勘三郎さんの分身ミッキー③鰯売恋曳網
さて。
勘三郎さんのもとへ届けた役の「分身」ミッキー達の記録、3つ目です。今回は勘三郎襲名披露興行の「鰯売恋曳網」から。
【これまでのミッキー達】
①黒足袋の十郎(助六所縁江戸桜、白酒売)
②ミッキーNYへ(夏祭浪花鑑)
もともとは「鰯売」と「仇ゆめ」とカップルものでまとめるつもりだったんですが、どちらも写真が多めになっちゃったので別にまとめます。
まずは、2005年4月、勘三郎襲名披露興行の「鰯売恋曳網」から、猿源氏と蛍火。
この子達を渡しに行って、楽屋に拉致られたんだった…かな…さすがにちょっともう覚えてませんが。
元の形はこういう、真っピンクのミッキーとミニーでした。バレンタインの頃で、見つけたときに「これだー!」となりまして。こういう素材に出逢うとスルスルーっと進むの巻。
ちょっともう剥いちゃってますが(笑)、ミッキーはもちろんパンツは履いてました。
あと、ハートマークのクッションをそれぞれ抱いていて、足にもハートマークがあります。
んで、最終的にこうなった。
ハートの色紙も買ってきて銀杏のシールを散らしてます。
いやー、どうですか、本物と比べてみて。
宣伝しとこう。
シネマ歌舞伎「鰯売恋曳網」は6/4から上映です。逆シンデレラですが、ほのぼのやさしい気持ちになるお伽噺。勘九郎さんと七之助さんもなさってますが、私にはやっぱりこの組み合わせだなあ…。
https://www.kabuki-bito.jp/news/6627/
何が大変だったって、袴と打ち掛けです。
構造がわからーーーん!
このシリーズのために和裁の本を何冊か買いました…縫うとこほとんどないけど(笑)
袴はその本に載っていた型紙を参考にしています。
和裁の本は、着物を着るのに勉強になりましたけどね。
◎猿源氏
では、猿源氏を作りましょう〜。
まずは股引。今回は褌は省略しました。
これは寸胴に作って履かせてからもう腰のところで絞って留めちゃいました。
襦袢と着付。本当は刺繍の入った着付ですが流石に無理なので無地です。襦袢と股引は裏地ですね。
着付はシルクサテン生地。
ちょっとこだわってて、ちゃんと袖は身八つ口なし、です(男性は筒袖)。
袴は人絹。網干柄は流石に見つからず、一応、海にちなんで青海波です。雰囲気は出たかなーと思ってます。
このあたりの和柄生地、特に人絹・正絹ものは、木目込人形コーナーに行くと端切れサイズで買えるので見つかりやすいですよー。
いわゆる行灯袴です。ほんとはスボンのように分かれるように作りたかったけど無理!でした。
それでも前のプリーツと後ろのプリーツ、変えてあるのわかりますかね…頑張ったと思う!
この数年後に実は仙台平風の袴を別の企画で作ったときは乗馬袴に作れました。なんでも経験です。
猿源氏は劇中、戦物語を語ります。これが猿源氏の品や知識を蛍火に端的に伝える大事な場面になるので、そのときに使う扇もきちんと作りたかった。
これも木目込人形の小物の扇子に海の生き物シールを貼ってそれらしく作り、袴の腰に挿しました。
無駄にちゃんと開くんですよ(笑)
◎蛍火
さて、続いては蛍火。襦袢は赤です。裾のこの柄は実は裾上げテープ。こんな柄ものがあるんですねー。
耳元のかんざしは人間用のアクセサリを加工してます。
白のサテンの着付は、麻の葉柄のコットンをちゃんと八掛に使ってます。なので割と分厚い仕上がり。
これ、綸子地みたいに地に桜の柄が入ってます。
帯は…四苦八苦でした(笑)
さすがに刺繍の入ったものは硬くてこのサイズではとても縫えないのでそれっぽい和柄コットンです。
女物の帯は最後まで不得意でした…もう雰囲気だけで!
打ち掛けはよく作れたと思います。
本当は白なんですがねー。
袖は見えないけど身八つ口、あります。
胴裏には人絹の白の梅柄の生地をつけて、袷に仕立ててます(さすがに袖は単です)。
仕上げるとこんな感じー。
遊女らしく見えるでしょうか?
こんなラッピングで勘三郎さんのもとに嫁いだふたりです。
結構、気に入ってます。
こんなもの自己満足に過ぎなかったんですが、実は中村屋がものすごく大切にしてくださってた(多分、作品やものによったとは思うのですが)のを知ったのはこの3年ほどあとでした。
その話はまたいつか。