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【UNNYAに関わるひと②】米ヒューストンでランドスケープ・デザイナーとして働く石嶺隼さん

 こんにちは!このコーナーではUNNYAを構成する人々を紹介しています。2人目は、米ヒューストンでランドスケープ・デザイナーの石嶺隼さん(みねっち)。バトンインタビュー長崎編佐世保編の妄想図を描いてくれました。
  長崎から離れて3年ほどたつ彼から、どんな景色が見えているのか、これから長崎とどう関わりたいのか聞きました。

 「おはよーございます」。ちょっと眠たそうな声で画面越しに登場したみねっち。ラジオ収録は、ヒューストン時間午前7時からだったので、早起きさせてしまった。申し訳ない。日本時間はというと、午後10時。私は余裕で準備できてると思っていたら、まさかのソファで寝落ちしてて、約束していた時間ギリギリに目が覚めた。なので、2人とも寝起き状態のオンライン収録でございます。
 序盤からテンションぶち上げて喋るぞ!と思っていたけれど、まあ難しいよネ…。でも徐々にエンジンかかってきて、最後の方は楽しくなっちゃってきているので、ぜひ音声で私たちの熱量を感じて欲しいです!

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 今回は、前半と後半の2部構成になってます。それぞれ1時間。うん、喋り過ぎた。


 前半では、みねっちの自己紹介と長崎との関わり方を語っています。沖縄県那覇市出身で、都市計画や都市に関する勉強をするために長崎大環境科学部に入学。長崎のまちづくり市民団体の活動に飛び込みながら、「長崎流まちづくり」を学んだとのこと。2016年に長崎大環境科学部を卒業し、18年に長崎大学院水産環境科学総合研究科を修了。さらにランドスケープの学びを深めるため、ハワイ大マノア校に進学し、今年10月から米国ヒューストンで仕事をしています。

 後半は、これまでの経験を踏まえて、ランドスケープデザイナーから見た長崎について語っています。海外の事例を基に、三菱重工の衰退後の跡地活用や長崎港の未開発エリア、斜面地の空き家・空き地問題など、将来の長崎像についてアイデアを共有してもらったのですが、これが面白い面白い。2人とも興奮状態で話してます。いろんな気づきがあったなあ。ぜひ、これは長崎の人たちに聞いてほしい!!!

