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ペケとジマの複素解析 #1


 

登場人物

ペケ  (聞き手)
理系,学部2年.
ジマの子分.


ペケ

ジマ (話し手)
文系,ペケの先輩.
口は悪いが,いろんな分野に造詣が深い.


ジマ


 
 

ペケジマさん.必修に複素解析があって,もう6回目なんですがとっかかりが付きません.
このままだとテストに間に合わなさそうです.助けてください.

 

ジマ:しょうがねえなぁ.1から教えてやるからちゃんと聞いとけ.

 

ペケ:ありがとうございます.

 

ジマ:じゃ,まずペケくぅん.この等式を見てくれ.こいつをどう思う?

$$
e^{i\theta}=\cos \theta+i\sin \theta
$$

 

ペケ:すごく...キモいです...オイラーの公式ですよね?

 

ジマ:だろォ?どういうところがキモいんだ?

 

ペケ指数の肩に三角関数の位相と虚数単位があるからです.
$${i}$$乗ってなんやねん.

 

ジマ:他に思うところあるー?

 

ペケ:他には?他には思いつかないです.

 

ジマ:おめぇはチンパンジー以下だな.符号の一般化には見えるくね?高校でド・モアブルやったときなんも思わんかったん?

 

ペケ:あー.ベクトル$${(\cos \theta,\sin \theta)}$$が$${xy}$$平面の単位円上の点になるから,ガウス平面で言ったら実軸となす角$${\theta}$$の単位ベクトルみたいなやつになるんですね.
てことは,ド・モアブルみたくいちいち$${\cos \theta+i\sin \theta}$$って書かなくても,符号を$${e^{i\theta}}$$と略記も出来るんすスね.
オイラー乙^ゥ~

 

ジマ:So-.試しに$${\theta}$$に$${\pi}$$代入してみろ.

 

ペケ:$${e^{i\pi}=-1}$$になりました.え,指数関数からマイナスが出てきた!高校の頃,指数関数をマイナスにするような数あんのかなーとなんとなく妄想してたんですが,これだったんですね.

 

ジマ:So-.次は$${2\pi}$$代入してみろ.

 

ペケ:$${e^{i2\pi}=1}$$になりました.え,$${1}$$って$${e^{2\pi i}}$$なんですか?

 

ジマ:ククククク……wwww
そのまま両辺$${\log}$$とってみろよ.

 

ペケ:えーと,$${2\pi i=0}$$になりました.
...あれ,僕なんかミスりました?

 

ジマ:ウヘヘヘヘヘ!!!www
騙されてやんの!後々何がマズいか解説するから覚えとけよ!

 

ペケ:なんなんすか…
$${\log}$$とる前までは正しいってことでOKですか?

 

ジマ:So-.じゃあ次に$${\cos}$$と$${\sin}$$を$${e^{i\theta}}$$で表してみろ.ヒントは高校でやったやり方だよォー.

 

ペケ:えーと,$${z=x+iy \ (x,y \in \mathbb R)}$$として,両辺複素共役とったやつを足し引きすると実部と虚部が取り出せるから,

$$
z+z^*=2x \\
z-z^*=2iy
$$

で,$${x=\mathrm{Re}(z),y=\mathrm{Im}(z)}$$だから,

$$
\begin{aligned}
(e^{i\theta})^*
&=\cos \theta -i\sin \theta\\
&=\cos (-\theta) +i\sin (-\theta)\\
&=e^{-i\theta}
\end{aligned}
$$

に注意すると,

$$
\cos \theta =\mathrm{Re}(e^{i\theta})=\frac{e^{i\theta}+e^{-i\theta}}{2}\\
\sin \theta =\mathrm{Im}(e^{i\theta})=\frac{e^{i\theta}-e^{-i\theta}}{2i}
$$

ですか?てことはより一般に,$${(e^{x+iy})^*=e^{x-yi} \ (x,y \in \mathbb R)}$$ですね??

 

ジマ:So-,お前にしてはよく思い出したじゃん.これを$${\cos}$$と$${\sin}$$の定義とすることもあるよォー.
じゃ次は$${\cos \theta=2}$$を解いてみろ.

 

ペケジマさん.いくら何でも僕の事バカにしすぎじゃないですかね?
$${\cos}$$の定義から明らかに$${1}$$を超えることなんてあるはずないじゃないですか.

 

ジマ:バカはお前だよ.この流れなんだから解く方法あるに決まってんだろ.おめーは文脈を見ず上っ面だけで批評してくるツイフェミか?

 

ペケ:...ぐうの音も出ません.
あ,でも,さっきの定義を使うといけそうだな.
$${z=e^{i\theta}}$$として$${(z+z^*)/2=2}$$を解けばいいから,両辺に$${2z}$$を掛けて整理すると,

$$
z^2-4z+zz^*=0
$$

で,高校で習ったように,$${zz^*=|z|^2=\cos^2\theta+\sin^2\theta=1}$$だから,二次方程式$${z^2-4z+1=0}$$を解くと,

$$
\begin{aligned}
z&=e^{i\theta}=2\pm\sqrt{3} \\
\\
\therefore \theta&=\frac{1}{i}\log(2\pm\sqrt{3})=-i\log(2\pm\sqrt{3})
\end{aligned}
$$

ですかね?

 

ジマ:君消す

 

ペケ:なんでまた朝青龍ドルジなんですか.
あ,$${\cos}$$は$${2\pi}$$周期だから

$$
\therefore \theta=-i\log(2\pm\sqrt{3})+2\pi n \ (n \in \mathbb Z)
$$


でした.あれ,もしかしてこれ,さっきの$${e^{2\pi i}=1}$$から両辺整数乗して$${e^{2\pi in}=1^n=1 \ (n \in \mathbb Z)}$$だから,

$$
z=2\pm\sqrt{3}=(2\pm\sqrt{3})e^{2\pi in} \ (n \in \mathbb Z)
$$

と解釈できて,

$$
\begin{aligned}
\theta
&=-i\log[(2\pm\sqrt{3})e^{2\pi in}]\\
&=-i\log(2\pm\sqrt{3})-i\cdot2\pi in \\
&=-i\log(2\pm\sqrt{3})+2\pi n \ (n \in \mathbb Z)
\end{aligned}
$$

ってことですかね?

 


ジマ:So-.大体そんな感じ.こっちが言う前に気付いたな.
よし,お話終わり
寝て良いよ

 

ペケ:え,今日はもう終わりですか?このペースだと先が思いやられるな…

 

ジマ:こっちのセリフじゃボケ!!!

 

ペケ:すみませんでした.


#1のまとめ

  1. オイラーの公式は符号の一般化と解釈でき,その略記にも役立つ.

  2. 三角関数を$${e^{i\theta}}$$を用いても定義できる.

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