名経営者たちの「座右の書」に学ぶ“著者の強み”の引き出し方 #5
こんにちは、アンノーンブックス編集部です。
来年発売予定のUNKNOWNBOOKSレーベルからの新刊は、レゲエ・ユニット「MEGARYU」のボーカリスト、RYUREXさんの本だ。
RYUさんの本がつくられていくまでの過程を綴っていくなかで、今回は僕ら編集者の本づくりへの思いと、著者の強みの引き出し方についてお伝えしていこうと思う。
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「一冊ですべてを語り尽くすことなんてできないけれど、今は人生のターニングポイント。このタイミングでひと区切りつけるのもいいなと思って、今の自分が考えていることを本にまとめておきたいと考えたんだ」
これはRYUさんが僕らに語った、本を出版する理由について。RYUさんに限らず、著者になる人には強いミッションと熱いパッションが備わっているものだ。
もちろん、それはとても大事な条件でもある。まず著者に「伝えたいこと」や「伝えたいという気持ち」がなければ、多くの人の手に取ってもらえる本にはなり得ないからだ。
ただ、それだけでは足りないのも事実。著者のさまざまな経験や考えていることをただ羅列していくのではなく、編集者が「編んで集める、集めて編む」作業をしてはじめて、意味のある本になる。
アンノーンブックス代表の安達は、意味のある本の役割について「本を読んだ人のなかで何かが変わること」だと話すことがある。本を読むことで新たな行動を起こしたり、考え方の引き出しが増えたりすることこそ、本の存在の意味があるという。
「メリット」より「意味」を求める今という時代には、僕らも意味を持つ本づくりをする必要がある。RYUさんの本も、そんなふうに意味のある本にしたいと考えている。
よく、「編集者は“いいとこ探し”がうまい」と言われるのも本当だと思う。相手がヒトであれモノであれ、どんなテーマで切り取ったら意味のあるものになるか、どの角度からアプローチしたらいちばん面白くなるか、対象となる相手の輝いているポイントを探すクセがついている。
取材中もあらゆる方向から光を当てるような質問をぶつけながら、「こっちのほうがいいな」「あっちもイケるかも」などと、相手の強みとなる部分の可能性を探っているのだ。
著者にはそれぞれ強みとなる部分があるものだが、より説得力のある強みを見出したい時のヒントになる考え方がある。
それは、多くの名経営者が座右の書としてあげ、ビジネス系の雑誌や書籍に携わったことがある編集者なら誰もが読んでいるであろう『ビジョナリーカンパニー2』に書かれている「3つの円」の法則だ。
それによると、偉大な実績に飛躍できるかどうかは、3つの円の重なりが必要になるという。3つの円とは、「自分が世界一になれる部分」「経済的原動力になるもの」「情熱をもって取り組めるもの」だ。
1. 自社が世界一になれる部分はどこか
この基準は、中核的能力(コア・コンピタンス)がどこにあるかよりもはるかに厳しい。中核的能力があっても、その部分で世界一になれるとは限らない。逆に、世界一になれる部分は、その時点で従事していない事業かもしれない。
2. 経済的原動力になるのは何か
飛躍した企業はいずれも、鋭い分析によって、キャッシュフローと利益を継続的に大量に生み出すもっとも効率的な方法を見抜いている。具体的には、財務実績に最大の影響を与える分母をたったひとつ選んで、「X当たり利益」という形で目標を設定している。
3. 情熱をもって取り組めるのは何か
偉大な企業は、情熱をかきたてられる事業に焦点を絞っている。どうすれば熱意を刺激できるかではなく、どのような事業になら情熱をもっているかを見つけ出すことがカギになっている。
仕事にあてはめて考えてみると次のようになる。
1. 自分が世界一になれる部分
持って生まれた能力にふさわしい仕事であり、その能力を活かして、おそらくは世界でも有数の力を発揮できるようになる。「自分はこの仕事をするために生まれてきたのだ」と思える。
2. 経済的原動力になるもの
その仕事で十分な報酬が得られる。「これをやってこんなにお金が入ってくるなんて、夢のようではないか」と思える。
3. 情熱をもって取り組めるもの
自分の仕事に情熱があり、仕事が好きでたまらず、仕事をやっている自体が楽しい。毎朝目が覚めて仕事に出かけるのが楽しく、自分の仕事に誇りを持っている。
もちろんこれは自分自身の仕事にもあてはめて考えることができるが、著者の強みを最大限に引き出したい時にも応用できる法則だ。「できること」「求められること」「好きなこと」といった具合に容易にアレンジした考え方もよく見かけるが、これも『ビジョナリーカンパニー2』の3つの円の法則が原点だろう。
3つの円の法則は、RYUさんの強みを明確にする際にも役立った。
1. エンタメの世界でトップを張れる力があること
2. 多くの人を集客できるビジネスセンスとノウハウを持っていること
3. 何より人を喜ばせるのが大好きなこと
著者として十分な魅力をたたえていることの証左だろう。