 後半で話題に上がったプロジェクトを参考に記します。(TEXT BY みねっち)
ネタばれになっちゃうので、見たくない方はすっ飛ばしてください。

チュラロンコン大学中央広場
 バンコクに位置する国内初の大学100周年を記念する形で2019年に完成した大学のキャンパスの再開発プロジェクト。デザイナーはタイのLandprocess主宰Kotchakorn Varaakhom。2020年にベンツのCM出演やTED Talkでも有名。
 急速な経済発展や気候変動の影響で洪水被害が増加し、農業や都市インフラ、市民の生活への懸念が年々顕著になっているタイで「100年後のバンコクはどのようにあるべきか」を問うことを発端にプロジェクトをスタート。大学のキャンパスをスロープ状の地形へ変更し、その地形に沿って緑化された屋上、洪水ろ過システム、芝生広場、ため池が整備された。この新しいキャンパスのシステムは、50年に一度、100年に一度規模の深刻な洪水で発生する降水量をキャンパス周囲から受け入れることが可能になるようにデザインされている。これにより大学のキャンパスを自然豊かで美しく、安全な市民の憩いの場となると同時に、キャンパスが洪水被害を最小限に抑える働きをし、バンコクに戻ってきた原生生物の重要さを知り、社会全体に学びの機会を提供する事を実現した。
ディスカバリー・グリーン
 高層ビルが立ち並ぶヒューストン中心街に位置するサッカーグラウンド約9個分の駐車場を自然豊かかつ市民活動の中心地として再開発したプロジェクト。デザイナーはサンフランシスコに本部を構え、生態系への配慮とその巧みなアースワークで成功を納めたハーグリーブス・アソシエイツ。
 「更なる経済効果と様々な社会変革を促す賑わいの公共空間をヒューストン中心街に」というミッションでスタートしたディスカバリー・グリーン。既存の街区を有効活用し、ため池や噴水、植物園、広場、レストラン等様々なランドスケープ的要素を上手くレイアウトすることで出来上がった非常に美しい市民公園。定期的にアートイベントが開催されるだけでなく、園内に配置されたユニークなサインによって「ディスカバリー・グリーン」の名に相応しく、公園に応用された自然インフラの仕組みや園内に訪れる生き物について学ぶ事が出来る。
 2008年のオープン以来10年間で、公園周囲ではホテルや住宅、オフィスビル等様々な開発が進んだ。その経済効果は合計で1,000億円を超えた。来園者も年間合計150万人以上、イベントも600以上行われ名実ともにヒューストンの賑わいが豊かな自然配慮型の公園という環境に支えられている。空地がその土地の文脈で素晴らしい賑わいの中心地になり、多くの経済効果を生むという点で素晴らしい事例。
ガス・ワークス・パーク
シアトルの産業の中心だったガス工場跡地をシアトルの歴史を象徴する遺跡と都市公園として融合させたプロジェクト。1976年に米国人ランドスケープ・アーキテクト、リチャード・ハーグが実施。1970年代から噴出し始めた工場跡地の再利用問題に対する最初の成功事例として知られ、後世の都市デザイン、ランドスケープ・デザインに多くの影響を与えた。また今となっては一般的になった、ランドスケープ・デザイナーがデザインのアイデアを構築する過程を行政や市民と積極的に共有するスタイルを広めた最初の人物としても知られている。
 工場の運営過程で汚染された土壌環境を地元ワシントン大学の研究チームと協働。植物や木の根が水分を吸う力に着目し、水分と一緒に汚染物質も吸着するアイデアを考案したほか、井戸を造って汚染された地下水を気化させて取り出すなど多くのシステムを実践し、環境汚染の解決に多くの資金が集まる前例を作った。
 結果として10年雑草さえ生えなかった工場の敷地には芝生が生えそろい、新たに造成された土地に人が集い、シアトルの歴史を象徴する市民公園へと姿を変えた。前例の無い事態に研究機関とデザイナーが手を取って行政、市民へ提唱を続けながら挑戦を続けた。それに色んなサポートがついてきてプロジェクトが成功に近づいた。このプロセスは素晴らしい。
デュイスブルグ・ノード・パーク
ドイツのデュイスブルグにある製鉄工場跡地が、その地の産業の歴史を後世にシンボルとして残す公園へと生まれ変わったプロジェクト。1994年にドイツ人ランドスケープ・アーキテクト、ペーター・ラッツによって実現し、1990年代にヨーロッパで巻き起こった工場跡地を環境に配慮しながら作り変え、社会・文化的に価値あるモノへ再利用しようという運動(IBA)の中で最も成功を納めたプロジェクトとして知られている。
