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ペケとジマの確率統計 #1 期待値


登場人物

ペケ (聞き手)
理系,学部1年.
ジマの子分.

ペケ

ジマ (話し手)
文系,ペケの先輩.
口は悪いが,いろんな分野に造詣が深い.

ジマ 

ペケジマさん.必修に確率統計があるんですが,イマイチ理解できてる気がしないので教えてください

ジマ:しょうがねえなぁ.1から教えてやるからちゃんと聞いとけ.

ペケ:ありがとうございます.

ジマ:まず,確率統計を始めるうえで,最も大事で基礎となる期待値を次のように定義するよー.

$$
\begin{aligned}
E[X]
&:=\sum_{x\in X}xP(X=x)=\sum_{i}x_ip_i\\
\\
(X&=\{x_1,x_2,\cdots\})
\end{aligned}
$$

教科書や学ぶ学問によって$${E(X),\mathrm E[X],\mathbb E[X]}$$などと書いたりするよー.

ペケ:集合$${X}$$の元$${x_i}$$に重みを掛けて総和をとるってことですか?

ジマ:そうに決まってんだろカス.シグマの動機考えれば,見たことない表記出てきても分かるだろ.
大学でやる学問では高校みたく都度説明しないから機転利かせろよなー.

ペケ:分かりました.にしても,この$${P(\cdot)}$$と$${p_i}$$は説明ないと分かんないと思うんですが.

ジマ:$${X}$$の元$${x_i}$$が起こる確率だねー.この$${X}$$の事を確率変数というよォー.

ペケ:ということは,等確率だったら,$${X}$$の個数を$${|X|}$$と書くと,

$$
\begin{aligned}
E[X]
&=\sum_{i}x_i\frac{1}{|X|}=\frac{x_1+x_2+\cdots}{|X|}\\
\end{aligned}
$$

これ高校でやった(算術)平均の式じゃないスカ.

期待値と平均が一致すんのは分かるんですが,確率統計ではなんでこっちの定義を採用するんですかね?

ジマ:$${X}$$の元が無限個ある場合が出てくるからこっちの方が都合良いんだよNeーー.Soーーー.


ペケ:なるほどねー.

ジマ:期待値には線形性があるよォー.

$$
\begin{aligned}
&E[aX+b]=aE[X]+b\\
&E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]
\end{aligned}
$$

注意してほしいのは,

$$
\begin{aligned}
&aX+b:=\{ax_1+b,ax_2+b,\cdots\}\\
&aX+bY:=\{ax_1+by_1,ax_2+by_2,\cdots\}
\end{aligned}
$$

と定義してるということだねー.

ペケ:確かに.

$$
\begin{aligned}
E[aX+bY]
&=\sum_i(ax_i+by_i)p_i\\
&=a\sum_ix_ip_i+b\sum_iy_ip_i\\
&=aE[X]+bE[Y]\\
\end{aligned}
$$

$${y_i=1}$$とすれば$${E[Y]=1}$$で1番目の式そのものですもんね.

というかなんも考えず計算してたけど,$${x_i,y_i}$$の起こる確率ってどっちも$${p_i}$$でいいんですか?

ジマ:さっきの確率変数の和の定義から分かると思うけど,和を計算できなくなるから当たり前だけど元の個数は$${|X|=|Y|}$$じゃん?
ということは,$${p_i=1/|X|=1/|Y|}$$となり,算術平均と一致するんだねェー.
で,これは後に出てくるんだけど,元が無限個ある場合は$${p_i}$$が一致するような確率変数($${P}$$に従う確率変数という)どうしの和を計算するから,線形性は問題なく成り立つんよね.

ペケ:確かに.例えば$${X=\{1,2,2,3,3,3\}}$$で,$${x_i=i}$$としたら,
$${P(X=x)=1/|X|=1/6}$$だから,

$$
\begin{aligned}
&\sum_{i=1}^3x_ip_i=1\cdot\frac{1}{6}+2\cdot\frac{1}{3}+3\cdot\frac{1}{2}=\frac73\\
&\sum_{x\in X}xP(X=x)=\frac{1+2+2+3+3+3}{6}=\frac73\\
\end{aligned}
$$

と一致しますもんね.

ジマ:計算めんどくなかった?

ペケ:というと?

ジマ:Soー.せっかくだから言っとくけど,計算前後に関わらず約分とかルートの有理化とか無理にやんないで見やすさ,計算しやすさ優先でいいよー.
今回だったら,$${p_i=1/6,1/3,1/2}$$じゃなく,$${p_i=1/6,2/6,3/6}$$の方が見映えもいいし,計算しやすいしね.
小中で強いられてきた絶対服従めいた固定観念は捨ててどうぞ.

ペケ:一回約分したものをまた通分するの,結果変わんないのに仕事量と計算ミスのリスク増やしててバカらしいですもんね.


#1のまとめ

  1. 確率変数

  2. 期待値の定義:$${E[X]:=\sum_{x\in X}xP(X=x)}$$

  3. 確率変数の和の定義

    1. $${aX+b:=\{ax_1+b,ax_2+b,\cdots\}}$$

    2. $${aX+bY:=\{ax_1+by_1,ax_2+by_2,\cdots\}}$$

  4. 期待値には線形性がある.

    1. $${E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]}$$

    2. $${E[aX+bY]=aE[X]+bE[Y]}$$


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コジ
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