、面談という場において自分の欲求が達成され、幹部の仕事のモチベーションを向上させることも出来たと感じています。
まずは幹部のモチベーション要因を上記の3パターンから判断してみて、それに合わせたモチベーション向上策をとっていくことが肝要だと思われます。それぞれの施策についてはまだSMUAでも思案中ですが、また別の場所でお話し出来たらと思います。
こうしてサークルでの楽しみを見つけた私ですが、それでもすぐにサークル活動の活性化が出来た訳ではありません。次回、(その3)では私の幹事長としての活動経緯について、色々な外部要因に触れながら書いていきます。
サークルは自分一人で運営するものではない、ということを私が学ぶのはまだ先の話…
今回出てきたセクシュアルマイノリティ大学連合(SMUA)はTwitterをやっています。不定期で交流会などを開催していますが、これからはTwitterやnote、ツイキャスなどでの情報発信も予定していますので、ぜひフォローしてみてください✨ 加盟を希望するセクマイサークルさんからの連絡もDMでお待ちしています!
SMUA 公式Twitter :https://twitter.com/SMUA98162280