大学授業一歩前(第62講)
はじめに
今回は英語講師の松井孝志先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。それでは第62講の開講です。
プロフィール
Q:ご自身のプロフィールを教えてください。
A:松井 孝志 (まつい たかし)
北海道帯広市出身。東京外国語大学卒業後、公立・私立高校教諭などを経て、現在はフリーランスの英語講師。ライティング指導・評価を専門としている。主な著書に『パラグラフ・ライティング指導入門』(共著、2008年、大修館書店)、『学習英文法を見直したい』(共著、2012年、研究社) など。日本スポーツ協会「ボートコーチ4」の資格を持ち、東京外国語大学、山口県のチームでコーチとして競技力向上に尽力。プライベートではフィギュアスケートをこよなく愛する。
オススメの過ごし方
Q:大学生にオススメの過ごし方を教えてください。
A:私の学生時代は、ボート部(端艇部)で4年間を過ごし、主将もしていたので、ボートコースと合宿所にいた時間の方が長いくらいでした。卒業後、高校教師をしながら母校のコーチをしていた期間も長く、学生の資質で変わっていくもの、変わらないものを目にしてきたように思いますが、自分が選んだものを追求することに惜しみなく時間を費やして欲しいというのは、私の変わらない思いです。裏返せば、自分にコントロールできる「時間」をとことん突き詰めることでもあると思います。
必須の能力
Q:大学生に必須の能力をどのようなものだとお考えになるでしょうか。
A:「ことば」を信頼し、自らの言語スキルを育て、磨き、鍛えるとともに、「ことば」に対する畏れを持つこと。
「自分が言いたかったけれど言えなかったことば」と出会うべく、対話し、書を読み、思考・思索すること。
「比喩」や「要約」で分かったつもりにならずに、「置き換えられない」「紋切り型ではない」ことばと向き合うこと。
学ぶ意義
Q:先生にとっての学ぶ意義を教えてください。
A:小島信夫・保坂和志の 『小説修行』 の中に、こんな一節があります。
新しい世界観や人間観はいつの時代にも現れる。私が年をとったときに若い人が私に向かって、私が小島先生に言ったようなことを言ってきたとしたら、私も小島先生と同じ返事をするだろう。そしてもしそのときに「残念だ」と思われたとしたら、「残念だ」と思われることがすでにじゅうぶんに価値のある何ものかなのだ。
(保坂和志→小島信夫、p. 171)
今では「教える」側に身を置くことが多い私ですが、私にとっての「学び」の醍醐味は、自分の師に対して「残念だ」と言うところにあったし、自分の弟子に当る人たちから「残念だ」と言われることにあるでしょう。
オススメの一冊
Q:大学生にオススメの一冊を教えてください
A:「有名」な作家ではないし、龜鳴屋 から522冊の限定出版なので、手に取ることが難しいとは思いますが、
安久昭男 (あんきゅう あきお) 小説集
『悲しいことなどないけれど さもしいことなら どっこいあるさ』です。
この表題作は、1985年 (私は大学3年生でした) に「早稲田文学」の第一回新人賞をとった作品で、そのときからの愛読作です。発行者の勝井隆則様より、こんなありがたいことばをかけていただき、感激したのを覚えています。大切に読んできてよかった、と思えた瞬間です。
恐らく、この国で安久作品の最良の読者である松井さんのお手元に、ようやく『悲しいことなど…』をお届けできることとなり、こんなうれしいことはありません。
龜鳴屋 勝井隆則
メッセージ
Q:大学生へのメッセージをお願いします。
A:私の座右の銘でもあるのですが、「群れるな、連なれ」。
おわりに
今回は英語講師の松井先生に記事を書いて頂きました。お忙しい中作成して頂きありがとうございました。言葉の持つ強さを私自身もこのnoteの編集者と毎日感じています。言葉には真摯に向き合い、人が嫌な思いをすることの無い使い方とは何かを考えていきます。次回もお楽しみに!!