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『アクセンチュア1強』の時代に、なぜ今、独立系コンサルティング会社を立ち上げるのか

こちらのnoteに興味を持って頂きありがとうございます。
小林大輝と申します。独立系経営コンサルティング会社であるUnitePartnersの代表取締役を務めています。

少し長くなりますが、私がこの会社を立ち上げるにあたっての想いについてお話させてください。


自己紹介

1993年三重県生まれ。実家は板金屋。東京に憧れて東京大学に進学し、卒業後は大手経営コンサルティング会社に就職しましたが、外交官になると思っていた親には泣かれました。しばらく働いた後に独立/ 起業して様々な事業の立ち上げに挑戦。今までに2度、事業売却まで行いました。

現在は、独立系経営コンサルティング会社のUnite Partnersを創業し、日本企業の本当の変革のパートナーになることを目指して、クライアントとともに変革の企画から完遂に至るまで一緒に汗を流し、日々働いています。

瀧本哲史さんとの出会いと死別

私が何を実現したいのかについて話す前にまず、この会社を立ち上げるきっかけになった恩師についてお話させてください。

瀧本哲史さんは、東京大学法学部助手になった後にマッキンゼーに入社し、退職後はPEファンドや京都大学客員教授を務めていた方です。エンジェル投資家として若い世代を育て、彼らを"アジテイト"することに注力していましたが、2019年8月に47歳という若さでこの世を去りました。

瀧本哲史さんには2度、私の人生を変えてもらいました。

1度目は出会いの時です。まだ田舎から東京に出たばかりで全てのことが新鮮で、キラキラして見えていたあの頃、私は大学にも行かずフラフラと遊び回っていました。それを見かねた高校の先輩が、当時のアルバイト先の投資家であった瀧本さんに引き合わせてくれたのが出会いでした。

上場している企業の分析を通じて、いかにこの企業がダメか、優れた企業は何が違うのかを熱っぽく、永遠と語り続けてくれる瀧本さんの話にすっかり魅了され、私も上場企業の分析を始めることになりました。

瀧本さんとのゼミの風景

そして瀧本さんとともに上場企業を分析するゼミを立ち上げ、本当の企業価値とはなにか?ということを大学時代はずっと研究していました。ただ、その時の私はビジネスって面白い!という好奇心に突き動かされていただけであり、社会を変えようだとか、仲間を増やそうだとかはあまり興味がなく、ひたすら自分の興味を満たすための毎日を過ごしていました。

2度目は死別の時です。実は、大手ファームから独立後は瀧本さんから誘われてタッグを組み、ある大手企業へのコンサルティングを一緒に行っていました。恩師に実力を認められたと、鼻高く働いていました。その活動も2年近くに差し掛かろうとしたところ、ある日突然瀧本さんに呼び出され、こう告げられました。

「君ならこの社会を変えられる。私と二人で仕事をして満足している場合ではない。でも君の能力だけでは無理だ。私の考えのもとではなく、自分でやることを見つけ、仲間を集めて挑戦しなさい。」

それは亡くなる1週間前のことでした。
まさか亡くなるとは思っておらず、「期待されてるんだな」と少し嬉しい気持ちでその場を後にしましたが、まもなくして訃報が伝わるとその真意が明らかとなり、社会を変えるという大きな挑戦をすることを決意したのでした。

なぜコンサルというアプローチを選んだのか

大企業が日本社会で果たす役割の大きさ

社会を変えるアプローチは様々です。
ビジネスだけでなく、政治や非営利団体(NPOや国際機関等)で変えるアプローチもあります。最近ではアクティビストやPEファンドといった投資家といった立場から企業を変えるアプローチもあるでしょう。

私はビジネスで社会を変えていくことを選びましたが、私が創業した時期はSaaSのようなソフトウェアプロダクトを通じて社会を変えるという世界観が支配的でしたし、起業アイディアが「コンサル会社を作る」というのはずいぶん馬鹿げているように思われました。

私が様々なクライアントと働く中で改めて気づいたのは、大企業の持つ力の大きさと、その力を動かすための合意形成の難しさです。

大企業の持つ力の大きさとは、秘めたポテンシャルの大きさと言い換えることが出来るかもしれません。

大企業には本社だけでなく、地方の工場や研究所、そして子会社に至るまで多様で目を見張るような人材がたくさん働いています。また、長年の研究開発で生まれた世にまだ出ていない技術も山のように持っています。
当然ながら、ひとたび彼らがやると決めたら、莫大な規模の投資が関係する産業に流れ込むことになります。

また、社会秩序という観点でも大企業は大きな役割を果たしています。特に製造業は「ケイレツ」といったサプライチェーンのピラミッド構造を通じて多くの人を雇用し、社会に包摂する役割を果たしています。税金や保険料だって源泉徴収という形で企業が代理で徴収しています。コロナ禍において職域接種が大きな成果を上げたように、この"社団国家日本"とも言える社会構造においては、企業活動こそが社会の根幹を担い、この国に秩序と安定をもたらしてきたと私は考えています。

