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インタビュー Rulu-003 2023/08/30

このインタビューシリーズは、一人の人を追っていく企画です。前回

参加いただいている方は、https://note.com/rphoto さん。
SNSでモデルを募って写真を撮られている方です。
インタビューという名の人間ツーリズムにようこそ。

目次


冒頭

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——今回は、どんな撮影でしたか?

結構スリリングというか。
夜の新宿で撮影したんですね。
人もたくさんいたり、ワイワイした中で、2人で勢いでワっと撮影した感じで。

当日は駅で待ち合わせをして。
夜だったので、普段は喫茶店に行ってインタビューをすることが多いんですけど、近くの居酒屋に入って、そこで夜ご飯と少しお酒を飲みながら、インタビューを始めました。

彼女は。
本業はフォトグラファーをしてる人で、それで勉強がてら、撮られる側もやっている方ですね。
元々コスプレイヤーをしていて、昔の写真を見せてもらうと、男のキャラのコスプレをしていて、男装ですね。
今はもうコスプレはしてないそうなんですけど、普通のポートレートのモデルをやったり。

同じ写真を撮る人間同士、いろいろ話しました。
すごく綺麗な方なんですけど、写真は綺麗に写りたいとかじゃなくて、自分がそのキャラが好きで、そのキャラになりたい気持ちでやってる方が強いので、男性キャラクターをやっていたらしいんですけど。
今はコスプレをやめて、キャラクターじゃなくて自分個人として写真を撮られてるっていうのは、どうして変わっていったんだろうと思って。
興味があって聞いてみたら、キャラクターだとそのキャラクターに寄せていかないといけなって。
このキャラだったらこういう表情で、この表情はしないだろうし。
こういうポーズをとって、こういう場所に行って、でもここには行かないだろうし。
場合によってはポーズをそのまま再現するとか。

最初はそのキャラが好きで、そのキャラになりたいから楽しかったんだけど、そのキャラがやらなそうなことはできなくなってきて。
ちょっと間違うと、それは解釈違いになるよね、みたいに言われたりして。

でも個人だったら、そういう制約がないから、表現が無限大なんじゃないかなと思ってコスプレから一般的なポートレートの撮影にシフトしていったって言ってましたね。

おっぱい見せてくれんの

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居酒屋を出た後は、そのまま新宿の街をあちこち歩きながら、撮っては歩いてっていう形で撮影を進めていって。
一番最初は、ゴミ袋に突っ込んでいって、ここで写真を撮ってみたいんですよねって言われて。
ちょっとびっくりしたんですけど、やりましょうって彼女が言って。
居酒屋とかいろいろある通りで、道沿いにゴミ袋とかが出てるんですよね、そこのゴミ箱にもたれかかるように座り込んで、私はそのまま写真を撮って。
ただもう駅の近くで、まだ21時台で人通りも全然あるし、あとは呼び込みの店員さんとかも立ってるじゃないですか。

そんな中で突然二人がそんなことを始めるから、お店の客引きの人たちがすごく心配して集まってきちゃって。
大丈夫大丈夫なのあれ? みたいに客引きの人同士で話していて。
気分が悪いんですか? みたいに言われて。
倒れてると思ったんでしょうね。
すごい心配されたりとかしてたんですけど、大丈夫ですって言って私が対応して。
多分そういうざわざわした声って、彼女にも聞こえていたと思うんですけど。

普通は人が来たからもう行こうとか、どうしようとかってなると思うんですけど、一切無視。
自分は今こうやって写真を撮りたいから、周りは関係ないみたいな感じで。

その後もてくてく歩きながら、本当に周りの目を気にせず。
でもやっぱりどうしても目立ってしまうので、ギャラリーの人とかに、声をかけられたり。
頭大丈夫なのかなとか、顔が美人だよとか、そういう感じの野次が飛んできたりとかしながら、撮っては動いて撮っては動いて。
中には酔っぱらってる方とかもいらっしゃるので、動いて服がはだけてたりしてると、お姉ちゃんたち何やってんの、おっぱい見せてくれんの? みたいな感じで声かけられることもあったし。

