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プロのライターは必ず「○○」から書きはじめる

「この人の書いたものって、なんかあんまり面白くないんだよね」と感じる文章には理由があります。

「文章が下手」とか「表現力が乏しい」といった話ではありません。それよりもっと前の段階のところに問題がある、と僕は思っています。

悩むべきは、「どう書くか」より「何を書くか」

文章が面白くない理由、それは「これを書きたい」「これを伝えたい」がハッキリしていないまま文章を書いている、ということです。

編集者である僕が、まだ駆け出しのライターに原稿を書く時のアドバイスとして伝えていることのひとつに「仮題のない文章は作業が増えるだけだよ」というものがあります。

文章をいきなり書きはじめるのではなく、まず「これを書きたい」「これを伝えたい」という仮題を決めて、それを書く。そこから具体的な文章を書いていくのは、プロの書き方の基本です。

なぜ、「これを書きたい」「これを伝えたい」という仮題をはじめにしっかり書くのか。それは、仮題を置いて書きはじめないと、その後に続く文章を書いていくうちにブレてしまうからです。

はじめは「このスニーカーってすごい!」ということを伝えたかったにもかかわらず、そのスニーカーを履いた時のエピソードを書いているうちに、スニーカーのすごさより、見た景色の美しさや出会った人の面白さのほうに話が移ってしまい、結果的にスニーカーのすごさのインパクトが薄れてしまっていた……という文章はよくあります。

自分で書いた文章を後から読んでみて、「この文章、結局何が言いたかったんだっけ?」と思って、もう一度頭から書き直すのは二度手間。作業にかかる時間もどんどん増えていくだけです。


プロでも仮題を置かないと文章はブレる

プロでも文章がブレないために、つねに仮題を意識しながら書いています。書く時だけでなく、人から話を聞く時やモノを眺める時ですら、仮題が頭にあります。

たとえば、プロのライターは雑誌や書籍のインタビューの時、相手に話を聞いている間も「この取材のテーマは?」「読者が知りたいことは?」などと、編集者がつくった企画書に立ち返って取材を進めます。

そうすることで、相手の話があらぬ方向に脱線した時でも、『いやいや、膨らませたい話はそっちじゃない』と焦ることなく、話を戻すことができるからです。

文章を書く時も同じことです。ひとりの人間でも、あるいはプロであっても、書いている間に「そういえば、こんなこともあった」「こういうことも書いておいたほうがいいかな」などと、どんどんブレていくものです。

ウンチクを挟みすぎたり、たとえ話を披露したりしていくうちに、本当に書きたいことや伝えたいことがボンヤリしていってしまうのは本末転倒でしょう。


仮題を決めるための2つのヒント

「これを書きたい」「これを伝えたい」と強く思っていることを仮題にするのがベストですが、「仮題がなかなか決まらない……」という場合もあるかもしれません。そんな時、仮題を決めるヒントとなることは2つあります。

ひとつは「読み手の役に立ちそうなこと」です。

たとえば、スニーカーに詳しい人がそのことを書きたいと思っている時、ただダラダラとスニーカーについて語るより、「失敗しない今春のスニーカー選びのコツ」とか「2021年スニーカーのトレンドを大予測」といった仮題を置いたほうが、読み手にとって役立つ内容が書けそうだと思いませんか?

仮題を決める時のヒントのふたつめは「オリジナリティがあること」です。

たとえば、「スニーカーで富士山登頂は何合目まで可能か?」「スニーカーが似合うコーデ30」といった、書き手自身の強みや貴重な体験を形にすることは、「ちょっと読んでみようかな」と読み手に思わせるフックになることも少なくありません。

いずれにしても、文章はまず仮題を決めてから書くこと。そうすることで、作業効率がアップするだけでなく、内容の精度が高まることは間違いないでしょう。

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