日本の大企業がなかなか変われない/ なかなか動けない背景には、こういった企業群の頂点に位置するがゆえの社会的役割の大きさがあるからだと考えています。

どれだけ理想的な計画やアイディアがあろうが、社長が号令をかけようが、現場や関係者が納得しないと日本の大企業では変革は絶対に成し遂げられません。それは関係者が意識的/ 無意識的に自社の社会的な立ち位置に責任を感じているからです。この責任感を皆が放棄すれば、この社会は解体してしまうでしょう。

何かを変えようとした時、多数かつ多様な立場の関係者との丁寧な合意形成が必要になる。ここに、日本の大企業の変革の難しさがあります。

「人を変える」というアプローチ

変革の動きは常にマイノリティのサイドから起こるものです。多くの場合、たった1人の担当者の「会社を良くしたい」という素朴な想いから始まります。通常であればその動きはうまくいきません。なぜなら数の論理で必ず負けるからです。

マイノリティの想いをマジョリティの動きに変えていくためには、様々な関係者との合意形成を行い、仲間を増やしていく必要があります。
この合意形成の過程では、様々な立場の関係者と対話し、時に「人を変える」ことが必要になります。社内の人間という立場では、対話の際にどうしても職位や部門の壁に阻まれてしまい、悔しい思いをすることが少なくありません。

コンサルタントの良さは、その担当者の最初の仲間になれることです。
そして、社外の自由な立場から様々な関係者と対話が出来ます。やろうと思えば、1人の人間として対話することだって出来ます。複雑に絡み合った意図や関係性を読み解き、対話を通じて人を変えることが出来る立場です。
結局のところ、人の勇気や決断を促すことは、AIやソフトウェアでは出来ないことなのです。

『タコピーの原罪』より

対話を通じて、様々な立場の関係者の間を取り持ち、時に人を変え、変革を実現する。そして、大企業に秘めたポテンシャルを現実のものにしていく。

それが経営コンサルティングという仕事で今、社会に果たせる役割であり、経営コンサルティング会社だからこそ出来ることだと考えています。

役割を果たしきれていない大手ファーム

コンサルティング業界は今、『アクセンチュア1強』と言われるほど特定の外資系ファームが圧倒的な地位を占めるに至っています。
彼らはグローバルファームとしての資源を活用しつつ、日本国内でもM&AやJV設立を積極的に行っており、事業領域を拡大し続けています。
その結果、以下の記事にあるように従来、彼らの顧客の事業領域であった領域にまで"領空侵犯"するケースが出てきており、様々な業界で「アクセンチュアとどう戦うのか?」を考えざるを得ない状況が訪れつつあります。

1強とは言いましたが、業界全体としても急激に規模が拡大しています。
特に、コロナ後にはDX需要が一気に増大したため、コンサルへのニーズも同時に増大しました。そしてそれに応える形で大手ファームは業界外から大量の中途採用を行いました。

違和感を感じ始めたのはこのあたりの時期からです。

コンサルティングの仕事は基本的にプロジェクト型です。プロジェクトが終われば次の案件を探さなければなりません。
つまり、ニーズに応える形で大量採用を行う→大量採用した人たちを養うために常に大きな案件を確保する必要に迫られることになります。その結果、顧客からの依頼であっても小さな案件は断り、基幹システム刷新など特定の大型案件の提案に傾注する倒錯した姿勢に疑問を持ちました。

また、業界外の中途採用を増やした結果、この業界が伝統的に大事にしてきたプロフェッショナリズムが失われつつあります。"サラリーマンコンサルタント"と形容出来るようなコンサルタントがずいぶんと増えた気がします。
結果として起きるのは、コミットメントの不足です。先程述べたような関係者との合意形成や人を変えるといった行為には大変なエネルギーを必要とします。ましてや自分の会社ですらないわけですから、よっぽどの職業倫理が無いとそこまでやらないでしょう。

そうして私は、先に述べたような社会から必要とされている役割を今、大手ファームは果たしきれていないのではないか、と思うに至りました。
少なくとも、案件規模の大きさに制約されず、顧客の変革のニーズに真摯に対応し、長期にわたるコミットメントが可能なコンサルティング会社はあってもいいのではないか、と。

それは、変革とは何も基幹システム刷新でなされるものではなく、1人の社員の想いから始まるものであり、こういった「変革の芽」を丁寧に育てていくことこそが変革を標榜する経営コンサルティング会社の本義であり原点であると私は信じているからです。

業界の常識から自由であることの重要性

上記で述べたようなコンサルティング業界の問題は、実は100年ほど前に生まれたコンサルティングファームというビジネスモデルが抱える構造的なものです。

また、業界や在籍する企業に長くいるほど、気づかぬうちに「業界のあたりまえ」という常識に縛られてしまいます。ピュアな想いを持ってこの業界の門を叩いた人も、いつしか業界や企業の論理に絡め取られてしまっています。そして強い意思でそれをはねのけたとしても、個人の想いだけでは会社が成長した時に彼らと一緒の存在になってしまいます。