インタビューのときに、彼女にとってはこういう性的なからかいは結構あって、それに対する憤りみたいなことも語っていたので、そこで私は心配になって、座ってる彼女を引っ張って、その場から移動したりしたんですけど。

福岡と新宿

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私、福岡出身なんですけど。
福岡の感覚でいくと、今回の撮影のようなことってできないんですよね。

できないというか、コミュニティが小さいので、やっぱり変わった人がいるっていうことに対して、必要以上に目立ったりとか、怒られたりとかするんですけど。
人目がより気になるというか。
でも新宿って、あんなに人がいるのに、それを咎めるとか、撮影ができないような状態に追い込まれるっていうことはなくて。
みんな何か、一つのエンタメじゃないけど、面白がって見ていて、いいね、かっこいいねとか、決まってるよとか、そういうことも言われたりしながら、なんかがんばれみたいな感じで言ってくる人もいるし。
これストリートスナップっていうやつですか? とか声かけてくる人もいましたし。

だからいろんな野次は飛んでくるけど、撮影をしている私という変な人間に対して、周りと違う行動してる人に対して、寛容なんだなと思いました。

でも、寛容と言ってもいいのかなあ。
そうとも限らないなっていう感じがして。
写真を撮る分には、もちろん撮りやすい環境なんですけど、なんだろう、もう何やっても、どこまでいっちゃってもいいのかもしれないって思っちゃうんですよね。

今、トー横キッズとかすごく問題になってるじゃないですか。
そのあたりにも行ったんですけど、若い子もいるし、若い子に限らず年配の方とかも。
新宿の真ん中なのに、普通にダンボールしいてそこで寝てるとか。
広場にもゴロゴロみんな寝てるし、お酒とか、ゴミだらけだし。
何か一種の無法地帯みたいになってて。
それがまた人を呼んで、人目もはばからずに、そういうことができてしまう。
これでいいのかなってなっちゃう。
許されてると思っちゃうというか。
それでちょっと、いろいろ考えることはありました。

——性的なからかいに対する憤りというのは、どういったことでしょう?

彼女は今はフォトグラファーをされているんですけど、元々はバーとか、イベントコンパニオンとか、見られる仕事をされていたらしいんですね。
それで、イベントコンパニオンって7号とか9号の服を着なくちゃいけないので、絶対に太っちゃ駄目だとか、でもプレッシャーで余計に食べちゃったりとかして、結構大変だったみたいなんですけど。

イベントコンパニオンの衣装って肌の露出が高いじゃないですか。
スカートがすごく短かったり、胸元が開いていたりとか。
そういうものに対して、何でしょう、見せてるんだから触ってもいいって思われたり。
最近、DJ SODAさんの話題もありましたけど、やっぱりそういう感覚の人っている。
例えば会社の人にはセクハラ的な発言はできないけど、こういう格好をしてるイベントコンパニオンにはそういうことを言ってもいいとか思っちゃったり。

彼女は副業でマッサージの仕事もしてるんですけど、男性も女性も来るところなので、男性からちょっと触ってもいいって言われたりして。
いや駄目ですよって、お客さんだから強くは言えないから、やんわりと言うんだけど、強く言ってもいいとは思うんですけど。
でもやっぱり、指名とかあるし。
本当はお店が守ってくれたらいいんですけど、自分でうまくあしらったりしなくちゃいけなくて。
性的な言葉を投げかけられても、相手が不快にならない程度に、やんわりと言ってなだめたりして。
そうやってその場はやり過ごすけど、よくよく考えたら、なんで一方的に性的に搾取されてるような感覚になるってことに対して、やっぱり、なんで? って思う。

彼女が、駄目ですよって言った後に、相手は、だってすごい好みだったんだもん、っていう感じで開き直って。
好みだったから、が触っていいて理由、それ何ですか、って。
それは理由じゃないよな、って。
そういう身勝手に一方的に性的な言葉を投げかけられるという悔しさがあるって、言ってました。

