「手をつなごう」と照れくさそうな笑顔で寄り添ってくれる人。~kurosawadaisukeのWordに溢れたTenderness〜
kurosawadaisuke(黒澤大介)
kurosawadaisuke(黒澤大介)。
北海道帯広出身のシンガーソングライター。先日、このnoteでもご紹介していますが、私にとってのギターヒーローで、そして2024年現在、もっとも私の心のそばにいるシンガーです。
出逢いとか来し方とかはこちらをご参照いただければ。
実は出逢って10年近くなるんですが、しっかりと大介さんの音楽を聴きに現場に行き始めたのはCOVID19禍以降ここ4~5年…と長く知ってるのに新参者という状況なんですが、いきなりどっとハマってしまうよりゆっくりじわじわと好きになっていったことが、今となるとよかったのかな、と思いもしています。
以前から好きなミュージシャンではあったのですが、この数年、現場に行くたびに、ひとつひとつ「好き」を積み上げていったような感覚があるのです。昨年秋くらいから今年にかけて、ゆっくりと私の胸の中心に大介さんの音が辿り着きました。
簡単にはもう嫌いになれないとこまで来てしまった(笑)
ぽとりと落としたインクが布にゆっくりとしみこんで広がっていくようにkurosawadaisukeという色が今、私の胸の中いっぱいに広がっています。
そもそもは違うシンガーの現場で知り合って、その方の縁で現場に行くようになって今に至るわけなんですが、縁って不思議だね、とふんわりと笑う大介さんのやさしい笑顔がまた、私の胸にあたたかい色を加えてしみこませてくれます。
その大介さん、9/17がお誕生日です。そして、今年はCDデビュー25周年という節目の年でもあるとのこと。
おめでとうございまーす!
先日9/14には新横浜LiTにて、ソロ弾き語りとバンド(EasyDIVERS)の2形態での記念ライブを開催。多くのファンから声援と青いタオルの波を送られました。
さらに9/22には地元・帯広平原通り小劇場にてソロ弾き語りのワンマンライブを予定、その際には25枚目(すごー!)のCDもリリース予定です。
地元の仲間達、ファンに囲まれて、にぎやかにお祝いされる1日となるでしょう。私も、初帯広です。すぐにでも行きたいくらい、待ち遠しい!です!!
大介さんの詞の魅力について考えてみる
私が大介さんの音楽を知った最初は、ギターに惹かれてのことでした。「SixStringsDesign」という音楽・ギターと自身の強いつながりを歌った名曲があるのですが、このイントロが最高なんですよ。
ちょうど出逢ったころの映像があるのでペタリ。
もともとはギタリストでボーカルがいなくなってしょうがなく歌い出した…と先日、とあるライブで話してました。おまえが歌うんだ?と笑われた時期もあったとか。今は信じられませんけども。
歌がテクニカルにうまいシンガーか、と問われればけしてそうではないのですが、耳と心に深く響くシンガーではあります。丸く鼻にかかった声に深いビブラートが強く揺れる。その揺れが心も揺らす。
ギターから入った私も、聴きこむにつれて、その歌声と歌詞に心を揺さぶられるようになりました。
辛さを知る人だからこそのやさしさ
大介さんの歌詞は、やさしく温かい。
単にやさしいだけではない、挫折であったり、苦しさであったり、そういうものを知っている人のやさしさで、基本的なスタンスは「無理して苦しむことないよ」「できなくても大丈夫だよ、そばにいるよ」「手をつなごうよ」という、赦しのやさしさです。
世の中の唄には、鼓舞したり、ともに闘おうとしたり、背中を押したり、いろんな寄り添い方があるけれど、大介さんの歌詞はもがいたり苦しんだり、闘ったりしている人をそっと座らせてあたたかい珈琲を用意してくれるような、そんな寄り添い方をします。
俺もつらいことはある。君にもあるよね。
今はいいよ、ちょっと力を抜きなよ。
そう言って、肩をそっとぽんぽんと叩いてくれる。そういう歌。
手のひらに収まるものだけをしっかりと大切にして、生きていけばいい。背伸びしなくても、無理をしなくてもいいんだ。
辛いことがあっても大介さんのそんな「詞(ことば)」を耳にしながら深呼吸して、また進んでいけるのです。
「手をつなごうよ」
大介さんの歌詞にはたくさん「手をつなぐ」という言葉が出てきます。
手をつなぐ、というのはつまりは心をつなぐ、ということ。仲間といること、友達といること、愛する人達といること。人はいつどんなときでもひとりで立っていられるほど強くはない。
どんなときも手をつなぐよ、一緒にいるよ、と大介さんは歌ってくれる。
ひとりぼっちにはさせないよ、と。
普段から「みんなの人生を背負ってるつもりで俺は歌ってるよ」と大介さんは言ってくれるんですが、それは人生を本当に大介さんにゆだねるということではなく、そんな気持ちでいてくれる人の音楽が自分の人生のそばに常にあると知ること、それが次の一歩への力になり、しくじってもやり直す勇気になるんだと思うのです。
私がもっとも好きな歌は「Compass」という曲。
私がいろんなことにふらふらと迷っているときに、そばにいてくれた曲です。まさに「手をつないで」くれた曲。迷うことがあってもいいんだ、と思えた曲。
故郷への愛
大介さんには故郷、北海道や帯広を描いた、モチーフにした曲がめちゃくちゃ多いです。
おそらく、18歳で上京してから30年過ぎて帯広に戻られた2018年以降、意識的に作られているんだと思います。
