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古着の終焉と新たな価値観

現代のファッションや文化に対して感じる違和感、それは「何のために身につけるのか」という問いが、単なる「見た目」重視へと変わりつつあることからくるんじゃないかなと思う。例えば、古着の楽しさって、その一着が持つ歴史やそのアイテムを作った人、所有した人の思い出などがぎゅっと詰まっているところにあると思う。昔は古着って、ただの「中古」ではなくて、「人が選んでくれた一着」だった。人と人が繋がる温かさ、そんな感覚がファッションの中にあったように思う。

どう見られるか?

でも最近では、古着も単なる「見た目」や「トレンド」の一部として扱われているように感じる。特にSNSが影響しているかもしれない。SNSの登場で、どの服を着れば「おしゃれ」か、どの音楽を聴いていれば「クール」に見えるかが、すごく簡単に分かるようになった。その結果、服も音楽も、本来の意味や個々のこだわりではなく、「どう見られるか」だけが重要視されてしまっているのかもしれない。

日本のファッションブランドとして有名なギャルソンだが特に哲学的なデザインに共鳴する人たちがたくさんいたけれど、今はそういった服に対する「深さ」を求める人が減ってきた印象。服はただの装飾であり、あまり深く考えなくてもいいという風潮が広がっているように感じる。つまり、服だけでなく、音楽やその他の文化も「どう見えるか」ばかりが意識されている。

その影響が強く現れるのがアパレル業界かもしれない。人や人間性を大事にするというよりも、誰が売るか、どんなスタイルで見せるかが重要視されている。もちろん、服を売る仕事だから見た目やデザインは大事だがアパレルの民度が低く感じられる瞬間って、本当にガッカリするもの。人と人のつながりや信頼関係が大事にされないところ、そこには何か温かみが足りない気がしてならない。

よく見られたい。

それに言葉よりも行動がその人の意思を示すものだと思う。ファッションやアートにしても言葉で自分を飾るよりも、どう行動しているかでその人がどういった考え方を持っているのかがよく分かる。でも最近では、その行動が「よく見られたい」だけのために行われていることが多い。評価されたいとか、称賛されたいという思いが先行していることがちょっと寂しく感じられることもある。SNSによって「誰かと比べられる」という仕組みが当たり前になってしまったのも大きな要因だろう。そういった「見せるための行動」や「人に評価されたい」という気持ちがどこか心を窮屈にしているのかもしれない。

だからこそ、思い切って「人を比べる」ことや、「他人にどう見られるか」という考えを捨ててみるのもいいかもしれない。近年はむしろクローズドな関係や小規模な商売が成功している傾向もあるみたい。アパレル業界でも狭いコミュニティの中で信頼関係を築き、大切に商売を続けているブランドやお店が増えている。そういった場所では純粋にその服やアイテムが好きな人たちが集まり、お互いに信頼し合うことで、良い循環が生まれている。

このように、誰かと自分を比べたり、競ったりすることをやめて、自分自身が何を大事にしているかを考えてみるのも良いと思う。どんなに才能があっても、他人と比べてしまうと自分の価値が見えにくくなる。自分を見失わないためにも、他人と比べない生き方を意識することが大事だと思う。

最後に、少し文学的な話ですが三島由紀夫の言葉を引用すると、「人間は何かのために生きる」もの。自分のためだけに生きるっていうのは簡単そうに見えて、実はとても難しい。人は何か理想や大義のために生きるからこそ、より充実した人生が送れる。もちろん、日々の生活の中で大それた理想なんて持てないかもしれないけれど、たとえ小さなものであっても「自分が大事にしていること」を見つけて、そのために生きることはとても大切だと思う。

結局、人は「自分のため」だけでなく、他人との関係や、何かの目的のために生きているからこそ、人生に意味があると思う。他人と比べず、自分の理想や大事にしたいものを見つけていく。そうすることで、もっと自由で楽しい毎日が送れるんじゃないだろうか。

ファッションも文化も、その一部としての生き方も、結局は「自分の信念を大事にすること」。それが今求められている時代になってきているのかもしれない。

Noteにて書かせて頂いた題材を中心に
Spotify for Podcastersにてお話させて頂いております。

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神奈川・三浦海岸に位置するビンテージ・セレクトショップ「UNKNOWN」の
オーナーによるラジオ番組。

古着と言う知識だけではなく
ファッション・音楽・アートなどに通ずる世界カルチャーを中心に
流行りや時代の進化を音源や思想を通しながらお話ししています。

音楽はオーナー自身が発掘した
世界のカセットテープ音源・レコードを中心に流させて頂いております。

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