私がこだわる「独立系」とは、大手ファームからスピンオフしたという意味ではなく、この業界の常識や資本から独立しているという意味です。
大手ファームと同じ轍を踏むことなく、この私の想いや構想を実現するためには、この業界の常識から自由となり、ゼロベースでビジネスモデルやオペレーションを考え直す必要があります。
そしてそれは、何もないからところから始めるからこそ出来ることです。
守るべき人や組織がある時、人はそれを安易に変えることは出来ないでしょう。

この挑戦は、大手ファームというグローバル規模で展開する巨大で強力な競合がいる中で、事業をゼロから立ち上げていくという無謀な挑戦に見えるかもしれません。ですが、優秀で志を持ったメンバーと一緒に出来れば、決して不可能な挑戦ではないと思っています。業界の巨人が既に存在している中でも、新参者が確固たる地位を築いた事例は歴史上たくさんあります。例えば、ソニー生命は私たちの身近なその例です。

ソニー生命はその名の通りソニーの生命保険事業です。メーカーであるところのソニーが1980年代に異業種から参入し、現在では生命保険の満足度ランキング1位の常連、毎年1,000億円程度の営業利益を生み出す事業まで成長しています。

これほどまでに成功を収められたのは、ソニー生命が業界の常識に縛られていなかったからです。

生命保険業界は歴史的経緯から、生保レディーと呼ばれる女性が幾つかの決められたパッケージ商品を販売することが当たり前でした。ソニー生命は「大卒男子によるライフプランニング(=説明難易度の高い金融商品を組み合わせたオーダーメイドの保険設計)」というコンセプトで業界に参入。営業は保険業界外から活躍する営業マンをスカウト。常識外のモデルでしたが、見事に時代のニーズを捉えて業界に確固たる地位を築いたのでした。
ソニー生命の成功を見た他社はライフプランニングの考え方を取り入れるようになり、その挑戦は結果として業界を変えるきっかけにもなりました。

過去の伝統や常識を中途半端に引き継いだまま、大きくなりすぎた大手ファームの昨今の姿勢は、業界全体に対する顧客の信頼を揺るがしてしまうかもしれません。「こんなのはコンサルじゃない!」という常識が桎梏となり、クライアントへの価値提供が劣っていくよりは、私はスタートアップとして新たなモデルを構築して時代の要請に応え、自らがあるべき姿を示すことで業界を良い方向に変えて行きたいと考えています。

日本企業の本当の変革のパートナーを目指して

この挑戦は、まだ始まったばかりの挑戦です。
上手くいくかどうかは、全てこれからの自分たちの信念と働きに懸かっています。ですが、足許では良い兆しも見えてきました。

UnitePartnersは2022年に創業し、今年で3年目になります。

本当に顧客がいるかわからない中でのスタートでしたが、やってみてわかったことは、是々非々でコンサルティング会社を起用する担当者の方が意外にも社会にいるということです。ブランドで選ぶのではなく、目的を達成出来るかどうかで会社を選ぶような熱意ある担当者の方にUnitePartnersを支持して頂き、気づけば顧客も100社(多くは東証プライム上場企業)、売上も2桁億円を超えるまで成長してきました。

更に、顧客になっていただいたほぼ全ての企業が何かしらの形で継続して契約し続けて頂いており、長くお付き合いすることでより顧客理解が深まり、より良い提案が出来るようになる良いサイクルが回るようになってきています。

今後は、仲間とともに専門性の幅をより広げ、変革の企画から完遂まで長くお付き合い出来るコンサル会社として起用してもらえる機会を増やしていきたいと考えています。

「人を変え、会社を変え、社会を変えていく。」

まだ少し時間がかかると思いますが、顧客から本当の変革のパートナーとして認めてもらえるよう、想いに共感してくれた大切なメンバーとともに日々汗を流し、プロフェッショナルファームとして、もっといいコンサルティングを追求していきたいと思っています。

創業期の風景

記事を読んで共感してくれた方へ

最後まで記事を読んで頂き、有難うございました。この記事を読んで共感してくださった方とは、今後もしかしたら何かしらのご縁があるかもしれません。

そうした際には、会社までご連絡いただければ嬉しく思います。また、もしこの記事を読んだ感想や考えたことなど、率直なご意見も歓迎いたしますので、私のX(旧Twitter)までご連絡くださいませ。

この先まだたくさんの困難が待ち受けていると思いますが、もう一度この国を豊かに、誇れる国に出来るように、生涯を通して働いていきたいと思います。

最後にはなりますが、もしこの記事を読んで良かったと思って頂けましたら、ハートの「スキ」ボタンを押して頂けますと嬉しいです。