「誰でもARコンテンツを作れるように伴走していく」AR Fukuoka@福岡【メンバー募集!全国Unityコミュニティ名鑑】
こんにちは、Unity Japanのコミュニティ・アドボケイトの田村幸一です。私は普段、Unityを広く世の中に伝える、広報的な役回りをしています。
2月からスタートした連載『メンバー募集!全国Unityコミュニティ名鑑』では、全国各地で活動する有志によるUnityユーザーのコミュニティを紹介しています。
ここ数年の新型コロナウイルス感染症の影響で、ユーザーが集まるオフラインイベントやコミュニティ間の交流が減ってしまいました。そんな中でも、新しくUnityを始める人にとって、学びを後押しするようなコミュニティと出会えるようにしたい、というのが連載の目的です。
今回は、福岡を拠点にARコンテンツのハンズオン勉強会やLT会、もくもく会を開催している「AR Fukuoka」のコミュニティオーナー、吉永崇さんにお話を伺いました!
初心者でもARコンテンツ制作を楽しめるコミュニティ
──はじめに、AR Fukuokaの設立経緯を教えてください。
「ARは面白そうだけど、開発のハードルが高そう」という友人の言葉がきっかけで、勉強会を始めました。最初は知人を数人呼んで、ハードルを下げるためにも手軽に開発できるツールを使いました。そうすると、初心者でもARコンテンツが作れることがわかり、一般の参加者も募集して勉強会を開催するようになったのがAR Fukuokaの始まりです。
2013年に初めて勉強会を開催したときの様子
──何人が所属し、どういった活動をしていますか?
明確に「AR Fukuokaに所属している」という決まりはありませんが、イベント集客のためのIT勉強会支援プラットフォーム「connpass」の登録者は900人ほどいます。
AR Fukuokaのイベントは不定期です。共有したい情報が見つかったタイミングで行われ、最近は月2回程度で開催しています。初めての勉強会から数えると、イベントや勉強会は200回を超えました。
ウェブサイト「ARコンテンツ作成勉強会」では、過去に開催した勉強会やイベントの様子を掲載している
勉強会は、参加者が手を動かしながら開発手順を学ぶハンズオン形式で実施しています。制作するコンテンツを決めて、形にしていくための手順を解説します。大半の勉強会は私が講師を務めますが、他のメンバーが講師を担当することもあります。その際には、プレゼン資料の作成などサポートをしています。
勉強会以外にも、最新デバイスの体験会や短い時間で技術や知識をプレゼンするLT(ライトニングトーク)会を開催しています。また、制作したコンテンツを体験してもらえる展示会に出展しています。最近では、気になった技術を昼休みに紹介する「LunchTimeXR」や、他のコミュニティとの情報交換を目的とした「xTechゆるっとLT会」も行っています。
また、私が住んでいる福岡だけでなく、九州の各地域や広島、山口、さらには北海道にあるコミュニティや友人と協力しながら、現地での勉強会を運営してきました。
xTechゆるっとLT会 エンジニアカフェMaker's and AR Fukuoka」開催時の様子
「黙らないもくもく会」でオフラインのような学びを
──新型コロナウイルス感染症の影響で交流が難しいなか、コミュニティを活性化のために工夫していることはありますか?
