見出し画像

プロのライターは「手」よりも「○」で書く

文章のプロは「○で書く」。

これは、前回の記事でご紹介した『「編集手帳」の文章術』にも書いてありますが、答えは「耳」です。

「耳で書く」というのは、「耳で聞いていても意味が通じるような、わかりやすい文章を書く」という意味です。

読まれる文章は「いい内容」より「いいリズム」

アンノーンブックスの安達です。こんにちは。僕の場合、耳で聞いていてわかりやすいだけでなく、リズミカルであることも重要だと感じています。

雑誌や書籍の原稿、広告のコピーはもちろん、ソーシャルメディアで発信するもので、多くの人の心に刺さる言葉を綴るプロのライターは「リズミカルな文章を書く」ということに相当こだわっているからです。

極端な話、リズミカルな文章は、いい内容が書いてある単調な文章よりずっと多くの人に読まれるとすら思います。そのくらい、リズムって大事です。

汚れちまった悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 
今日も風さへ吹きすぎる

これは、近代文学を代表する詩人、中原中也の詩集『山羊の歌』に収録されている有名な詩の一節。

この詩が、なぜ多くの人の心をとらえるのか。

その大きな理由は、やはりリズムのよさだと思います。声に出して読みたくなって、一度でも読んだら心に残るようなリズミカルな言葉は、読む人の耳に気持ちよく響くものです。

これは詩に限ったことではありません。SNSなどでの文章だって同じこと、僕たちは無意識のうちに、そこに書いてある文字を心のなかで読んでいます。声に出すことはしなくても、今こうして読んでいる文章も、必ず自分の心のなかで朗読しているのです。

そこを踏まえたうえで、文章のプロは「耳で書いて」いるのです。


文章がリズミカルになるプロ直伝「3つのこだわり」とは?

ちなみに、編集者の僕があがってきた原稿を読んで「このライターさんは上手だな」と思うのは、読んでいて引っかからない文章を書く人です。

「……どういうこと?」「結局、何が言いたいの?」と読みながら感じてしまうのは、読んでいて引っかかる文章。すっと読めて、「なるほどねー」とすぐに感想が口をついて出るのは、読んでいて引っかからない文章。

プロなら当たり前と思うかもしれませんが、読んでいて引っかからない文章を書くことには意外とエネルギーが必要なのです。

では、リズミカルで引っかからない文章を書くために、プロと呼ばれる人たちは、具体的にどのような工夫をしているのでしょうか。

文章のプロが、リズミカルで引っかからない文章を書く時にこだわっているのは次の3つのことです。

1. 「句読点の打ち方」にこだわる

1つめは「、」や「。」を適当に打たない、ということです。文章の書き方について教科書的なルールはいろいろありますが、プロがこだわっているのはただひとつ。

声に出して文章を読んだ時、呼吸をする場所に「、」「。」を打つ、ということです。たったこれだけの簡単なことですが、「、」「。」の打ち方にこだわるだけで、格段にリズムよく読める文章に変わります。

2. 「漢字とひらがなの使い方」にこだわる

これは、リズム以前に見た目の問題もあります。

漢字が多すぎる文章は、画面や誌面が黒っぽくなり、堅苦しい雰囲気になります。ひらがなやカタカナが多すぎる文章は、画面や誌面がやわらかい印象になる反面、幼いムードが漂います。

プロは、読み手にとってベストなバランスを意識しながら、「どこを漢字にして、どこをひらがなにするか」全体のバランスを計算して文章を書いているのです。

3. 「書いた後の響き方」にこだわる

プロは必ずといっていいほど、声に出して書いた文章を読んでいます。

自分で書いた文章がリズミカルに読めるかどうかを試し、スラスラ読めない引っかかりのある文章であることがわかった場合、ためらいなく書き直しをします。

「一文が長すぎるから2つに分けよう」「説明ばかり続くと退屈だから、会話文を挟もう」「専門用語が多すぎてうるさいから削ろう」といったことが客観的に見えてくるのも、耳で文章を聞いてわかることです。

1. 「句読点の打ち方」にこだわる
2. 「漢字とひらがなの使い方」にこだわる
3. 「書いた後の響き方」にこだわる

これが、リズミカルな文章を書くためにプロがこだわっている3つのテクニックです。早速、試してください。

いいなと思ったら応援しよう!