Second Pain-15
花都 美彩「ありゃ、実花沙、グループから抜けてる…」
地鳴 明吾「相当やっちまったね…」
清鐘 弘鷲「やっちまったよ…。あぁ、ブロックもされてる…」
花都 美彩「相当お怒りだな…。」
地鳴 明吾「実花沙さんがいなくなったら僕たち何もできなくなっちゃうよ〜…」
花都 美彩「お前はもっと優しい言い方をしろよ!そもそも実花沙はすんごい真面目で傷つきやすいんだからさ!」
清鐘 弘鷲「はい…、反省してます…。…航空自衛隊の時の悪癖が出ちゃいました…」
花都 美彩「え、自衛隊!?」
清鐘 歌鳥「あ、う、うん…。まぁ、理由あって辞めたけどね。でも、帰れとかはさすがに駄目だったし…、俺が感情的にって言ったから…」
花都 美彩「とにかく反省しろ」
地鳴 明吾「明日実花沙さんにきちんと謝りなよ!あの人、自己中って言葉で心臓抑えてたし!!」
清鐘 弘鷲「はい…。…、今日謝りに行く…」
花都 美彩「おいおい、マジ?」
地鳴 明吾「今日はそっとしておいた方が…」
清鐘 弘鷲「…とりあえず行く!」
スタスタスタ!!!
花都 美彩「マジか…」
地鳴 明吾「僕たちも跡をつけよっか」
花都 美彩「だな」
金藤 実花沙「どうすれば私の…」
清鐘 弘鷲「実花沙ちゃん!」
金藤 実花沙「!!」
え…?
なんで?
金藤 実花沙「!」
心臓がまた…!!!
いててて…。
清鐘 弘鷲「わっ、待って!逃げようとしないで!」
月ノ宮 奏那他「ちょっと、弘鷲!?」
清鐘 弘鷲「実花沙ちゃん、今日はごめんね…。俺がさ、歌の指示したのに…、とゆーか元はと言えば俺なのにさ…、…帰れとかキツイ言い方しちゃったね…。…、俺さ、後輩の指導ってなるとついスパルタになっちゃってさ…。…、1人1人に合わせないといけないのに君がいつも真剣で伸び代あるからそれを忘れてスパルタモードに入ってしまったんだ…」
金藤 実花沙「キツい言い方するってことは何も期待されていないってことですよね?私はポンコツでなんにもできない女だから」
清鐘 弘鷲「い、いや、そんなことはないよ…!!…俺さ、元航空自衛隊でさ…、歯科医官やってたんだけど…、その悪癖もまだ残ってたみたいで…」
金藤 実花沙「え!?自衛隊!?」
清鐘 弘鷲「う、うん。理由あって辞めたけどね」
金藤 実花沙「え、えぇ…?…、私、昔から先輩っていう存在が苦手で…、かとりんとかはなぜか大丈夫なんだけど…、理不尽なことが多すぎてうんざりだった。酷い時は喧嘩した。…だから先輩っていう存在とどう向き合えばいいのかわからない!!!」
高校時代の嫌なことを思い出してしまった…!!
…本当に酷い時は喧嘩してそれっきりだったから…。
清鐘 弘鷲「…そうだよね…。理不尽な要求とかされて苦しかったんだよね。…なんなら俺が君にとって優しい先輩にならないといけないよね…。軽率な言葉で傷つけてごめんね…」
金藤 実花沙「…ボーカルの適任なら美彩がいます。おまけにグループから脱退したのでもう戻るつもりはありません」
月ノ宮 奏那他「(実花沙ちゃん…、まだ怒ってる…)」
それでも弘鷲さんの話をとりあえず聞き続けてみる。
清鐘 弘鷲「待って!自己中なボーカルってやる気を損ねるようなこと言っちゃってホンットに最低なことした!!!本当にごめん!!!」
金藤 実花沙「…やっぱりキツい言動には慣れていないので正直動揺しました」
清鐘 弘鷲「うん…、そうだよね…。俺が急にスパルタになったのびっくりしたよね…。君の能力の暴走を抑える方法を一緒に考えるって言ったのに…、俺…、君のことなんにも知らないで傷つけちゃったね…。悪く言っちゃったよね…。姉上に言われてやっと気づいた!!ごめん!!!ブロックされてもおかしくないことしちゃったし…」
金藤 実花沙「…!謝るのは私の方です。逆ギレした挙句ブロックして大変申し訳こざいませんでした」
清鐘 弘鷲「ううん、俺が悪いから…」
金藤 実花沙「いや、そんな…」
