Second Pain-10
そして、さらに翌日。
一昨日の公園にみんなが来た。
私は1人で待っていた。
早く来すぎてしまっただろうか。
数十分後だ。
月ノ宮 奏那他「あ、あそこにいるの…」
奏那他さんが見えた!
金藤 実花沙「奏那他さん!」
月ノ宮 奏那他「実花沙ちゃん!早いね!そ、そそ、その、い、いい、意味で」
金藤 実花沙「いやそんなそんな。それより、昨日は唐突な願いを申し出ちゃってすみません…」
月ノ宮 奏那他「う、ううん!なんか大変なことになっちゃったね…」
金藤 実花沙「はい…、よりによってボーカルがわたくしとか…」
月ノ宮 奏那他「あんなに綺麗な歌声だもん!…何かやってた?」
金藤 実花沙「い、いえ…、歌うのが昔から好きで…、気づいたらこうなってたっていう感じです」
月ノ宮 奏那他「すごいね…!独学なんだね!」
金藤 実花沙「えへへ…、幼稚園の頃、結構音痴だったので…、歌うの禁止にされてたんです、わたくしだけ」
月ノ宮 奏那他「え?!そうなの!?」
金藤 実花沙「はい…、みんなから歌わなくていいって言われちゃって…、困っちゃいましたね…」
月ノ宮 奏那他「実花沙ちゃんなりに頑張っているのにね…」
金藤 実花沙「いやいや…、…、私、言語の発達がすっごく遅くて…、ゼリー学級にいました」
月ノ宮 奏那他「ゼリー…、学級…、ん?待って、特別支援学級かな?」
金藤 実花沙「…そうです。もしかして同じ小学校ですかね?」
月ノ宮 奏那他「そ、そそ、そうだね!…、あんまり接点なかったし、わからなかった…」
金藤 実花沙「私も…。…」
月ノ宮 奏那他「実花沙ちゃん…?」
金藤 実花沙「どうしたら…、どうしたら私の能力、抑えられるんだろう…?」
月ノ宮 奏那他「結界を破壊しちゃうやつ…?」
金藤 実花沙「えぇ…。…あの日から…、歌えなくなりました」
月ノ宮 奏那他「あの日…?」
金藤 実花沙「私、聖苺花学園大学 っていう偏差値が低い大学出身なんです」
月ノ宮 奏那他「大学に行けただけでもすごいよ!…そこで何かあったのかな?」
金藤 実花沙「人によっては喜ばしいことかもしれない。…でも、私はそうはいかなかった。人文学部に人文学科があるんですけど…、私、学科の学年2位で終わってしまったんです」
月ノ宮 奏那他「え!?すごいことだよ!」
金藤 実花沙「家族もそう言ってくれました。…でも、ここまで来れたならトップになりたかった…!!いくら身体を張って勉強しても成績は…、よくなかった…」
月ノ宮 奏那他「そっか…、それは悔しいね…」
金藤 実花沙「…、卒業式の答辞を頼まれたんですけど、乗り気じゃなくて断りました。次席ということを知って。逆恨みなのはわかっているけど私をトップにしなかった大学を恨んで恨んで…、大嫌いになりました」
月ノ宮 奏那他「うんうん…、認めてもらえないと嫌になっちゃうよね…」
金藤 実花沙「主席の人は授業態度もそんなによくなくて…、寝てばかりで…、おまけにメモもそんなに取ってない人でした」
月ノ宮 奏那他「聞いた感じそんなに真面目な感じじゃないね。…そういう人より努力してもトップになれなかったのはすごく悔しいことだよ…」
金藤 実花沙「はい。気晴らしに歌おうとしたんですけど、歌った瞬間、私の耳にガラスが割れるような音が響いて…、アマるんの能力が受け継がれてしまったことがわかったんです」
月ノ宮 奏那他「苦しくなるよね…。自分が望んでいない形で能力が目覚めてしまうなんて」
金藤 実花沙「はい…。…あの悔しさと憎しみから能力が目覚めてしまったんだと思います…」
望んでもいないことなのに危険な能力が潜んでいたなんて…。
それが目覚めてしまうなんて…。
私でも予想できなかった。
月ノ宮 奏那他「私もね、…すごく負けず嫌いで…」
金藤 実花沙「え!?めちゃくちゃ優しそうじゃないですか!実際、優しいし」
月ノ宮 奏那他「あ、いや、そ、その…。私、ちっちゃい頃、ピアノやってたんだけど…、コンクールで2位で…」
金藤 実花沙「え!?すごすぎます!」
月ノ宮 奏那他「ありがとう。…でも、優勝できなくて悔しかった。…1位の人と何が違うんだろうって…」
金藤 実花沙「私も次席だとわかった時、トップの人と何が違うんだろう?って恨みました」
月ノ宮 奏那他「…私たち、なんやかんや一緒…だね?」
金藤 実花沙「ええ。2番目で終わってしまったからこそ共有できる。その悔しさが」
月ノ宮 奏那他「うん…!誰とこうやって話すと案外気楽になれるね」
金藤 実花沙「私も」
清鐘 弘鷲「おーい!!」
あっ!弘鷲さんが来た!