でも、写真だと安全に自由に自分を表現できるから、写真に写って自分で表現する、ということをやりたい、というのが彼女の今の結論。
かわいい私もかっこいい私も、全部私だし、自分の体だし、それは誰かが勝手に触っていいとかそういうものじゃない。
それは表現であって、干渉をされるべきではない。

——はい。

写真であれば干渉されない。
表現することに対して、コスプレイヤーとしての経歴もあるので、こだわりとか経験があって、受身じゃなくて自分から表現していく、そういう強さをすごく感じました。
感情の振れ幅も大きくて、すごいもう明るく楽しそうに笑ってると思えば、すごい怖い顔をしていたりとか。
うん。
かっこよかったり悲しそうだったり、どんどんどんどん変わっていってました。

スタジオとかに比べると安全ではない場所で、女2人で無茶な撮影をしたので、私も何かトラブルにならないかとか、何かあったら必ず守らないといけないなとか、どきどきヒヤヒヤしながら、撮影をしました。
新宿ってこういう町なんだなって思ったりとか。
私、東京に来て間もないので、土地に対する先入観がそんなになくて。
でも、新宿は有名なので、福岡で言えば中洲みたいな。
中洲を大きくしたい感じかなとか、思ったりしていたんですけど、またちょっと違うんだなって。
若い子も案外多いんだなとか、そういうことを撮影中にリアルタイムでどんどん感じたり考えたりしながら、最初は彼女をドキドキしながら撮っていて。
でもだんだん途中から、自分もちょっと吹っ切れてきはじめて、もっと自由に、写真だからこそ、自分たちが表現したいことをやってもいいよね、みたいな。
そういうふうに、感情的には変わってきて。
そこからは2人で楽しんで、出し切って、最後はもうビールまでかぶって、クタクタになって帰りました。

今の社会を、私はこういうふうに見ました。

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——どうして、今の、SNSで人を募って撮影という活動をされているのでしょうか。

今の社会を、私はこういうふうに見ました。
みたいなことを、一つの事実に近い形で提示していけるような撮影ができていったらいいなとは思いますね。

——その活動を通して、こういう気分になりたい、といったものはおありですか?

どういう気持ちになりたいかというのは、ないかもしれないですね。
例えば撮ることで、自己肯定感が上がるとか承認欲求が満たされるとか、そういうものはない。
なくて、でもモデルの方の話を時間をかけて聞いたり、1日ゆっくり過ごすことで、モデルの方が、より普段言えないことを言えたりとか、吐き出せないことを吐き出したりとか。
そのことについて肯定的なフィードバックをもらったときは、良かったなとは思うんですけど。
でも実際には、結構なハードワークというか、大変な部分の方が多いから。
そうだな、自分の気持ちがどうなりたいかっていうのはないけど、やっぱり形にしたい気持ちは強いですね。
良い写真集だったり、本だったり。答えになってないですけど。

——新宿は、どうでしたか?

中洲と比べると。中州は、すごい大人の街なんですよね。
福岡で一番栄えてる飲食店で、クラブとかキャバクラとか、スナックとかがたくさんあって。
会社員の人とかがお酒を飲んで、そういう世界観がしっかりもうしてるというか。
ある意味、それに対して未成年の子が入ってきたら排除されるような感じなんですけど。
新宿は、未成年すらたくさんいて、その子たちが、元からいる悪い大人に、やっぱりまだ判断力が未熟な部分で、良くない影響を受ける。

例えば女の子とかは立ちんぼしたりとか、未成年で売春してる子とかもいっぱいいるし。
そのお金を何に使ってるのかって言ったら、お酒を買ったりオーバードーズするために市販薬をたくさん買ったり。
あと大麻とかもすごく流行ってるらしいので、そういうものを買ったりとか。

あとは男の子たちはそういう女の子たちに、リアコシステムとか言うらしいんですけど、お金を貢がせて、その代わりにその女の子に対してメンタルケアを提供するみたいなシステムがあったり。
あとは、薬を横流しするお手伝いをしたり、闇バイトをしたり。
ちょっと前に、命を落とした子もニュースになってましたけど。

