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往復書簡/N→S/2022年6月8日

巻尺様

ちょうど1ヶ月、間が空いてしまった往復書簡。時間は刻々と過ぎていき、浮いては沈んで、沈んでは浮いてを繰り返しております。そちらはお元気でしょうか?
私の開業記「インポータントタイム〜本屋ウニとスカッシュ開業記〜」もその間に発売して、この文章を書いている6月8日時点では既に完売しております。
正直内容的に、読んでもらって大丈夫だろうかという不安要素がありましたが、読まれた皆さんの感想が、温かい。
そして、昨日公開された劇団スカッシュさんの動画内でも開業本の事が紹介され、もう、、感無量です。

↓画像をクリックして動画をご覧ください↓

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さて、お互いにZINEを発売し、そろそろ往復書簡でも次の動きをという事で、1ヶ月の空白期間は新しい試みであるお題に対しての創作に悩んでいました。
そのお題とは、

「梅雨」・「紫」・「長崎」

"紫陽花"を書けと言ってるようなものだったので、そうはいくかと考えに考え、綺麗なストーリー案が出来上がったものの、話として組み立てる才能がありませんでした。
困ったあげく、前から考えていた話を今回のお題に利用してみる事に。
結果的に、考えていたという話の部分は全カット(想像にお任せ)して、そこから続く話を書いてみましたが...どうでしょう?

「願い事ひとつだけ」

パンッパンッ…

「随分と熱心にお祈りされていますよね。」
社務所の窓口から拝殿で参拝する少し背中の曲がった青年の後ろ姿を眺めていたら、境内の掃き掃除をしていた宮司の妻が近くまで来て囁いた。
「週に二、三回はああやって拝殿の前で長い祈りを捧げているんだよ。よっぽど成就したい事でもあるんだろうと気にはなっていたんだが。」
夫婦が小声で話している内に参拝を終えた青年は、帰る道すがら社務所に向かって会釈をし、二人も揃って頭を下げて見送った。
「どんな願いか分かりませんが、神様に通じているといいですね。」
「神様は平等だ。きっと真摯に聞いてくださっているだろう。」

境内を出ると長い階段があり、下る途中にはかつて異文化交流が盛んだったこの街の古い街道と交わる場所がある。現代にも名を残す偉大な人物達が通ったとされる街道を左手に進み、突き当たりをほぼ直角に右に曲がったら、今度は傾斜が緩やかな階段となって車の往来が激しい大通りへと合流する。
階段を下りた所には、つい先日までは蕾だった紫陽花が花を咲かせていた。神秘的な花色に惹かれるように無心で見つめていると、水滴が頬を伝わるのを感じた。指先で拭っても一滴、また一滴…それは、天から落ちる雫だった。

大通りを歩いていた人達は突然の雨に慌てて駆け出し、紫陽花の横で天を仰ぐ青年と、彼が呟いた言葉に気付いた者は誰もいない。

「泣けば済むと思ってるのか。」

季節は6月。この日、梅雨入りが発表された。
天に住まう者の雨雫のように降り続いた雨は、翌月になっても降り止む事はなかった。

......これが限界でした。結局紫陽花使ってます。
カットした部分のせいで意味が分かるかな?というところが、人に伝える文章を書く難しさだと思いました。開業記でも感じましたが、自分の頭の中では話が全て繋がっているので、つい省略してしまいます。
とりあえず初めての創作なので出来栄えは置いておくとして、次は巻尺さんの番です。

お題は、「海」「太陽」「風鈴」でお願いします。
あと、これはやってみて思ったのですが、三つ全て使うのは難しいので最低一つでも可という事にしましょう!

ひと月後を期待しております。

ウニスカ

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