夫婦別姓は家族の絆をこわす?
○家族の絆が壊れるから夫婦同姓?
法務大臣の諮問機関である法制審議会は1996年に民法第750号の改正、すなわち選択的夫婦別姓制度を含む民法の一部を改正する法律案を答申していますが、「家族で氏が違うと絆が失われる」という自民党保守派などの反対で25年にもわたって、この答申に基づく民法の一部改正を国会に上程してきませんでした。
長年をかけて育まれる家族の絆は「名称」によって失われるものでしょうか。また逆に、名称さえ同じにすれば家族の絆は得ることができるのでしょうか。内閣府の調査でも「姓が違っても家族の一体感に影響はない」と考える人は64%に上っています。
日本で一般の人々も姓を名乗れることになり、1876年に最初導入されたのは「夫婦別姓」でした。1898年(明治31年)に成立した民法で「家制度」導入とともに妻が夫の姓を名乗る「夫婦同姓」がはじまりました。ですから、伝統といってもたかだか120年ほど前からの話でしかありません。
現行の夫婦どちらかの姓を名乗る制度は1947年の民法改正から続いており、男性の家の姓にしなければならないという強制は無くなったものの、現在も96%の女性が夫の姓を名乗っていることから明治民法のころから状況は変わっていません。
海外のでもかつては夫の姓に統一する「夫婦同姓」が一般的でしたが、男女平等の考え方などから各国で制度の見直しが進み、日本のように同姓を義務付けている国は他にはありません。夫婦別姓を認めている諸外国で、そのことが理由で「家族の絆」が壊れているのでしょうか。
国連の女性差別撤廃委員会から同姓の強要は「条約違反」として繰り返し是正を勧告されている。別姓を選択できる自由を認め、選択的夫婦別姓制度の導入を求める声に応えるべきではないでしょうか。(「選択的夫婦別姓 請願を審査 宇治市議会」『朝日新聞』、「選択的夫婦別姓の導入を」高校生が国への意見書求める請願提出 宇治市議会」『京都民報』)
○格差が生む女性の生きにくさ
「シーセッション」と言われるよ うに、新型コロナイルス感染症の流行は女性の雇用に大きな打撃を与えました。その背景にはコロナ禍の影響が宿泊・飲食やレジャーなどの「対面型サービス」に集中して現れ、この分野に女性の非正規労働者が多く働いていたという事情があります。また、感染リスクを抱えながら現場の最前線で働く各種エッセンシャルワーカーに女性、かつ非正規労働者が多いことから、男女間や正規・非正規間の格差が大きい処遇制度のあり方がくっきりと浮かび上がりました。
緊急事態宣言が出された2020年4月、女性の就業者数は前月から約70万人減少。パンデミックを機に多くの女性が労働市場から退出しました。学校の閉鎖や授業時間短縮、介護施設の一時閉所などで、家族のケア負担が増大するなか、その負荷の多くが女性に掛かり、就労復帰を諦めた女性が多く発生。
2020年度のDV相談件数は19万30件で前年度比の約1.6倍に増加。性犯罪・性暴力の相談件数は前年比で30%増加。
2020年の自殺者数は2万1,081人で前年より912人増え、リーマンショック後の09年以来、11年ぶりに増加。男性は23人減って1万4,055人、一方、女性は935人増の7,026人。
自殺した女性のうち、「被雇用者・勤め人」は過去5年平均より3割増。自殺の原因・動機は「勤務問題」が最も多く、「職場の人間関係」「職場環境の変化」が増加。⇒コロナ禍が女性に与える影響は大きく、経済的な問題、DV被害、就労、子育てや介護など様々な悩みに感染不安や自粛生活によるストレスが加わることで深刻化し、自殺者の増加に影響を与えている可能性も指摘されています。
○ジェンダーギャップ指数が表す日本の男女不平等
日本で暮らす女性たちがどれほど「おんなである」ということを理由に理不尽な思いを持たざるを得ないかを端的に表すのが男女格差の大きさを国別に比較した、世界経済フォーラム(WEF)による「ジェンダーギャップ指数」。
2021年では156か国中120位というたいへん低い位置にいるということが取り沙汰されますが、政治分野での女性の参画を取り上げた女性議員比率は156か国中147位と最低レベルです。
経済分野の女性管理職の比率でも139位と大きく遅れています。
健康や教育の分野では世界のトップクラスにそれほど差がないにもかかわらず「政治」や「経済」の場において女性の姿が極端に少ないというのは、女性が持っている力を十分発揮して社会進出できる社会ではないということです。それは何ともったいない、そして何と不自由な社会でしょうか。
○夫婦別姓にかかわる各政党の見解
「夫婦別姓に反対する50人の自民党議員は誰なのか。地方議員への文書全文と議員一覧」『ハフポストNEWS』
「野党が衆議院に「ジェンダー関連3法案」を共同提出 (6月8日)」市民連合HP
「議論ばかりで前進せず 選択的夫婦別姓 法制化望む思い」『朝日新聞』