大学授業一歩前(第40講)
今回はSatoruYamamoto先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中の作成して頂きありがとうございました。そして、今回で記念すべき第40講になりました!!二万人近い方に「大学授業一歩前」を読んで頂いており、皆さま読んで頂きありがとうございます!!それでは今回の講義の開講です!!
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えてください。
A:都内の予備校で生物を教えています。前職は理科の教材をつくる編集者でした。学生時代は農学を専攻しておりまして,そこで生物多様性保全に関するシンポジウムに参加した際,「そこにいる生き物をどうやって守っていこうかという議論があるということを,これから選挙権をもつような若い人々にも知ってもらいたい」という参加者の一言にビビッときて,理科教育の場に身を置くことを決めて今に至ります。
オススメの過ごし方
Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。
A:博物館に行きましょう。この「博物館」とは,科学館や動物園,植物園や水族館のみならず,歴史民族資料館や美術館など,何でも含みます。とにかく色んなものを見て,「すごい!」「美しい…」「何だコレ?」と思うものを,たくさん蓄えてください。 これから皆さんは,自然科学・人文社会科学の手法を用いて,そこに展示してあるものを解き明かしていく営みの中に足を踏み入れるかもしれません。また,レポートやプレゼン,制作課題など,何かを作って人に見せる機会が増えるかもしれません。あるいは,自身の所属する学部学科とはまったく異なる分野を学んでいる人と出会うかもしれません。そのとき,そもそもこの地球上に何があるのかを知っておくこと,多くの人が美しいと思うものを見ておくこと,他の人が学んでいるモノ・コトをその名前だけでも聞いておくことが,必ず役に立ちます。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力を教えてください。
A:大学というものを利用し尽くしてやろうという,能動的な姿勢です。大学というものは,講義室があって,そこに教える人間がいるだけの施設ではありません。図書館は必ずありますし,大学によっては先に述べた博物館を附属施設としてもっているところもあるでしょう。講義で見聞きした資料の出典を,先生にメールで尋ねてみるのもいいですね(私は,先日の講義で流してくれた細胞の映像をもう一度観たいと言ったら,データを送ってくださったことがあります)。求めよ,さらば与えられん―年次が上がるごとに,求める者とそうでない者の差は,それはもう残酷なほど顕著になるものです。
学ぶ意義
Q:先生にとっての学ぶ意義とは何か教えてください。
A: 世界の解像度を上げることです。私は植物の生態や進化を扱う研究室に所属していましたが,植物の名前を知れば知るほど,それまでは一面緑色にしか見えていなかった草むらにあって,その草花の1本1本に名札のついてく感覚を味わいました。あれはもう,快感です。 物事を知る前の状態というのは,見える世界にモザイクがかかっているようなものです。しかし残念なことに,私達はモザイクを晴らしてからでないと,それまで見ていた世界にモザイクがかかっていたことに気づきません。少しずつ世界の解像度を上げていき,そしてふと振り返ったときに,自分がいかに何も見えていなかったかを知るという経験を,これからどんどん積んでいただければ嬉しく思います。
オススメの一冊
Q:オススメの一冊を教えてください。
A:『科学技術をよく考える-クリティカルシンキング練習帳』(名古屋大学出版会:https://unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0728-3.html)です。新型コロナウイルス感染症対策しかり,福島第一原子力発電所事故しかり,科学技術をめぐる議論には,ステークホルダーとしての市民の参画が,これからますます重んじられてくることと思います。そのとき,その時の科学で明らかになっていることを大切にしつつ,まだ明らかでないことについてどう考えるのがよいのか―文字通り,その指針となる一冊です。文理を問わず,もはや科学技術とは切っても来れない生活を営む者として,必携とも言えるでしょう。
メッセージ
Q:学生へのメッセージをお願いします。
A:もし今,宝くじが当たったら,今年度担当している生徒を送り出し次第,私はもう一度大学に入ります。それくらい,皆さんが大学でできることは,とてつもなく多彩で,涎が出るほど魅力的です。ただし,それは先程も書いた通り,皆さんが能動的に何かを求める限りにおいて実現されるものです。ぜひ,色んなことに挑戦し,色んなことを吸収し,色んなことを夢見てください。応援しています。
おわりに
大学というものを利用し尽くしてやろうという,能動的な姿勢です。
大学は学ぶも自由、学ばないも自由という高い自由を各人が持てる空間です。その時にどのように動くか、それが大学で学ぶ際の大きな鍵になるはずです。次回もお楽しみに!!