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【バトンインタビュー佐世保編①】 佐世保港に新しい交流を生み出す仕掛け人一般社団法人REPORT SASEBO代表 中尾大樹さん

 
どのように「まち」を自分ごととして捉え、何に価値を見出して取り組んでいるのだろうー。そんな疑問を、長崎と佐世保を中心に信念を持って活動する人にぶつけ、価値観を探るバトンインタビュー。
  佐世保編第1回目は、佐世保港をキーワードに活動する一般社団法人REPORT SASEBO代表の中尾大樹さん。イベントの開催やカフェの立ち上げを通し、佐世保を「面白い」と気付く仲間を増やそうとしている。

 長崎県北部に位置し、県内で2番目に人口が多い佐世保。佐世保港は、湾口が狭く水深が深いことから軍港として見出されたが、現在では商業港としての整備も進んでいる。この港に注目し、まちに新たな風を吹き込もうとしているのが中尾さんだ。

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 佐世保市出身。生まれ育ったまちはスーパーや本屋などロードサイド店があり、生活に困らない程度に「都会化」していた。刺激が足りず、東京の大学へ進学。だが東京で暮らしていると、「都会で生まれ育った人たちに、興味のあるデザインなどの面では勝てない」と思うように。公務員を目指し、佐世保市役所に就職した。
 
 図らずともUターンしたことが、佐世保に対する想いを変えるきっかけとなった。
 SSKの風景、古びたお店の雰囲気…。就職して駅周辺に暮らし始めた時、これまで気がつかなかった雑然としたまち並みが、魅力的に見えた。
 また当時、佐世保の雰囲気と似ている北九州市が、まちの発見されていない魅力をフリーペーパーにして発信していることも、中尾さんの「まちづくり魂」に火をつけた。「切り口一つで、かっこいいものに変わる。佐世保のフリーペーパーをつくりたい」。こうして中尾さんの挑戦が始まった。

 2008年、市役所の仲間を集めて自主研究グループを結成。市外の人が、どのように佐世保を見ているのか、お酒を飲みながら語り合うイベントをしたり、佐世保のロゴを考えたりした。活動を進めていく中で、キーワードとして浮かび上がったのが「港」だった。
 「港は、人々が集い旅立つ場。港のまちである佐世保で、おもしろい出会いを重ねてほしい」。そんな意味を込めて、常設で自らの思う佐世保らしい人やものごとを紹介できるカフェ「RE PORT」を妻の協力のもと開業した。

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▲第一回目のイベントトーク「地域の新しいモノサシを考える:平戸・小値賀で延べ1万人以上の米国修学旅行生を呼び込んだ小関哲さんを迎えて」(2012年、中尾さん提供)

  活動を始めてから10年ほど経ち、まちの様子は変わっていった。戦前から残っていた旅館が廃業し駐車場になったり、古くて味わい深い喫茶店もなくなったりして、まちのアイデンティティを考える住民の気質が乏しいと感じた。「個人が動くことで何かが変わるという経験が少ないまちだと思う」と肩を落とす。
 地元の人にこそ佐世保を面白がって欲しいという願いから、自ら積極的にまちに出て、活動するようになった。特に活動拠点である万津町には、コンパクトなまちの中に、住民、商売人、外国人、市場など様々な個性が集まっている。「いろんな人が語り合う場所やイベントをつくり、もっと『混ぜこぜ』になった面白さを生み出したい」。

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▲万津6区の象徴的な複合商業施設「BRICK MALL SASEBO」

 カフェの立ち上げから5年という節目で、さらに新しい一歩を踏み出した。地元の人がまちの面白さに気づくためには、外の人の視点から面白いと思ってもらう「評価の逆輸入」が必要だと考えた中尾さんは2019年、市内外から佐世保に思いのあるデザイナーやまちづくりプランナー、建設コンサルタントらと共に、一般社団法人REPORT SASEBOを設立。自治会と大学の協力を得ながら、宿泊施設や観光プログラム、イベントを作り上げ、新たなまちの楽しみ方を発信していく予定だ。

 

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▲中尾さんの妄想図

▼かつての万津町の様子。多くの人で賑わっている

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 中尾さんが妄想する万津町は「カオスさ」がポイント。かつて万津町の朝市は賑わっていたが、時代が進むにつれ、郊外に人は出て朝市に寄る人も少なくなっていった。実際、中尾さんの父親も、郊外に家を持つことが夢だったとか。「今はもう一度、街中に人が戻ってきている気がする。切れてしまった関係性や、均質的なまちになってきたからこそ、まちのアイデンティティを取り戻したい時代なのかも」。
 人やものの個性を尖らせ、都会的な要素だったり、おしゃれな要素だったり、人情味のあふれる要素だったり…。「そんな要素に面白さやポテンシャルを感じることで自分の居場所をつくることができるのが万津町。ひとつひとつの質を高め、個性を繋げていけば絶対に面白いまちになる」

【編集後期】

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▲カフェ「RE PORT」の店内

 「おしゃれで都会的なカフェだな」。カフェRE PORTに入ると、コンクリートの机や、ブルーの床が目に飛び込んでくる。実は、佐世保の色をイメージして空間をつくったそう。中尾さんによると「グレーは佐世保のインダストリアルな感じ、深いブルーは佐世保港」と話す。なるほど、まちのイメージカラーって考えたことなかったな。色を考えてみると、まちの個性が浮かびやすくなるかもしれない。あなたのまちはどんな色?


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文・写真 こけ 挿絵・みねっち

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