そのすばらしい人間が、君なのです ――『人間』加古里子
『だるまちゃんとかみなりちゃん』『だるまちゃんとてんぐちゃん』など、「だるまちゃん」シリーズで有名な加古里子さんですが、科学を題材にした絵本も多数描かれています。
そのなかの一冊、『人間』は、単に人間という生物をパーツに分けてそれぞれの臓器を説明した、というだけのものではありません。加古さんらしい、物語が織り込まれています。
ビッグバンから人間の歴史は始まる
この本では、人間を説明するのに、宇宙のはじまり=ビッグバンから始めるのです。ビッグバンに始まり、ガスがむらになって恒星を形作り、地球が生まれ、生命が誕生し、やがて人間が生まれます。
「いまから150憶年まえのむかし、
人間にとって大きな事件がおきました。
学者がビッグ・バンとよんでいる
宇宙の大爆発です。
宇宙のさいしょは、
物質・時間・空間のない、きわめて小さな世界でしたが、150憶年まえに「ゆらぎ」がもとになって、
たかい温度と、ものすごいいきおいで、
四方にとびちることから宇宙がひろがりはじめました。
したがって人間の歴史もここからはじまります。」(本文より)
性の問題
性の問題も真正面からとりあげています。
見開き左右に女性と男性を配置し、女性からは卵子が男性からは精子が近寄ってきて受精。細胞が分裂していって受精卵ができるまで、次のページではお母さんのお腹のなかで胎児が大きくなっていく絵が描かれます。
骨格や臓器などの説明ももちろんあります。
人類の知恵と知識を積み重ねてきた歴史
美しさを求めた芸術の歴史
戦争
死と悲しみ
そういったものが、子どもにもわかりやすいことばでつづられていきます。
そのすばらしい人間が、君なのです
そしてしめくくりが、加古さんらしい。
「あなたが、そして君も、人間です」と題された最後の項目には、こうしめくくられています。
「このように、その細胞や脳やからだや心に、
宇宙・世界・地球の、歴史と現在と未来とを
やどしているのが人間です。
その人間のひとりがあなたです。
そのすばらしい人間が、君なのです。」(本文より)
『人間』
加古里子(かこさとし)・文/絵
福音館書店(福音館かがくのほん)
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