本音を打ち明けた後、私もようやく謝罪の言葉を口に出すことができた。
清鐘 弘鷲「ごめんねのぎゅ〜、させて?ぎゅ〜して、俺が傷つけちゃった心、和らげたい」
金藤 実花沙「え…、そ、その…、じ、じゃあ…」
清鐘 弘鷲「ありがと。ん…」
弘鷲さんはそう私を抱きしめてきた。
清鐘 弘鷲「ごめんね…。よしよし…。君は自己中じゃないからね…。俺が悪かったから…。ごめんね…」
金藤 実花沙「うぅ…」
清鐘 弘鷲「…心臓は大丈夫かい…?」
金藤 実花沙「はい…。今のでだいぶ落ち着いてきました」
清鐘 弘鷲「よかった…、どうなるかと思った…!…俺のせいで君が死んじゃうんじゃないかって思うとさ…、胸が締め付けられるよ…」
金藤 実花沙「弘鷲さんのせいじゃないですから…!!」
清鐘 弘鷲「こんなに酷いこと言っちゃったのに君は優しいね。ん〜、よしよし…」
私の背中を撫でる手があったかい…。
月ノ宮 奏那他「(実花沙ちゃんの表情が和らいだ…!よかった…!!)」
清鐘 弘鷲「そうだ、この前歯医者で言ったこと、覚えてるかな?」
金藤 実花沙「?」
清鐘 弘鷲「…君は弱くなんかないよ。治療とかいっぱい頑張ってきたんだよね。…お世辞じゃないかって警戒してるの、僕にはわかる。僕たちアプローズは心も読めちゃうから」
金藤 実花沙「え…?」
清鐘 弘鷲「ありったけ話して自滅しようとか…、そんな悲しいこと思わないで…。僕は君の苦い思い出を少しでも和らげたいんだ」
金藤 実花沙「…、なんであの時は僕のために怒ってくれたの…?たかが他人…。そんなことしたってメリットは…」
そうだよ。
他人のために怒るとかマジでわからない。
清鐘 弘鷲「…俺にはあるよ。そんな酷い歯医者に…、医療従事者になりたくないって…、君の心を読んでそう感じた。これまでいろんなところで研修受けてきたけどさ…、俺の見てる世界、思ったよりも狭かったみたいだね…」
金藤 実花沙「そ、そんなこと…。あ、もしかして…、初診で考えてたチャラ男…とか、馴れ馴れしいとかってバレてます?」
清鐘 弘鷲「ふふふ、バレてるよ?それに、俺に触られてすっごく気持ちよかったでしょ?…あんなにじっくりねっとり触ったけど君以外にはしてないよ?」
バ、バ…レ…て…いた…、だと…!?
おぅ、のーっ!!!
あと、私以外にはしてないのか。なんかホッとした。
清鐘 弘鷲「あとは…、香水使ってないよ?君こそいい匂いしてたよ?」
金藤 実花沙「あ、覚えてたんですね…。…私も使ってないです。ち、ちなみに…、彼女さんっていらっしゃいます?」
清鐘 弘鷲「いや?女の子は好きだけど、恋愛は君一筋だよ。そうじゃなきゃ姉上が紹介しないもん」
金藤 実花沙「え?あ、た、確かに…」
清鐘 弘鷲「ふふ。君のことは久しぶりに見たらすんごい気に入っちゃってさ!…だから診察の時、怖がる姿が可愛くて意地悪したんだ。ほら?歯医者って怖いイメージあるんだけどさ、君を他のクリニックに逃がしたくなかったし」
は、はい…!!!?
ド、ドSで変態だ…!!!
清鐘 弘鷲「ねぇ今、俺のことドSで変態だと思ったでしょ?」
金藤 実花沙「ご、ごめんなさい!!で、でも!こ、こんなポンコツ女が!!!?もったいないですよ!!!」
清鐘 弘鷲「ふふ、何から何まで完璧な子は苦手だよ…。なんでもできる人は正直関わりづらいし苦手だし…。君のそういうところも好きだよ?」
金藤 実花沙「ひっ!?」
どこかで…、気に入られてしまった…!?
月ノ宮 奏那他「(なんかわかるかも…。欠点がない人は私も正直関わりづらいし…)」
清鐘 弘鷲「(奏那他、そうだよね)」
金藤 実花沙「…あ、あの、ご、ごめんなさい!失礼なこと考えちゃって…!!」
清鐘 弘鷲「ふふ、いいんだよ、過去にこんなことあったら警戒しちゃうよね。相当辛い思いしてたみたいだし…」
金藤 実花沙「…」
清鐘 弘鷲「なんか、君のこと守りたくなっちゃった。…君のこと、もっと聞かせてよ」
金藤 実花沙「えっ…?!」
か、顔近い…!!