 ラッツは工場の施設を遺跡として敢えて保存。子供達にとっては工場の施設がアスレチックになり、地元の大人たちには居心地の良い自然公園に、遠方からの来訪者にはデュイスブルグの産業の歴史が学べる場になるなど、様々な形でその地固有の歴史と彼らの体験が交錯するようになっている。また製鉄の工程で汚染された敷地内の土壌も敢えて保存し、新たに植えた植物の力を使って改善を長期的な目線で行う事を提案し、既存の下水管やその他多くの工場の施設を環境改善の為に再利用した事でも注目を集めた。
 この工場の施設は今でも、雨風に晒されゆっくりと朽ち果て続けている。この姿がデュイスブルグで起きた産業由来の環境汚染を思い起こさせ、私たちが活きる21世紀の環境が今後どうあるべきかを考える機会を与えてくれる。ランドスケープデザインを通して、役割を終えた施設に新たな価値を与え、都市のシンボルとして社会にメッセージを伝え続ける事を後押しすることができる。
オイスター・テクチャー
オイスター(牡蠣)を使って防波堤を建造し、牡蠣の水質改善作用を活かしてニューヨークの汚染された河口を綺麗にし、さらに市民活動の中心の場として生かそうと提唱したプロジェクト。美しい空間そのものも勿論だが、それ以上に生物の力を使った環境改善・インフラ整備・社会問題への提言・人の活動への提案などに力を入れた事で、21世紀の環境・都市デザインが向かうべき新しい方向の1つとして脚光を浴びた。プロジェクトを手がけたのはScape Studio主宰ケイト・オルフ。2021年現在最も世界で成功し、業界全体の期待を背負って新たな挑戦を開拓し続けているランドスケープ・アーキテクトと言っても過言ではない。
 本事例集の中の唯一の「展示」プロジェクト(*ラジオでは「実現した」との発言だったが、「展示会を開いた」の誤りです)。発表された2010年の2年後にプロジェクトの舞台であるニューヨークを直撃したハリケーン・サンディーの深刻な被害がこの「オイスター・テクチャー」で論じられていたアイデアの正統性を一層高め、現在2080年に向けて建設が進められている「リビング・ブレイクウォーター」が実現したという経緯がある。この経緯は非常に興味深い。
 彼女が展示会を通して如何に世界が直面する壮大な問題に対し「挑戦的かつ面白く、しかも革新的」なアイデアで提言を行ったか。そしていかにそれが新たな方向へ世界を導くキッカケへと発展していったか。その姿勢・デザインアプローチには長崎も学ぶものが大いにあるのではないだろうか。
コペンヒル
コペンハーゲンの廃棄物発電所を建設しようと2011年に発足したプロジェクトのコンペで勝利した案。「2025年に世界で最初のカーボン・ニュートラル・シティになる」というコペンハーゲンが都市として世界に打ち出した目標に寄与する施設になる事は勿論、活発な市民活動とランドマーク建築としての芸術性の両方を高い次元で追求することで、「快楽としての持続可能性」が具現化された。2019年にオープン。
 デンマーク人建築家ビヤルケ・インゲルスによって手がけられたこのプロジェクトは大胆にも、ごみ処理・発電という機能とスキーやハイキング、その他多くの市民活動を催す憩いのという機能を掛け合わせる事を主軸に建築が設計された。またごみ処理場・発電所から発せられる煙は最新の科学技術によって無毒な煙へと変換され、リングの形に型取って排出される。この煙の量がどれだけコペンハーゲンがヨーロッパまたは世界代表として二酸化炭素排出量削減に貢献しているかを可視化し、そしてそのユニークな形の煙を見て市民が都市の取り組みに対して誇りや責任を抱く事を願ってデザインされた。社会にインパクトを与えられる可能性を秘めた要素同士の融合を諦めない。そして勇気ある壮大なビジョンを持って場を作り、市民、都市、社会、世界へメッセージを届ける事の面白さを伝えてくれるプロジェクトではないか。
シアトル・ウォーターフロント・パーク
2023年に完成予定で、シアトルの水辺を生態学的なアプローチで再開発を試みているプロジェクト。対象地はシアトル中心街のすぐ隣で自然が少なくコンクリートで覆われた空間になり、雨水の排水問題や水辺の水質の低下など様々な環境問題が生じていた。そこでシアトル原生の生態系とは何かを問い直し、既存の環境問題の解決と自然豊かな水辺を取り戻す事をミッションにプロジェクトはスタートした。
 プロジェクトを手がけたのは、ニューヨークのハイ・ラインでお馴染みジェームズ・コーナー。2017年には1つの区切りとなる最新鋭の生態系技術が集約された護岸が完成し、その護岸では人々が水辺の空間を楽しめるだけでなく、遡上してくるサケやその他多くの水生生物の生育・繁殖を支える機能も組み込まれている。長崎港の新たな活かし方として、面白い事例。

  以上、濃厚濃密なみねっちの回でした。あー楽しかった。これからも、みねっちを応援し続けると同時に、私もいろいろと頑張るぞ。かなり刺激を受けました。ありがとうね!

文:こけ

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