キャンメイクとあなたと私と
思い出した。
いや、ずっと覚えてはいた。
嫌われ者だった私に懐いたあなたのこと。
あなたは分かりやすく私のことを好いてくれた。
あなたとは唯一、2人で買い物にいったね。
話すことなんかなくて気まずい沈黙を埋めるように、
私は先輩ヅラしてあれもこれも話したね。
あの時のキャンメイク。今はもう廃盤になって売ってないよ。
あの時は知ったふりをしていた。
今はもうキャンメイクじゃ満足できないくらい、高いコスメを知ったよ。
今の私は、今のあなたを知らないけど、
今の私は、今のあなたにキャンメイクは勧めない。
でも、忘れられないキャンメイクトーキョー。
あの頃はメイクも東京も知らなかった私たち。
大人になったね。
嬉しいことだね。
でも、少し寂しいね。
記憶の引き出しにしまわれたあの日の思い出を、私は今でも丁寧に取りだして、あの日の一言一句思い出せそうなくらい、大事に大事にとってあるんだ。
知られたくない過去と未来。
それは互いにあるだろう。
夢は夢のままでいた方がずっと綺麗で、
現実なんて破壊しかないんだって、
私もあなたも気付いたんだ。
だから忘れた。
忘れて、それでまた、思い出した。
繋がらない縁は繋がらないままでいい。
これは究極の自己満足。
私にとって無数にある究極の中の、たった一つの出来事で、特別でもなんでもない。
だから大切にしないで放り投げる。
プチプラは大衆消費されてなんぼだから。
私はここに放り投げるよ。
忘れなかった証明と、些細な一日であったことの証明のために。
覚えてる?
私とあなたの唯一の交差点。キャンメイクトーキョー。
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