数が増えてきたので、帯広縛りのアルバム作ったり、ライブやったりできそうだよな、と思うくらいです。
最新の「メロンソーダ」では、帯広の「ふじもり食堂」をモチーフに青春時代を歌い、「ミシンの下」ではご自身の幼少期の思い出を。「GO GO サマー」では淡い恋と帯広の景色をマッチングさせ、「絆」ではお父様との、「手のひら」ではお母様との情景を描く。
冬のキラキラとした光景「スノードライブ」、僕の故郷で仲間に君を紹介したいんだと歌う「ありったけ」。子どもの頃、音楽と出会った瞬間を描く「Let's spend the good times」。「ストーリー」は帯広ではありませんが、苫小牧発のフェリーの思い出が描かれています。
故郷をあえて描こうとする、大介さんにしか作れない帯広の、北海道の歌。どれもやさしい。行ってみたくなります。
出逢った当初に大介さんのライブに行ったときに、帯広にも来てよ!と言われたんですが、今年、4年近く経ってようやくそれを叶えることができます。歌詞の中に登場した場所を訪ねられるのを楽しみにしています。
消えない愛、結晶のような思い
大介さんとお父様との思い出…というにはかなり辛い情景を歌った「絆」という曲があります。お父様は2018年に他界され、それをきっかけに帯広に戻られた大介さんですが、いくばくかの思いのすれ違いがある中でも、消えることのないお父様への想いが込められた名バラードです。
5月にこの曲をナカノステレオで聴いていて、突然、涙が止まらなくなりました。それまでもこの曲に感動することはあっても、それは「大介さんの想い」に打たれたのであって、私自身の想いとシンクロしたことはありませんでした。
ところがその日、不意に自身の大切な人…12年も前に空に旅立ってしまった人への想いにシンクロしてしまったのでした(たまたまその日はその人の誕生日翌日でした)。
具体的な詞の中の光景に、ではなく、歌詞の世界を越えてその歌に籠められた「今はもういない誰かへの強い思慕」、歌の真ん中に結晶のように光る「消えない愛」が自分にもあった、そう気づいてしまって滂沱でした…。
大介さんの歌詞には具体的な光景があるものもありますが、どちらかといえば費やされる「ことば」の量そのものは少なく、歌詞から想像できる世界には広がりが大きい。それぞれの想い、それぞれの立場に引き寄せて感じることのできる歌詞がほとんどです。だからこそたくさんの人に愛されるのだろうと思います。すべて「僕の、私の歌」として昇華されるからこそ。
やさしさに溢れた歌詞を、やさしさでいっぱいの深いビブラートの効いた声で届けてくれる。
それが私にとってのkurosawadaisukeの唄の大きな魅力のひとつです。
映画のような美しい世界
そうした、私達のそばにいてくれるような温かい歌詞の世界のほかに、どちらかといえば抽象的な、美しい世界も大介さんの唄の持つもうひとつの魅力です。
特にバンド「ビスタコシェッチ」時代の曲はそういう抽象の傾向が強く、ソロになっても「ホシノヒト」の童話のようなことばの美しい並び、「Six strings design」の「僕と君」(大介さんと音楽、ともそのまま僕と君、とも取れる)のゆらぎなど、聴き手に解釈を強く委ねる歌詞が散見します。
その中でもとりわけ「吉祥寺」は(抽象ではありませんが)世界観のとてもとても美しい曲。
自身の吉祥寺時代を舞台に具体的な光景(通りや店の名前)を重ねることで、若い男女の暮らす姿がフラッシュバック的に浮かぶ私小説的な作詞。
でも夢や恋が破れたこと、主人公が今そこにいないことそのものはダイレクトには歌詞には出てこない。
すべて過去形で描かれてること、そして、抒情たっぷりのメロディと昏さのある、夜を思わせるアレンジに哀しい気持ちを私たちは覚えて、そこからそのことを想像する。
周りを描いて音とともに炙り出す、とても映像的な、うっとりとさせられる1曲。
かなり前の曲ですが、いまでもリクエストの多い、たくさんのファンに愛されている曲なのも、このうっとりとした美しさにあるのではないかと思っています。
楽しいことはまだまだ終わらない!
語ろうと思ったらまだまだ語れるけどこのくらいにしておきます(笑)
ハードロックから音楽に目覚めた大介さんなのでバリバリにハードアレンジの曲もあるし、バンド時代の曲になるともっと抽象的で尖った歌詞もあるし、軽やかでユーモラスな世界もある。
(ギターのうまさ、凄さ、アレンジの豊かさについては私には語る能力がなく、とにかく凄いの!!としか言えないので割愛)
人柄も魅力的です。はにかんだ笑顔とやさしさと、その裏で割としっかりくっきりはっきり持ってる反骨心と(テキトーなことを言う人、おべんちゃらが多分、とても嫌いなんだと思う)。自分の懐に入った人のことは守ろうとする親分肌も感じます。大介さんが主宰の「ダイビングレコード」というレーベルには、そんな大介さんが大好きなシンガー達が集まっています。
機会があったら、ぜひその音楽に触れてみてほしいです。サブスクでいっぱい配信してあるよー!!
以上、誕生日に贈るkurosawadaisuke讃でした。
改めて、大介さん、お誕生日おめでとうございます。これからも大介さんの曲をそばに置いて暮らしていけることを幸せに思っています。
70歳過ぎても、80歳になっても青春の「メロンソーダ」をやさしく歌っていてください。69歳、79歳の私もそれをにこにこと客席で聴いていたいです。