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【イベントレポート】斜面地・空き家活用団体つくる ソトコト表紙記念プチトーク

 坂の街として知られる長崎市。人口減少や高齢化に伴い空き家が増える一方、斜面地の暮らしを楽しんでいる団体がある。斜面地・空き家活用団体つくる。ソーシャル&エコマガジン「ソトコト」2月号で活動紹介が掲載されるだけでなく、表紙にも選ばれた。これを記念して、まちづくりをテーマに活動する団体「U-30からはじめる長崎のまちづくり会議」が2月11日、長崎市のメトロ書店でプチトークを開催。U-30の森恭平さんが、地域を見つめ直し、楽しく暮らすことについて、つくるメンバーに尋ねた。

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▲緊張気味の4人。左から、森恭平さん(U-30)、岩本さん(つくる)、金氣さん(同)、森恭佑さん(同)

Q.活動紹介をお願いします。

岩本)代表の岩本です。グラバー園から歩いて5分ほどの、シェアハウス兼コミュニティスペース「つくる邸」で活動しています。きっかけは6年前、大学院生の時に斜面地の研究をした時。研究だけでなく、空き家が多い坂の町をなんとか活性化させたくて、仲間を集め、10年ほど空き家をだった築約75年の家を借りて、リノベーションしました。現在は、僕と森恭佑君と住んでいます。地域のコミュニティスペースの役割もあるので、いろんな人が来ます。

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 若者を集めるために、つくる邸で花火を見る会や、坂の上の空き地でゲリラ的に斜面地ピクニックをして坂の町を楽しんでいます。
 また、毎週水曜日は、地域に開くために住み開きをしています。地域のおばちゃんたちもやってきて、地域外の若者と交わる場所になっています。
 最近は、七草粥を食べる会を実施しました。お世話になっている地域の人にお願いして、その方の畑で取れる七草使って、参加者と一緒に七草粥をつくりました。

 このように、坂の町に暮らして、自ら体験したことをSNSで発信する。それに共感してくれる人が、遊びに来たり、移住したりしています。
 団体名は、不動産のように空き家の運営をすると思われがちですが、実際は坂のまちの暮らしを丁寧に発信する団体です。空き家は、ただ埋まるだけでは良くはない。ゴミ出しのルールが悪かったり、近隣とのトラブルがあったり、空き家は埋まったけれど、地域にとってプラスなのかマイナスなのか…ということもあります。そうならないために、暮らしに共感した人に空き家に住んでほしいと思っています。

Q.なぜ長崎の斜面地で生活し、どんな風景を見ているのでしょうか。自分たちが好きな風景を持ってきてもらっているので、自己紹介と、その景色を選んだ理由をお願いします。

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森)出身は福岡で、大学進学を機に長崎に来ました。もうすぐ3年目の会社員です。大学3年生ごろからつくる邸に住み始めました。
 好きな風景は、つくる邸の縁側から見える外の光景。長崎はきれいな夜景が有名ですが、僕は明るくて日が差していて、海が青く光っている光景がめちゃくちゃ好きです。晴れた日の早朝は気持ちがいい。午後の時間帯に窓を開け放って、ゆっくり過ごすのがすごく好きです。斜面地で、車通りから離れているのでとても静か。長崎の良さはこういうところに現れているのではないか、と感じます。
 もう一枚は、地域の広場で、地域の人たちと集まってお酒など飲んでワイワイ楽しんでいる時です。家族みたいな人たちと昼間からあったかい時間を過ごして、気持ちを充電して、仕事を頑張れています。なので、暮らしの中ですごく大好きな時間です。

Q.続いて金氣さんお願いします。

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金氣)出身は長崎で、一度も県外にでたことがなく、そのまま長崎で就職しました。大学生の時につくると出会い、ほぼ初期メンバーとして活動しています。つくる邸の活動を始めてから、南山手町に足繁く通うようになり、こんなおもしろい町があるんだ、と感動しました。自分も住むようになり、(つくる邸としては)3軒目の空き家の活用事例になっています。
 お気に入りの風景写真は、南山手町にあるグラバースカイロードという斜行エレベーターを最上階まで登って、振り返って見る景色です。ちょうど、東山町などの向かい側の町が見えます。日が暮れて間もない時間で、だんだんと家々にあかりがついてくる、まさにそんな瞬間です。
 仕事を終えて、「疲れたな」と思ってもこの景色をみると、すごく癒される。斜面地の暮らしは、家々に囲まれている生活だと思います。人の生活が見える風景が身近に感じられ、すごく安心します。この風景を見るたびに、長崎に住んでいて良かったなと感じます。

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▲金氣さんの好きな風景

Q.岩本君はどんな風景が好きですか?