だから、逆に、なんだろう。
歓楽街は歓楽街として、大人の場所としてあった方が、統制がとれるっていうか。
言い方がちょっと変かもしれないんですけど。
それに比べると、新宿はすごく、もっと危ういなと思いました。

——はい。

私は、実家が水商売なんですよね。
おばあちゃんの代からお店構えて、水商売をやっていて。
うちのお母さんもクラブで働いていて、実家に戻ってきてからは、おばあさんのお店の近くに二号店みたいな感じでお店出して。
私も大きくなってからはお店の手伝いをしたりとか、結構夜の世界に馴染みがあるというか。

SNS

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彼女も、今はナイトワークの女の子を撮ったりとか、ブライダルを撮ったりするカメラマンをしているらしいんですけど、自分の作品を作っていきたいって言っていて。
彼女は、イベントコンパニオンをしていて、過食嘔吐になっちゃったらしいんですよね、摂食障害。
それでこの撮影の2日後に、友達に頼んで過食をテーマに写真を撮らせてもらうって言ってて。
あとは女性の承認欲求。
彼女はSNSにすごく問題意識を持ってるみたいで。
承認欲求を人に求めると、結局、ずっと他人から与えてもらわなければならなくなる。

例えばモデルの女の子でも、最初は服を着てモデルをしていても、それで満足できればいいんですけど、今度は他のモデルさんと比べ出すんですよね。

他の人よりフォロワーが少ないとか、いいねが少ないとか。
こういうことを気にして病んじゃったりとかして。
ヌードとかにしたらもっといいんじゃないかなとか、そうやってエスカレートしていってしまったり。

承認欲求を求めるがゆえに、また逆に潰れちゃったりする人もいるんですよね。
その話は、熱く語ってましたね。

——なるほど。

やっぱりInstagramが流行ってからですかね。
なんかみんな、より人と比べるようになっちゃったりして。
あの子よりは可愛くないとか、アプリで盛ったほうがいいねが増えるとか。
ルッキズムみたいなのは馬鹿みたいだけど、加工アプリとか、やっぱり加速してるように感じるし。

その中で、やっぱり写真ってすごく大きい。
でも逆に、私の写真は、盛れる写真ではないので、キラキラはしてないので、そういう人にも写真を頼んでみるっていうのは、もしかしたらどこかで自分は本当の自分じゃないとか感じているのかなって。

元々の自分が価値がないと思ってるような自分を、どうにかしたいみたいな気持ちがあるのかもしれないですね。
今、イメージを自分で自由にコントロールできる時代に、あえて人に、現実を写真に撮ってもらう。
ここは、考えていきたいところですね。

終わりに

すこしだけインタビューの佳境を感じた回でした。
インタビューでいうところの佳境とは何か?
最初はとにかくもう助走なんですよね。クライマックスではない。
いきなり重要なことを聞いたスタートだったとしても、それでも助走なんですよね。
やっぱり、情報量が、まだ少ないから。
始まって、時間経過という関係性の変化や、無意味無駄含めてのいくらかの言葉の量量がたまっていかないと、クライマックスというものを作れないんです。精製塩と天然塩でミネラルちがうじゃない、みたいな。
必要な情報、不要と思われる情報含め、ある程度出そろったなという感じがして、じゃあそれらパーツの向かうエンディングってなんでしょうね? とキュウキュウしてる感じの時間。これが佳境。
お茶を沸かすケトルの蓋がガタガタ震えてて、あなたが「そのまま震えてろ」って悪態をついている時間のことですね。

今日、その感じがあったんですよね。
このインタビューが、話の行く末が、見えたんじゃないのか、という、ね。
たぶんそれは「記録」するということで合ってると思う。
じゃ、次回からは、記録で正解か確認するルートか、それがどう発展していくのかルート化、それをいったん壊してみるのかルートあたりですかねえ。

とはいえ、わかった気がするだけかもしれないのはなのは、(もう勘弁してよね)、いつものことですが。(何回目なのだろうか)。

制作:qbc(無名人インタビュー主催・作家)

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