君に好きだと言えたら
君に好きだと言えたら
どんなに良いだろう
私の毎日を彩っているのはいつも君だった。優しい表情も笑った時にできるえくぼも他の人と違っていた。
他にも同じような人いるんじゃないかと言割れるかもしれないけど、私にとっては違った。
何が違うのかわからないけど、人の感情なんてだいたいそんなものだろう。
そんな風に思っていても実際、話したことはなかった。いつも雑踏を歩いているのを見ているだけ。
ある日、出来心であとをつけてみた。どんどん人気のない道に入っていくのを追いかけていくといつの間にか、雑居ビルの屋上にいた。
「今、どんな気持ち?」
初めて声を聞いた。なんとも形容しがたい声だった。
そしてこの瞬間に気づいた。
目の前にいるのは男なのか、女なのかすらわからない。
言葉では表現できない、というより存在がなかった。
「わからないよね。私がそうしたから」
脳にそのまま響いてくる声。
「私は自分が誰かわからない。でも時々、ついてきてくれる人がいる。あなたみたいに」
そう言えば、私の名前はなんだっけ。ここはどこだっけ。
「一人きりは嫌だった」