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「照らすVOICE」真冬の夜の夢〜音と光のインスタレーション 空間企画

12/24、クリスマスイブ。
特にクリスマスっぽいことをするでもなく、日中は少し買物をしたあと、新宿三丁目の「雑遊」へ。

空間企画さんの「照らすVOICE」という光にこだわったシリーズの舞台で、シェイクスピアの「夏の夜の夢」をモチーフにした「真冬の夜の悪夢」を見て…いや、「聴いて」きました。

「真冬の夜の悪夢」
脚本・演出 藤丸亮 (-ヨドミー)

パック 林りんこ (プロダクション・タンク)
オーベロン 大浪嘉仁
ハーミア あきやまかおる (ぷろだくしょんバオバブ)
ボトム 四宮豪(賢プロダクション)
ライサンダー 小川夏実 (プロダクション・タンク)
ティターニア 右手ナギ

照明 中佐真梨香
劇伴
なすひろし (みづうみ/QooSue/StudioSlowSlope)
秋桜子 (みづうみ)

初めての雑遊。イベントスペースなんですね。

タイトルのごとく、シェイクスピアの「夏の夜の夢」のスピンオフ。
あの夏からしばらくした冬のある日、アレキサンダーと無事に夫婦になったハーミアは、ささいな喧嘩で家を飛び出し、ふたたびアセンズの森へ。妖精パックと出逢ったハーミアはパックの悪戯で森の奥に迷い込み、さらにはパックに惑わされて驢馬に変身させられたまま森に閉じ込められたボトムと遭遇、怯えてさらに逃げ出してしまう。
こちらも夫婦喧嘩の真っ最中のオーベロンが、またもやあの魔法の草の汁を使ってティテーニアを懲らしめようとしたところから、物語はさらにややこしいことに…。

「夏の夜の夢」を知ってる人ならクスリとなるような、原典の台詞をもじった表現も多く、楽しいスピンオフでした。ラストのパックの挨拶まで、しっかりと。
「夏の夜の夢」を知らない人のために(知らない人もいるんだろうか)、前室でりんこさんによるダイジェストを聴かせてくれます。パックでありながらしっかりと物語を語るりんこさんの自在さよ!

会場の「雑遊」は1階なのですが、一旦、2階にあがり、受付を済ませて前室でりんこさんのダイジェストを聴いたあと「では皆様をアセンズの森にご案内します」と、外の階段を降りていよいよ会場へ。

中はすっかり「アセンズの森」!

神秘的な森の風景

自由にしてください、寝転んでもどこに座ってもどこに行っても自由です。写真もどんどんどうぞ、ただし録音録画はご遠慮くださいね、との案内を受けて、おずおずと奥に。
私の見た回は10人くらいだったと思うんですが、最初みんな戸惑った感じながら、誰かが歩き出したり座ったりすると次第にそれぞれのポジション探しに。
面白いんですけど、それぞれの座る間隔ってある程度決まるんですね。パーソナルスペースってやつ?

座る前に隅々歩いてみたんですが、足元には枯れ葉がたくさん。本物ではなくて紙で模して作られたものなんですが音はすごくリアルでした。葉っぱの形じゃない、ぐしゃっと丸められた紙が多くて、そのほうが歩いたときの音がよかったからかなあ。
水たまり?か、小さな池か? キラキラした水があったり、頭上には輪になった樹の枝があったり。輪には雫か露か…飾りがぶら下がっていて、そんな輪がぽつりぽつりと何箇所か。

妖精のかぶる輪っかなのかな
高いところにも低いところにも

会場はもちろん四角いスペースなので四隅はあるんですが、照明の丸さが感覚に左右するのか、なんとなく円形のイメージがあって、そういや森には「妖精の輪」ってのがあったなあ(くるっと円形にキノコが生える、菌輪というやつ)なんてことを考えながら、入口近くの真ん中に腰をおろす。
壁側の隅に座る人が多かったんだけど、なんとなくど真ん中で味わってみたくなって。

あしをのばしてリラックス

やがて、物語が始まる。
ハーミアの緊張感満点の声。森に迷い込んで焦る彼女が「魔物」に遭遇して立てる悲鳴。一気に緊迫した雰囲気に引き込まれていく…。

約40分。短いけど短く感じなかったです。
役者は登場しないので朗読劇の範疇なのかもしれないけれど、音だけではなく装置と照明によって、眼前に登場人物の姿や起きている出来事が浮かぶような、想像だけで脳裏に世界を描き出させる、そういう新しい、刺激的な舞台でした。

パックを演じる林りんこさんのツイートで知って伺ったんですが、40分間フルに「パック」がいました。導入からおしまいまで大活躍!(あ、ちなみに録音です)

サラウンドに音が展開するので、目の前にいたり遠くにいたり、泣いたり笑ったり、りんこさんらしい「強い声」が強烈な存在感でした。
りんこさんって、愛らしい声も凄みのある声も、しっとりとした声も持ってらして、そしてどれもお名前の通り「凛」としているのですよね。愛を知らないパックの無慈悲な笑い声も、愛を知ったパックの泣き声もどちらも素敵でした。
前半はシェイクスピアの原典よりかなり強烈な「毒」の強いパックで(おそらく終盤への強い対比としてでしょう)それを真っ赤な照明で描くんですが、最後の最後に愛を知ったパックのいわば「成長」と美しくも哀しい「決断」を透明な光で描いていたのには、見ていてホロリとしちゃいました。

パックはダッタン人の矢よりも速いから、森の中をあちこちに自由自在!

ハーミア役の人はすごかったなあ。
パックの悪戯で思ってるのと反対のことしか口にできなくなっていたのですが、悲しんでる笑い声や怒ってる御礼の言葉、ちゃんとどっちの気持ちか伝わるの。難しい演技だったと思います。

オベロン様と、原作ではただの田舎の職人でどっちかってば「ロバ」そのものみたいなボトムがめちゃくちゃイケメンでした。
ASMRってやつみたいでヤバかった。

ボトムは大きな原典にない改変でしたし、パックもかなり原典より性格破綻妖精(笑)に描かれてましたが、と言って原典の空気から乖離はすることなく、後日譚として本当にありそうな、シェイクスピアの原作への敬意も感じられるスピンオフでした。

原典どおり、ティテーニア様、最強。

小屋そのものが「アセンズの森」。観客の私達は人間というより、森の一部あるいは妖精の仲間としてそこにいる感覚なのかな、と思いました。

あるいは、自身の「悪夢の中」にいるのかな。

「見える」人間は視覚に大きく頼って生きているのでおそらく「目からの情報」が少ないままだと理解力は半減するだろうと思うんですが、その失った情報を光の動きや強弱で補って想像をかきたて、人の五感の働きを際立たせていて、刺激され続けて退屈はなかったです。なかなか体験したことがなくて面白いステージでした。

照明の可能性、というのも探ってるのかなー。4色に分けられた照明、混ざり合ってとても美しかったです。



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うのじ。
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