新型コロナウイルスが流行し始めた頃は、予定していたオフラインのハンズオン形式の勉強会を全て中止にしました。参加者の進捗を見ながら制作をサポートすることに力を入れていたため、活動にも大きな影響がありました。
また同じタイミングで、オンラインでできることを模索しました。まずは、技術をある程度絞ってもくもく会を開催してみました。たとえば、画像・動画の処理機能をまとめたオープンソースライブラリ「OpenCV」や、Webサイト上に3Dのコンテンツを表示するライブラリ「Three.js」のもくもく会です。でも、OpenCVやThree.jsは、初心者がどこから勉強したらいいかわからないことも多いので、範囲を絞って私が解説をする「主催者は黙らないもくもく会」を実施しました。さまざまな形式のもくもく会を開催しながら、オンラインでどう学び合っていくかを試行錯誤しましたね。
ある程度オンラインでのもくもく会や勉強会に慣れたタイミングで、専用アプリを必要とせずに、Webサイト上で動作する「WebAR」のオンラインハンズオン勉強会を実施しました。WebARから始めた理由は、開発ツールのインストールが不要なため、セットアップのトラブルをなくすことができるからです。
そして2020年6月には、UnityとMRTK(※)を使った「HoloLensアプリ」の勉強会もハンズオン形式で開催することができました。
※:MRTK:仕様が異なる機械やOS上で、同じようにプログラムを動かすことができるクロスプラットフォーム上でMRアプリ開発を支援する機能
現在は、新型コロナウイルス流行前と同じ頻度や内容の勉強会をオンラインで開催できるようになりました。ただ、ハンズオン勉強会中のトラブル対処は、オフライン時と比べて難しいです。なので、ハンズオンの各工程で完成品を用意し、トラブルがあったときに参加者がそれをインストールできるようにしています。
また、Zoomやチャットで進捗を報告をしてもらうようにも工夫しています。
──新型コロナウイルス感染症の影響でコミュニティにどのような影響がありましたか?
新型コロナウイルスの影響はネガティブな要素もありましたが、活動の幅を広げるきっかけにもなりました。
まず、オンラインでの運営が前提になったため、会場の確保が不要になり、気軽にオンライン上で集まれるようになりました。そのおかげで、福岡以外のコミュニティと交流する機会や、気になった技術を気軽に紹介する会など、今までAR Fukuokaではやってこなかったスタイルのイベントを開催できました。
また、まん延の状況が少し落ち着いた時期には、オンラインとオフラインのハイブリッド形式のハンズオン勉強会を実施できました。札幌でVR・AR・MR・SRを学ぶコミュニティ「DoMCN」と連携した、複数拠点でのハンズオン勉強会です。
このように制約がある中でも、新しい勉強会やイベントを模索できています。
作って、動いて、実感することで、学びを深めていく
──AR Fukuokaの特徴を教えてください。
ただ「知る」だけはなく、手を動かして「作る」「実感する」ことを大切にしているのが特徴です。また、初心者でも体験できるように、大規模イベントを開催するのではなく、少人数で丁寧に進めています。
──AR Fukuokaを運営していて、「よかったな」と思う出来事を教えてください。
参加者が制作したものが動いて、「おおっ!」と声が上がったときがとても嬉しいです。
また、イベントに参加した人たちが学んだことを活かして仕事で成果を上げたり、勉強会の学びを応用して独自のコンテンツを制作したり、ARコンテンツ作品を見たときにどう実現させるかを考える人が増えたりしたのは、とてもよかったなと考えています。
私自身も勉強会での出会いをきっかけに共同研究を進めたり、各地に友人ができて嬉しいですね。
──吉永さんにとって、AR Fukuokaはどのような存在ですか?
職場や学校、家庭とは異なる第3の場だと考えています。コミュニティメンバーとのゆるいつながりの中で、刺激を受けたり新しい知識を得たりできる場です。
──活発なコミュニティを育むために、大切にしていることを教えてください。
まずは、主催者が楽しむことが大切です。コミュニティの継続を目的にしてしまうと、主催者が辛くなることがあるなと感じます。「コミュニティ運営がうまくいかなかったらやめてもいい」くらいの感覚で、気軽に運営するのが良いと考えています。
──今後、どのような人たちに参加してもらいたいですか?
ARやVRで何かを制作したい人であれば、開発者でなくても歓迎します。
──今後の活動予定やイベント情報などを教えてください。
面白い情報があり次第、イベントを企画していきます。WebサイトやConnpass上のイベントで、興味があったけれど参加できなかったものがあれば気軽にリクエストください。再度開催しようと思います。
直近では、サングラスのようにいつでもどこでも手軽に使えるARグラス「Nreal Light/Air」対応のARコンテンツ開発のハンズオン勉強会を予定しています。興味がある方は、ぜひ参加してみてください。
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