ゆうれい
知らない天井だ…
アニメのような文言が、本当に出るとは思わなかった。
ここは…病室だろうか。
右を向くと、知らない花が咲いていた。その花は薄ピンク色で木を着飾るように咲いている。
あ、そうだ。
『桜か。』
なんでここにいるのだろう。何も思い出せない。とにかく何かに恐怖して、落ちるような感覚と、冷たさだけが体に染み付いている。
得体の知れない恐怖心か…そうだ、ゆうれいの仕業かもしれない。
落ちるような感覚…崖から落ちた、とかだろうか。
冷たさ…落ちた先が川だったとかかな?
それならゆうれいに驚かされて崖から落ち、川に流されたということだ。うん、説明がつく。
馬鹿馬鹿しい考えと思われるだろうか。ゆうれいなんていないと思われるだろうか。
でも、そうとしか言えないのだ。だってそれを覚えてないのだから。
ゆうれいはどこにでも存在するし、簡単にそこに現れる。
夜、鏡の前に立った後、振り返って再度見た時にゆうれいは居た。
ゆうれいは不思議そうな顔をしていたと思う。その時私に何か感情が動かされたと思う。きっと恐怖心だ。
夜、手を叩いた時にゆうれいは居た。
ゆうれいは楽しそうな顔をしていたと思う。軽快な音楽と光から、きっと私を連れ去るに違いない。
夜、口笛を吹いた時にゆうれいは居た。
ゆうれいはとても怖い顔をしていたと思う。
しまった、と思った。呼び寄せてしまった、と思った。罰が下ると思った。
だから、ゆうれいは居るに違いない。
もしかしたら私は、ゆうれいに育てられたのかもしれない。きっとそうだ。
病室のドアが開いた。
白衣の女性が驚いた顔で私を見る。
どうしてだろう。
白衣の女性は何かを呼んでいる。
そして数分後、誰かが駆け寄って来た。
「よかった…。ずっと目を覚まさないかと思った…。信じていてよかった…。よかった…。よかった…。」
抱き締めてくる体は温かい。涙を流している。安心感を覚える。私にも涙が浮かんでいる。
でも、ひとつ聞かなくてはいけない。
『誰…ですか?』
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