イケメンに見つめられるとこっちが恥ずかしいよ…。
月ノ宮 奏那他「ちょっと、弘鷲!」
清鐘 弘鷲「あ、ごめんね、でも、これだけは伝えたかった…!!この前のはお世辞じゃないし、君のようなタフな子、結構気に入っているよ」
金藤 実花沙「そ、そうでしたか。それは疑ってごめんなさい…」
清鐘 弘鷲「ううん!今までの人生からするとどうしても警戒しちゃうの、なんとなくわかるかも。…あと、えっと…、能力を抑える方法なんだけど…、君はもしかしたら過去の憎しみを思い浮かべながら歌うと能力が暴走するかなって…」
…、
アマるんとは能力の抑え方がなんか違うような…?
でも…、
金藤 実花沙「…そういえばそれに沿った歌詞だったと思います。サビは…」
清鐘 弘鷲「1回過去の憎しみを思い浮かべないで歌ってみて」
金藤 実花沙「は、はい!…〜♪」
…?
あれ?
ガラスが割れるような音…、
しない???
月ノ宮 奏那他「あっ!すごいすごい!心地よい歌声に変わった!」
清鐘 弘鷲「素敵だよ」
花都 美彩「いけるんじゃね?」
金藤 実花沙「え?みんな?」
地鳴 明吾「気になって来ちゃった」
金藤 実花沙「あ、あの、ごめんなさい!!」
花都 美彩「いや!そんなのはいいんだよ!とにかく無事でよかったよ!やっぱり実花沙だよな!ボーカル!」
地鳴 明吾「そうだよそうだよ!」
金藤 実花沙「とゆーかみんな、なんで私の居場所わかるん!?」
月ノ宮 奏那他「私はその匂いとかオーラかな」
ふむふむ…。
地鳴 明吾「僕は奏那他とテレパシーで」
清鐘 弘鷲「俺も」
花都 美彩「僕は明吾についてっただけ」
…アプローズってもしかして…?
金藤 実花沙「あんたたちエスパー?」
清鐘 弘鷲「アプローズ同士はテレパシー可能さ」
地鳴 明吾「すごいでしょ」
金藤 実花沙「ひぇ…」
月ノ宮 奏那他「ご、ごめんね…!その、実花沙ちゃんがいなくなったら私たち…、そ、その…!な、何もできなくなっちゃうし…!だ、だから、みんなにテレパシーで教えちゃった…!!!」
金藤 実花沙「ほぇ…」
チートじゃん!
そんな設定ずるい!
反則だよ…!!
月ノ宮 奏那他「まぁ、あとは…、私の能力で実花沙ちゃんの運命をコントロールできればいいかな。万が一に備えて」
地鳴 明吾「僕も地面を操る能力あるけど、なんとか抑えるよ!」
清鐘 弘鷲「俺も自然の力でサポートするよ」
金藤 実花沙「念の為お願いします」
月ノ宮 奏那他「うん!」
地鳴 明吾「実花沙さんらしく歌ってくれればそれでいいから」
清鐘 弘鷲「うん…!美彩ちゃんから改めて君のこと聞いたんだけど…、俺は君を踏み台にしようだなんて思ってないよ!むしろ、そういう酷いことする人たちから守りたいって思った!」
金藤 実花沙「弘鷲さん…」
清鐘 弘鷲「君はお人形さんなんかじゃないよ。…たった1人の大切な仲間。それに…」
地鳴 明吾「それに?」
清鐘 弘鷲「い、いや、なんでもないよ」
ん?
花都 美彩「まぁ、今日はもう夕方だし…、また明日、練習だな!」
金藤 実花沙「うん!私、頑張るよ」
地鳴 明吾「僕も!」
なんと、私の能力の暴走の原因が過去への執念だったとは…。
弘鷲さん、すごいな…。
やっぱり頭いい…。
さすが高学歴のイケメンお兄さんだ…!
清鐘 弘鷲「実花沙ちゃん、もう一度僕たちのグループに来てくれるかい?」
金藤 実花沙「は、はい…!あ、ブロック解除も…!!」
清鐘 弘鷲「ん、ありがと」
こうして私は抜けてたグループに再招待されたのであった。
帰宅後、私は自分の部屋で音取りをしていた。
弘鷲さんから送られた音源データで。
練習できなかった分、私1人だけでも遅れを取り戻さねば…!!