勘三郎さんの「分身」ミッキー⑦こいつァ春から縁起がいいわえ
勘三郎さんの「分身」ミッキー⑦こいつァ春から縁起がいいわえ
勘三郎さんにお届けしたミッキーシリーズも7回目でございます。
今回はコクーン歌舞伎「三人吉三」。
今ちょうど松竹のオンデマンド配信でご子息達のシネマ歌舞伎版「三人吉三」が始まっていますが、これは勘三郎さんがなさった最後の「和尚吉三」、2007年6月のシアターコクーンにお届けしたものです。
「三人吉三」は2001年と2007年の2回上演して、演出はどちらも踏襲でしたが、2007年版では椎名林檎が劇伴音楽を担当していて、これがよかったんですよね。何度も何度も通った懐かしい思い出。
ちなみに、シネマ歌舞伎版「三人吉三」は、勘九郎和尚、七之助お嬢、松也お坊。お父上達よりも若さの暴走が感じられる、また串田監督の演出もこだわりがあって(シネマ用の撮影も行ったとか)濃厚なフィルムノワール感、重厚な感触に仕上がってます。ぜひ。
7日間で1900円、通常のシネマ歌舞伎から言えば1回分の料金で繰り返し視聴できてかなりお得です。GWにおうち歌舞伎、いいですね。
【本編に入る前に:これまでの「分身」ミッキー達】
増えてきたのでマガジンにまとめてみました。
①黒足袋の十郎(助六所縁江戸桜、白酒売)
②ミッキーNYへ(夏祭浪花鑑)
③カップルシリーズその1:猿源氏と蛍火(鰯売恋曳網)
④カップルシリーズその2:仇ゆめ(狸、蛍火)
⑤弁天小僧~でっかいの・ちっちゃいの
⑥ふたりの権太
さて。
約1年ぶりのミッキー達。当初は考えてなかったんですが、初日を見て一気にテンションがあがり、プレゼントするー!!となり、しかも、三人吉三全員に贈るーーーー!!!となりました。
シリーズ2回目のNYへ送った夏祭浪花鑑のミッキー達のときに、ミッキー=団七=勘三郎さん、デイジー=お辰=福助さん、ドナルド=徳兵衛=橋之助さん、だったので、今回も勘三郎さん、福助さん、橋之助さんのイメージで、ミッキー、デイジー、ドナルドの3キャラさんに扮していただきました。イメージはばっちりだったと思います。
コクーンに向かう直前の御三方。
デイジーが大きく見えますでしょ? 遠近法でね… って嘘です、ほんとに物理的にでかいんです。同じシリーズ(足裏見てください)なんですが、なぜか、ちょっとでかかった、デイジー。
まずは和尚吉三。
勘三郎さんの和尚といえば、吉の字菱をあしらった黒の着付けに別珍と思われる銀杏色の半纏ですね。背中に大きく入った隅切銀杏の紋と、裏地がすごくかっこいいんですよね。特別な拵えですが、初演でとても印象深かったので、再演でも、勘九郎さんの再再演でも着てらして嬉しかった。
この吉の字菱、間違ってましてね(笑)
余白に色はいらなくて、吉と吉を反転させて重ねるんだったんですよね…よく見ないで作っちゃいけないという悪い見本。雰囲気でお許しください。
これは自分でPCでデザインして、アイロンプリントしたものです。
全部吉の字菱にするのは無理だったので袖と裾のみです(見えるとこのみ…)。
胴裏と八掛は中村格子で。
別珍の半纏。隅切銀杏もアイロンプリント。
裏は、勘三郎さんの着ていたものが確か柄に鼓が入っていたのでそんな感じのものを探してきて使いました(和柄のコットンです)。
和尚は腹掛けに股引を履いているのでがんばって作りました…構造が全然わからんからめっちゃ勘だけで作ったんやでぇぇ。
お坊はドナルドダック。
コクーン版のお坊は普通のお坊と異なり、鮮やかな青の無地の着付け、裾に模様があしらってあります。さすがに模様は無理だったので無地のみ。
あ、差してある刀はミニチュアです。
胴裏、八掛、裾綿は赤一色で。
ドナルド、お尻が大きいのでカバーするためにかなり全体は長く作ってあります。
変質者みたいになってますが(笑)襦袢、着付の作りを記録したくて撮った写真、多分。
もともとはドナルドなので青い帽子でしたが、黒い帽子に作り替えて付け直してます。中には綿を入れてふくらませました。
ミッキー、ドナルドの帯と煙草入れ。過去作ってきたものが積み重なって、このころにはこの程度の小物は30分くらいでちゃちゃっと作れるようになってました。
最難関のお譲吉三です。
悩んだ~~~!!!!!
