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短編小説「ラーメン屋」
カラスが鳴く頃に俺の仕事は始まる。
仕込みが命?バーロー、そんな手間なんかかけてられっか。俺は二日酔いで今にも吐きそうなんだよ。
それに俺には20年煮込み続けた秘伝のスープがついてるからな。
俺の名前は雲高たれお。この店のマスターだ。
俺の仕事はカップラーメンの解体から始まる。
麺を取り出してかやくや粉末やタレを捨てる。
ある程度麺を確保できたらあとは、客を待つだけだ。
いかにも幸の薄そうな女が入店してきた。こいつぁ、常連だ。
「醤油ラーメン一つ」
幸の薄そうな声で注文がくる。俺は無視してラーメンを作り出す。まずはカップラーメンの麺をお湯でほぐしてからどんぶりに入れる。
そして秘伝のスープを入れてお湯で薄める。
隠し味にうんちのかけらをいれたら完成だ。
なーに、うんちと言っても人糞じゃねぇ。
家で飼ってるイリオモテヤマネコのうんちだ。
こいつがまろやかなコクと深みのある味を出す。
「オマチ…」
俺は完成したラーメンを幸の薄い女に出してやる。
「ふーふぅ〜、ズルルジュポジュルルルジュポン!プスゥ〜ペチャ…ズルルジョポルルルルル!!!ピチャ…クチャ…モチャ…ジュポジュポズルルル!!!!!」
無言で必死にラーメンに喰らいつく幸の薄そうな女。お行儀もクソもない咀嚼音をたて、糞尿を垂れ流しながら夢中でラーメンを喰らう姿はほんの少しだけ幸せそうに見える。
女はものの数分で汁まで飲み干し完食した。
「6万6千6百円になります。」
女はきっちり金を払い店を出た。うちの常連はこのバカみたいに高いラーメンをすすりに来るのだ。なぜ、ここまで高い豚の餌級のラーメンが売れるのか?
それは俺が悪魔と契約して秘伝のスープに覚醒剤の666倍の快感と中毒性を付与してもらったからである。
20年前、俺はラーメン屋の見習いだった。当時働いていた店の大将に俺のスープを否定され続けた俺はついに悪魔崇拝者となって、悪魔と契約を結んだのだ。俺は寿命と引き換えに究極のスープを手に入れたのだ。そして大将は俺の究極スープを飲んだ瞬間脱糞し、完全敗北した。それでも尚、俺のスープを否定したかったのか大将は翌朝のれんにロープをかけて自殺していた。
そんな俺も今日で寿命が尽きる。悔いはない。
「究極のラーメン屋になった気分はどうだった?」
悪魔が嘲笑いながら迎えにきた。
「最高だったよ。客が漏らした糞尿を片付けることを除いてな。唯一の心残りはウチのイリオモテヤマネコだが、野良でもやっていけるだろう。」
俺は悪魔と共に地獄ののれんをくぐった。
ー完ー
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