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大学授業一歩前(第86講)

はじめに

今回は「科学哲学たん」様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。👇のnoteも是非ご一読下さいませ。また、「質問箱」もやってらっしゃいます。

https://note.com/s_narkissos/

プロフィール

Q:ご自身のプロフィールを教えて下さい。

A:『科学哲学たん』という名前で2018年12月からTwitterで“学術たん”をやっています。(学術たんというのは学問の擬人化のようなものです。)
中の人は現役の理学部生で、理論寄りの物理学を中心に学んでいます。
中高生の頃から哲学や科学史が大好きで、大学に入ってからは専攻の物理学と絡めて科学哲学を独学するようになり、現在に至ります。Twitterの他には質問箱やnoteを使って、フォロワーからの質問に答えたり、学問に纏わる文章を書いたりもしています。

オススメの過ごし方

Q:大学生にオススメの過ごし方を教えて下さい。

A:多種多様な人間とたくさん話すことです。特に重要なのは、“嫌いな相手とも話すこと”、“ある程度不愉快でも話すこと”、“自分とレベルの釣り合わない人間(上か下かは関係ない)の話も聞くこと”です。もっと遠慮なく言うと、物分かりの悪い、自分より頭が悪いように見える人間ともたくさん会話してください。これによって見えてくるのは、自分と他人がどれだけ思考の前提、背景、目的、アルゴリズムが異なるか、というものです。話が噛み合わないことを、人格や知性の問題として片付けてしまわず、自己と他者の共通点と相異点を徹底的に考察してみてください。多様な人間と会話をするというのは、読書と同じだけの価値、そして異なる価値があります。誰かのために書かれた言葉ではなく、あなたのために語られる言葉というのは、あたなにとって主観的に価値が高いはずです。あなたを意識した生きた人間の言葉は、普遍化された言葉よりも人格に深く染み込みます。また、自分なりの哲学(意見・思想・価値観)を持つことは大事ですが、アウトプットすることでそれはさらに磨き上げられます。(人に語ることで全体が整理され、質問を受けることで弱点やバイアスに気付くことができる。)

必須の能力

Q:大学生に必須の能力をを教えて下さい。

A:誰にでも対等に意見が言える能力です。(アカデミアでは特に最重要事項です)。「嫌われてしまうかも?」や「私の勘違いかも?」と思って、自分の意見を言えなくなってしまうのは単に勿体無いばかりではなく、損を被ってしまうことすらあります。偉い先生でも間違いますし、素人でも核心的なことが言える場合もあります。色眼鏡を外して、全ての人間を対等に据える能力は、大学でも今後の日本社会でも必須であると思います。また、それは同時に、意見をすぐに修正する(誤りを認める)能力も求められます。対等に物を言うことへの対価とも言えるかもしれません。

学ぶ意義

Q:ご自身とっての学ぶ意義を教えて下さい。

A:この項目のためにひと月ほど考えましたが、どうにもまとまったことが書けませんでした。私は一学生なりに、学問を心から愛しているつもりですが、未だにこの答えはわかりません。ただ一つわかったことは、私にとっては意義や価値を考えるまでもなく、学問が人生の一部になっていたということです。社会の役に立つとか、他者から評価を受けるとか、そういったことを無視したとしても、学ばずにはいられないほどの、有り余る意義があるのが、学問なんだと思います。

オススメの一冊

Q:オススメの一冊を教えて下さい。

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A:森博嗣(2011)『科学的とはどういう意味か』幻冬舎新書です。こちらは科学哲学とはやや異なる視点ながら、文系と理系の対立などの身近でわかりやすいリアルな話題から「科学とは何か」という科学哲学と共通の疑問に挑むものです。科学哲学は哲学の一分野であり、哲学というだけでハードルが高く感じてしまう人も多いかと思いますが、こちらの本を先駆けとして、自分なりに「科学」について考えるきっかけとしていただければ幸いです。「科学」についてより深く考えたくなった方は是非、科学哲学の本も手に取ってみてください。

メッセージ

Q:学生に向けてのメッセージをお願いします。

A:大学という高等教育機関で学問を修めた皆さんには、“正しいことを言える人間”になってほしいです。残念なことに世間や社会は間違ったことばかりで、更にはそれを諦観し、間違った側に合わせることを強いられる場面が非常に多くあります。自分だけが正しいことを言うのは勇気が要りますし、時には苦しむこともあるでしょう。正しい行いは強い者や賢い者にしかできません。(しかし、自分を守るために社会に迎合する生き方も否定することはできません。本当に大事なのは本人の幸福ですから。)ただ、私は、なるべくは正しいことを言える人間が増えてほしいと願っているので、強さや賢さを備えた余裕のある人間には、それを実践してほしいと思っています。言い換えれば、正しい言動をすることのできる“余裕のある人間”になってほしいです。

おわりに

今回は科学哲学たん様に記事を寄稿して頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。学ぶ意義についての質問に一か月も考えて下さったとは、設問を作った者として申し訳ないです。私もこの問題への答えは出ておらず、日々学ぶ意義は考え続ける必要があると痛感改めて痛感しました。次回もお楽しみに!!

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