自分らしさが表現できる、喜びと楽しさ。テクスチャーアートで届ける「risaさん」(atelier.R)
宇野港メディア部では、岡山県の港町・宇野港エリアから、玉野市の良さを「人」を通じて紹介していきます。
今回取材したのは、「atelier. R」(アトリエ アール)として活動するrisaさんです。テクスチャーアートのワークショップや、作品販売を行っています。
岡山市在住のrisaさんは、平日は会社員、週末はアーティストとして活動しています。2023年1月にテクスチャーアートに出会い、作品制作をスタートしたのち、同年9月からはワークショップも開催するようになりました。玉野ではシェアショップUZでワークショップを実施しているほか、2024年3月2日には『うのマル』(※)への参加も決定しています。
「自分らしさを表現する楽しさを伝えたい」と話すrisaさん。その背景にある想いや、玉野での活動の広がりについてインタビューしました。
唯一無二のグラデーションが楽しい
――risaさんが活動を始めたきっかけを教えてください。
副業でロゴ制作やデザインをしていて、本業以外でもパソコンを使うことが多くなっていました。「デジタルデトックスしたいな」と思ったときに出会ったのが、テクスチャーアートだったんです。
Instagramを見ていたら偶然、Japan Texture Art Association(日本テクスチャーアート協会/以下、JTAA)のアカウントを見つけて、やってみたいなと思って。東京でテクスチャーアートのワークショップが開かれているのを知り、出張で東京に行くタイミングに1人で思い切って参加したのが始まりです。
――そもそも“テクスチャーアート”とは、何ですか?
テクスチャーアートというのは、アクリル絵の具に粘度のあるペーストを混ぜて凹凸をつけながら描く、質感を楽しむアートです。
作品を作るときは、自分が見て気に入った岡山の風景を描いていますが、ワークショップでは自由に描いていただくことが多いです。時々、出店場所に合わせてテーマを決めたワークショップも行っています。
――色々なアートがあるなかでも、テクスチャーアートをやっている理由はありますか?
テクスチャーアートでは、質感やグラデーションを楽しめます。東京でワークショップに参加したとき、その唯一無二な作風が魅力的だなと思い、私自身すごくハマったんです。
テクスチャーアートで使うペーストは、白色。だから絵の具と混ぜたとき、自然とグラデーションになります。同じ色を作ろうと思っても、同じ凹凸を描こうと思っても、なかなか同じにはならないんです。それが楽しいなと思っています。
また、テクスチャーアートのグラデーションが、自分の生き方のグラデーションとマッチしているなと思ったんですよね。作品って、自分が表れるんだなと気づいたというか。「もっと追求したい」「しっかり習いたい」と思うようになりました。
その後、JTAA主催でワークショップ講師の認定をいただける講習のようなものがあり、大阪まで受けに行きました。講師になりたいというよりは、ただ学びたいというか、もっと上手に表現できるようになりたいという思いでした。
認定をいただいたので、作品制作だけでなくワークショップも開催するように。場所を借りたり、イベント出店したりしながら活動しています。
ワークショップを通して、作る過程を楽めるように
――もともと絵を描くのは好きだったんですか?
美術の授業は好きだったけど、似顔絵とか、いわゆる“絵を描く”のは上手ではなかったです。副業でデザインをしていても、絵を描くのとは別の感覚かなと思います。
でも「自分の内側にあるものを表現したい」という気持ちは前からありました。趣味でバンドをしていて、少しですが今も続けているので、表現するのは好きなんだろうなと思います。
――表現方法がテクスチャーアートへと広がり、最初に作品を販売したときはどのような気持ちでしたか?
Instagramで発信していたので、「興味を持ってくださる方が意外といて嬉しいな」と思いました。
初めて作品を販売したのは、友人たちと参加した「デザインフェスタ」でした。作品を作りつつ、Instagramの更新もがんばっていたら、デザインフェスタ当日に「Instagram見て来ました」と言ってくれた方がいたんです。反響があったのが嬉しくて、デザインフェスタ終了後はオンライン販売を始めたり、ワークショップをしたりするようになりました。
――作品制作や販売だけでなく、ワークショップも行うようになったのは理由があるのですか?
ワークショップ講師の認定をいただいたときに、実際に講師をしている人と出会いました。「こういう仕事もあるんだ」と思えたのが、最初のきっかけでした。
もうひとつのきっかけは、作品を作っていると「どうやって描いているの?」と不思議がられたことです。「粘度のあるペーストを使って……」と口で説明しても、なかなか伝わらなくて。ワークショップをやれば、その質問に答えられるかなとか、描く過程を楽しんでくれる人も出てくるかなとか思いました。
知り合いに「ワークショップやってみたいんだよね」とふわっと話をしていたら、「いいところあるよ」と場所を紹介してもらって。それをきっかけに、ワークショップも開催するようになったんです。岡山市のインテリアショップ「HAMON」さんの2階を貸していただいたのが始まりで、その後はイベントにも出店するようになりました。
玉野での出店で感じた、人と繋がるあたたかみ
―玉野での初出店は2023年11月だったかな、と。
そうそう。こあちゃん(筆者)がワークショップやりたいと言ってくれて。
―(笑)。もともと友達だったrisaちゃんがテクスチャーアートを始めたと知って、やってみたくて。シェアショップUZ(以下、UZ)のハルさんに相談した経緯がありました。
打ち合わせでUZに来たときは、あったかい雰囲気の場所だなと思いました。店内に入ってくる、光や木のぬくもりを感じて。
でも、一番印象に残っているのは、ハルさんが「UZは人と繋がる場所にしたい」と言っていたこと。今までも場所を借りたことはあったけど、そういう想いを持っている方に出会ったことがなかったので、実はびっくりしました。
ハルさんの想いを聞いて、参加者同士が繋がれるように、ワークショップ終了後は感想会をしようということになったんですよね。ワークショップの進め方も相談しながら決められたのも含めて、他の会場とは違うあたたかみを感じました。
――実際にUZでワークショップを開催してみてどうでしたか?