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岩本)花広場での一枚です。地域の人たちとのつながりを一番感じる写真です。
 大分県宇佐市出身で、地域とのつながりが濃いところで育ちました。つくる邸を設立するきっかけになったのが、2011年の東日本大震災。ボランティアに行った際、「津波がくる。逃げないと」というご近所の声かけで生き延びた被災者の声を聞き、人とつながりがある地域に住みたいと思いました。その後、坂の町を活性化させたい思いが生まれました。
 花広場は、坂の上にある空き地。地域の自治会の人たちが、毎週水曜日朝8時から、草刈りをし、ベンチを可愛くデコレーションして作り上げました。花広場を作った人たちは坂の町を盛り上げたいという思いがあります。この地域の人たちと共存しながら暮らすことに、ほっこりする。このように暮らしを発信し、地域とつながって暮らす人を増やすことも活動目的の一つです。

Q.ありがとうございます。つくるのメンバーたちは、特に発表の場を設けるわけでもないのに、まちのキーマンの人の話を3時間聞いて、文字起こしをすることもしています。その哲学を活動や生活に少しずつ表現していることも感心します。2軒目の空き家の活用の紹介をお願いします。

岩本)活動3年目のときに、南山手の隣の波の平町にある築130年ほどの空き家の所有者が相談に来ました。ちょうど紅茶コーディネーターの本田さなえさんが、居留地でお店を持ちたいという思いがあり、その2人を繋げました。結構大変でしたが、いろんな人に手伝ってもらって、床を張り替えたり、壁を塗ったりしたりしました。今では、九州の国産茶葉を売る専門店になっています。空き家と、何かを表現したい人がつながり、やりたいことができる南山手町となる。そして、いろんな町にも面白い場ができていき、全体が盛り上がればいいな、と思っています。

Q.その後、3軒目もできましたよね。

岩本)大家さんに感謝したいです。家を他人に貸すことや、使ってもらうことは、勇気がいると思います。僕は夏祭りの実行委員長を2年務めるなど、地域活動にちょこちょこ顔を出して、地域の人との信頼関係がつくれたかな、と。その関係ができたからこそ、空き家を貸していただけたと思います。

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Q.ありがとうございます。なぜ、森さんと、金氣さんは長崎を選んだのですか?

森)最初は、長崎で働こうと思っていませんでした。大学4年の夏ごろ、就活ですり減った心を、家から見える景色で満たしていて…。仕事が始まっても、こんな時間が必要だと思いました。自分の心の充電ができていた風景と、地域の人たちとの接点を失うには惜しいと思って、長崎に残る決断をしました。

金氣)そもそも大学のときから、長崎が好きです。大学生の時、ひたすら、町歩きをしていました。歴史や風景を知るようになり、長崎に興味をそそられている自分がいることに気がつきました。長崎検定の勉強をしたり、自分で観光ルートを作って友達を案内したりしていました。
 とにかく長崎は知れば知るほど、おもしろいところがどんどん出てきます。今でも長崎という場所に飽きないです。
 今は、住人としての面白さがあります。斜行エレベーターの中で、住民たちと世間話をして、家の方向が同じで一緒に帰ることもあります。いろんな生活スタイルがあると思いますが、坂の町に暮らすことがおもしろくて、常に刺激になるので、このまちを選びました。

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会場からの質問
ー今後の展開について教えてください。

岩本)今後は地域限定の空き家バンクのようなものを地域の人と一緒につくって、暮らしの情報を発信したいです。

金氣)つくる邸をさらに開かれた場所にして、お年寄りから子供までの生涯学習の場にしたいです。誰しもが先生だし、誰もがどんなものでも学ぶ価値がある。つくる邸はみんながより豊かに生きられるようにきっかけの場所にしたい。そういったイベントや企画を考えて、発信していきたいです。

森)地域のカレンダーや、CDを作ったりして、景色に癒されながら、楽しく暮らすことを続けたいです。

Q.最後にひとことお願いします。

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岩本)つくる邸の活動の一つは、長崎の魅力に気づく視点を養うことだと最近、気が付きました。なにをするかではなく、どうあるか。つまり、まちの魅力に気づく視点や価値観を身に付けることが、一番大事だと思います。それさえできれば、どこの地域でも、地域の見る目が変わって楽しく暮らすことができる。引き続き、そんな思いで活動を続けていきますので、今後ともよろしくお願いします。

▼斜面地・空き家活用団体つくるのホームページ

▲掲載されたソトコトのページ

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