コクーン版のお嬢は衣装も他と違って赤姫のような総柄の振袖なのですが、同じ柄はもちろんない(だいたい、人形のサイズに合うような柄って難しい)ので、割り切って、福助さんなので梅柄にしようと探してきたものです。
ドナルドよりさらにお尻が大きかったので、身頃の取り方ほんと難しかった!
こうして見ると中振袖くらいにしか袖の長さが見えないですがこれはお尻に持ってかれる分、身頃が長いせいです。
胴裏・八掛も梅で、梅尽くし~~。
帯はさすがに作り帯(結びの部分を縫い付けた形)にした…はずです(もう覚えてない)。
頭のリボンもデフォルトはピンクなんですが、鹿の子で作り直してます。かんざしもヘアピンアレンジ。Uピンにビーズ、タッセルを付けてリボンにぶっさしているだけなんですが、割と感じは出たな~とお気に入りの子です。
出来上がったので、大川端ごっこをしてみる。
ミッキーの胸元にあったり、お坊が持ったりしている赤いものはこの作品で重要な役割を果たしている、庚申塚の括り猿です。買ったものじゃなくて私の手作り。
中日くらいに差し上げたんですが、もうちょっと早く渡せればよかったな~。
でも、初日を見て思わず創作意欲を刺激された、というのが大きかったんですよね。ちなみに次回はこのあと2週間後にNY公演に向けてお餞別に差し入れた法界坊です。
ずっとなんか衣装ばっかり作ってたこの6月でした(笑)
◆
このときの三人吉三は、千穐楽が1回延長されるという、ファン泣かせの公演でもありました(延長したのはWOWOWの収録のためで、収録がメイン、客席はつまりは「ついで」だったんですが、よりによって千穐楽の夜の部だったっていうなかなかの非道でした。松竹さん、さすがにもうそういうことはなさらないけど、この当時は松竹さんの「収録」に対する意識がものすごく低く、このときも収録予定がなかったのをむりやり突っ込んだのでこんなスケジュールになったんだとか…)。
チケット、みんな必死で取ったよねえええええ!!
最近はわかりませんが、このころはコクーン歌舞伎のチケットは非常に取るのが難関で、毎回立ち見も含めて当日券を求める人の行列が長く長く続いていました。
当然、ヤフオクにもたくさん出ていて、中村屋が楽屋口でファンの方にサインをしながら「ねえ、ああいうの、どうして捕まらないの!!」と大憤慨していて、そのあまりの憤慨ぶりにファンみんなで苦笑いになった思い出があります。
「ネットで取るのって大変なんだってね。今回のもすぐオークションに出たんでしょ? なんでそういう人がいるのかねえ(義憤)」
「やー、業者ですよねー、彼らも商売ですから…」
「捕まらないのっ!?(ますます義憤)」
「捕まりませんねえ」
「なんでかなっ(ぷりぷり)」
世間ずれしていないというか、なんとも愛らしい方でありました。
今になって、オークション出品が違法になったり、ここまで厳格に購入者を特定するようになったり、オークション以外のチケットトレード制度が整ったりするなんてこのころは思ってもみませんでしたね。
中村屋が存命だったら、なんておっしゃるか、聴いてみたいようにも思います。
いただいたサポートは私の血肉になっていずれ言葉になって還っていくと思います(いや特に「活動費」とかないから)。でも、そのサポート分をあなたの血肉にしてもらった方がきっといいと思うのでどうぞお気遣いなく。