YANTOR:伝統を纏う、現代を生きる
ファッションの中にはただ身にまとうだけでなく、その奥にある思想や背景に心を動かされるものがある。2008年に坂倉弘祐さんと吉田賢介さんが立ち上げた日本のユニセックスブランドもまさにそういった特別な存在。このブランドは服そのものだけでなく、「着ること」や「布と身体の関係性」について改めて考えさせてくれるような独自の魅力を持っている。
コンセプトは「SITUATIONS」。一見抽象的に聞こえるがこれは日常の中で生まれるさまざまな「状況」や「場面」を意識したデザインを提案するという意味。たとえば布が身体に寄り添い、自然にできるシワや余白、身体に動きが生まれた瞬間の美しさ――そういった偶発的な表情を服作りに取り入れている。そのため、デザイン自体はとてもシンプルに見えるが実際に着てみるとそこに独特の奥深さや意外性が感じられる。
また、彼らのアプローチには民族衣装や宗教服からの影響も色濃く見られる。それらの衣服に宿る伝統的な意味や文化的背景を現代の服作りに取り込むことでデザインに物語性や思想的な深みを持たせている。ただし、それは過去のスタイルをそのまま模倣するのではなく、現代的な再解釈を加えることで新しい価値観を生み出している。
さらに、このブランドが目指しているのは性別を問わないユニセックスなスタイル。どんな人にもどんなシチュエーションにも自然に馴染む柔軟性を持ちながら、しっかりと個性が光るデザインが特徴。性別に縛られず、自分自身のスタイルを自由に楽しむことができる――その可能性を感じさせてくれるのもこのブランドの大きな魅力。
「布を纏う」というごくシンプルな行為に新しい意味を与えてくれるこのブランド。その服を手にしたとき、きっとあなたも「ただの服」ではない何かを感じられるはず。
ここから先は
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?