Second Pain-6
…やってしまった…。
やってしまった…!!
金藤 実花沙「なぜ僕は歌うことしかできないんだ…!」
…目の前には湖。
きれいで透明な水色。
…、
気づけば僕は湖の方へ歩いて行った。
自分の能力をどうしたら抑えられるか。
アマるんですらわからないし。
…、
…どうせ生きてたってなんにもいいことはない。
仕事がなかなか見つからないし。
最後にはみんなに裏切られちゃうし。
…、
鬱になって苦しむくらいなら…。
大好きな歌でみんなを傷つけてしまうくらいなら…!
…死んだ方がマシだ!
…、
僕は湖の中に落ちようとする。
…、
…、
月ノ宮 奏那他「待って!!!」
!!
その声は…?
月ノ宮 奏那他「あ、あの…!死のうとしないで!何があったかはそ、その、わからないけど…、お話、聞くから!」
…!
税務署で会ったお姉さん。
どうして?
どうして僕を止めに来た…?
金藤 実花沙「さっきの歌…」
月ノ宮 奏那他「すごく綺麗な歌声だったよ」
金藤 実花沙「でもダメなんだ!僕が歌うとみんな苦しむ!!結界をどんどん破壊して、やがて世界を滅ぼしちゃう!!!」
月ノ宮 奏那他「…それは苦しいよね…」
金藤 実花沙「で、でも…、大好きなもので悪いこと…」
月ノ宮 奏那他「実花沙ちゃん自身が責めることじゃないよ」
金藤 実花沙「なんで…?僕が望んでいなくてもやったことは…」
月ノ宮 奏那他「運命のせいだよ。生まれ持った運命はなかなか変えられないけど、……、少しなら力になれるかも」
金藤 実花沙「…、僕の…力?」
月ノ宮 奏那他「うん。私、アプローズっていう特殊な妖怪なんだけど…、パパが運命を操る能力持ってて…、私もそれを受け継いでいる感じ」
金藤 実花沙「…僕は歌える?」
月ノ宮 奏那他「うん!…あ、でもごめんね。今すぐじゃないかも…」
金藤 実花沙「…今じゃなくてもいいです。お気持ちだけでもありがたく受け取ります」
月ノ宮 奏那他「あ、いや、そ、その…、ち、力になれなくて…、ごめんね?」
金藤 実花沙「ありがとうございます。税務署のお姉さん。私の歌声聴かされたのはすごく恥ずかしい…」
月ノ宮 奏那他「ううん!そんなことないよ!オペラのようで…、すごく美しかったし…、そういう風に歌える人、なかなかいないよ…。その…、結界を破壊する能力を抑える方法、一緒に探そ?」
金藤 実花沙「お、お姉さん…。…、なんか税務署で話した時と自然体ですね」
月ノ宮 奏那他「あ、あはは!そうみたい!?でも、実花沙ちゃんだからこそ…、ってごめんなさい!実花沙ちゃんって勝手にちゃん付けしちゃって…」
金藤 実花沙「いえ、ちゃん付けの方が嬉しいです!」
月ノ宮 奏那他「よ、よかった…!」
金藤 実花沙「そうだ!この前のお菓子のお礼です。お会いしたら渡そうと思いまして」
月ノ宮 奏那他「わわっ!すっごく豪華…!ごめんね、気を遣わせちゃって…」
金藤 実花沙「いえ!」
月ノ宮 奏那他「ん…?プロフィールカードも入ってる!?すごい、可愛い…!!しかも、手書きだ…!センスいいんだね!私、パソコンでやったのに…」
金藤 実花沙「パソコンでもすごいですよ!…でも、ありがとうございます!…さて、わたくしは 美彩たちのところに戻ります」
月ノ宮 奏那他「わ、私も一緒に…、いい?」
金藤 実花沙「むしろお願いします」
月ノ宮 奏那他「じゃあ、一緒だね」
こうして私は奏那他さんと美彩たちのところまで歩いた。