初対面の人もいたのに、みんなで和気あいあいと時間を過ごせたのがよかったと思っています。わいわいしながらワークショップをしたことがなかったから、新鮮でした。
一人ひとりの作品を見て、感想を伝え合って、雑談しながら終えられたのもいいなと思って。UZらしく、参加者同士の繋がりを作れたのではと思います。いつもは私だけが感想を伝えていたので、素敵なアイデアをいただきました。
―2024年3月は、『うのマル』への出店も決まっているんですよね。
UZ出店時から、ハルさんに『うのマル』の話を聞いていたので楽しみです。玉野との繋がりを増やしたいと思っていたので、良い機会をいただきました。
『うのマル』でも、ワークショップをメインに、作品販売も少しやろうと思っています。ワークショップでは、競輪場開催にちなんで絵具を9つの色に絞ってみようかな(競輪は一度のレースで9人が走り、1番~9番まで色が決まっている)。進め方はまだ検討中ですが、『うのマル』の内容に合わせてワークショップできないか、色々と考えてみたいです。
そもそも競輪場に行ったことがなくて、参加できること自体が楽しみ。新しい玉野の魅力を知れたらなと思っています。
――risaさんにとって、玉野はどんなまちですか?
アートに興味がある人や、クリエイティブな人が多い体感があります。UZで出会った人も、以前こあちゃん(筆者)と行った「みどりの映画会」で出会った人も、私がテクスチャーアートの話をすると興味を持ってくれることが多くて。
私の予想ですが、瀬戸内海という豊かな自然が日常にあるから、気持ちに余白があって、柔軟な発想を持っている方が多そう。今後もUZをはじめ、玉野でもワークショップをやっていきたいと思っています。
周りの当たり前に従っていた私が、当たり前すらないアートで伝えたいこと
――テクスチャーアートに出会ってから約1年経ちましたが(2024年2月現在)、「atelier.R」として大切にしていることはありますか?
一番は、自分らしさや個性を表現する楽しさを伝えたい。その想いが強いんだと思います。
というのも、過去の私は、自分がどう思うかではなく周りに合わせて正解を決めていた。それが苦しかったんです。安定した職業に就かないといけない、ひとつの会社に長く勤めなければいけない、仕事を充実させたければ休日返上で働かなければならない……。特に働き方に関しては、周りの当たり前がいつのまにか自分の当たり前になっていた。固定概念がたくさんありました。
そこから解放されたきっかけが、2020年に出会ったSHElikesというキャリアスクール。「周りの当たり前に合わせなきゃ」という固定概念から解放されたおかげで、転職や岡山へのUターンを決心でき、テクスチャーアートで自分の表現まで楽しめるようになったんです。
岡山のような地方では、過去の私のようにいつのまにか固定概念に縛られている人が多いように思います。たまたま私はテクスチャーアートに出会ったから、今の私が自己表現の楽しさを伝えるために、テクスチャーアートを続けているんだろうなとも思っています。
――アートは「自分がどう表現したいか」がすべてだから、そもそも周りの当たり前なんて、存在すらしていないですよね。
そう。当たり前もないし、正解・不正解もない。でも、ワークショップをしていると「何を描けばいいのか分からない」とか「正解が分からない」と思う方もいるから、どう声をかけようかなと悩むときがあって……。「思うままに描いていい」って、むずかしいんだなと改めて思ったりします。
そういうときは、私が楽しんでいる姿をお客様に感じてもらえるように心がけてる。実際、お客様が描いているのを見ていると、私が使わない色を使う方が本当に多いから、個性が出ているのがとても楽しいんです。「この色いいですね!」とか、「こういう色の組み合わせ素敵です!」とか、私が思ったことをそのままお客様に伝えるようにしていて。
思ったことを、好きなように描く楽しさを感じていただけたら嬉しいなと思っています。
――今後やりたいことはありますか?
2024年は自分の作品をもっと磨きたいなと思っていて。秋に個展をやることを、最初の目標にしようと思っています。
あとは香りとか味とか、感覚で感じるものをテクスチャーアートで表現してみたい。パッケージデザインとして、絵で表現して魅力を伝えることができたら嬉しいです。
もちろん、ワークショップも引き続きやっていきます。まずは『うのマル』やシェアショップUZでの出店があるので、ぜひ玉野に来てほしいです。瀬戸内海に近い開放的な場所で、一緒にテクスチャーアートを楽しみましょう!
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