金藤 実花沙「弘鷲さん!」
清鐘 弘鷲「やぁ!来てたんだ!…ありゃ、集合時間まであと30分くらいか…」
月ノ宮 奏那他「実花沙ちゃんはもう1時間くらい前から待機してたみたい」
金藤 実花沙「不測の事態に備えて」
清鐘 弘鷲「すごいなぁ!すっごい真面目だ!い、いい意味だよ!」
金藤 実花沙「…どうも」
清鐘 弘鷲「そんで?2人で何話してたん?」
金藤 実花沙「色々です。…とは言っても2番目で終わるとやっぱり悔しいねっていうお話しです」
清鐘 弘鷲「そうかそうか!」
金藤 実花沙「私、大学で成績2位で卒業したけど、やっぱり悔しいなって」
月ノ宮 奏那他「私はピアノのコンクールで2位に終わっちゃったこと」
清鐘 弘鷲「あー、なるほど!…俺もさ、実花沙ちゃんと同じ学年2位で卒業したよ、大学」
金藤 実花沙「え…」
清鐘 弘鷲「あ、奏那他と同じユニゾン大学!…学部は違うけど」
金藤 実花沙「!?え、ユニゾン大学って…」
清鐘 弘鷲「そうだよ。人間都でいっちばん偏差値高いとこ!」
月ノ宮 奏那他「自慢そげに言わないの!」
清鐘 弘鷲「えー?ご、ごめんね?」
金藤 実花沙「え、いや…。それより、1番偏差値が低い学部でも70でしたよね…、…え?待って…!!」
月ノ宮 奏那他「ん?どうかした?」
やばいって!!!
高学歴のお兄さんとお姉さんに囲まれた!!!
金藤 実花沙「は、はわわ…、そ、その…」
清鐘 弘鷲「あれれ?どうかした?」
金藤 実花沙「高学歴に挟まれた!!こ、怖いーっ!!!」
月ノ宮 奏那他「そ、そんな!大丈夫よ〜!」
清鐘 弘鷲「あははっ、可愛いね!その反応」
金藤 実花沙「えーっ!?こ、こんなヨボヨボな低偏差値の女と一緒にいていいんですか!!!?」
月ノ宮 奏那他「あ、そ、そんな悲しいこと言わないで〜!!」
清鐘 弘鷲「そ、そうだよ!んで、話戻すけど」
月ノ宮 奏那他「あなたが変えたんでしょ」
清鐘 弘鷲「ごめんごめん!!…実花沙ちゃん?」
金藤 実花沙「ご、ごめんなさい、びっ、びっくりしちゃって心臓爆発しそう!!!」
清鐘 弘鷲「驚かせてごめんね」
月ノ宮 奏那他「でも、事実だけどね…」
金藤 実花沙「は、はい…!んで、続きを」
清鐘 弘鷲「えっとね…、俺もさ、最初は主席だったんだけどさ…、秀眞に追い越されちゃった…」
金藤 実花沙「秀眞さん…、あっ!知ってます!お世話になったこと、あります!!」
清鐘 弘鷲「マジ!?…最近うちのクリニックに入ってきた人だ!」
金藤 実花沙「あら!ご縁がありますね!」
清鐘 弘鷲「そうみたいだね!…まぁ、俺もすごく悔しかったよ…」
金藤 実花沙「私も大学が違うとはいえ最後の最後で追い越されてしまったので悔しいです…。大学生活のおかげで私自身変われたんですけど…、それがきっかけで出身大学が嫌いになっちゃったというか裏切られた気分になったと言いますか…」
清鐘 弘鷲「それほどめっちゃ頑張ったんだね」
金藤 実花沙「いや、それほどでも…」
月ノ宮 奏那他「まぁ、私はそれを機にピアノやめてギターに転向したわ」
金藤 実花沙「それも選択肢の1つだと思います」
月ノ宮 奏那他「うん…!とは言ってるけど…、たまにピアノ弾いてるけどね」
金藤 実花沙「おぉ…」
まさかの弘鷲さんもか…。
地鳴 明吾「おーい!」
花都 美彩「待たせたなーっ!!!」
あっ!これでメンバーが揃った!