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「暮らしを創るものはすべて自分で造りたい」独立から変わらない家への想い【住まいの作り手インタビュー#01】
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東京と埼玉の県境に事務所を構える「こなから建築工房」。
植栽をふんだんに取り入れた外構も素晴らしいが、斜面に建てられていることで眺めがとても良い。
インタビューに伺った日は風が強く寒い日だったが、性能にこだわって建てられた事務所だけあって屋内は静かで温かかった。
「自分の設計した通りに家が建たないのがやきもきするので独立しました」と語る藤岡社長。
その家づくりへのこだわりを伺いました。
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家具も外構もやらせてくれないと受けない
ウエダ:御社では現在、年間で何棟くらい建てられているのでしょうか?
藤岡社長:今は年間3~5棟くらいですね。ありがたいことに予約待ちの方も結構いらっしゃって、2027年の春くらいまでは予約で埋まっています。
ウエダ:こなからさんの建築に共感されている方がそれだけいるということですね。
藤岡社長:来られる方はかなり色々調べてうちに辿りついて来ています。建築事例もしっかり見ているから「こなからで建てたい」という方が多いように感じます。
うちは建築も家具も外構も一式やらせていただけないと、お受けできないとお伝えしています。それらを全てまとめて「家」だと思っているので、どれか一つでも欠けると成り立たないと思っています。
ウエダ:暮らしに関わるものは全て一括して手掛けることで、良い家が建てられるということなんですね。
藤岡社長:そうですね。
家には木は必ず植えるものだと教えられた
ウエダ:外構も含めて一式で設計するようになったきっかけは何かあったんでしょうか?
藤岡社長:建築業界に入るときに最初に入社した会社がパッシブデザインや環境共生を得意としている会社で、基本的なことはその会社で学ばせてもらいました。その際に日射取得や遮蔽に有効な植栽を学び、「家には必ず植栽する」ことの重要性を学び、その考え方で今もやっています。
・・・大人1人に大木が5本必要って聞いたことありますか?
ウエダ:初めて聞きました。
藤岡社長:大人1人が呼吸するのに大木が5本必要らしいのです。その話を聞いてから「4人家族だったら20本は必要だな」という心づもりでやっています。道行く人もブロックやコンクリートばかりの景色より、板塀や植栽のある家の方が見ていて季節を感じられるので良いと思います。
ウエダ:今までのやり方を変えるのは難しいかもしれませんが、自然を感じられる街並みというのは良いですよね。
藤岡社長:自分が以前いた会社では、外構を外構業者に丸投げだったり、使用建材が塩ビ製品であふれていたりと、どうしても効率や価格を優先するようなところがありました。それが悪いわけではないのですが、自分は営業設計の立場で働いていて外構も含めて図面を描くのですが、その通りに家が建つことがほとんどありませんでした。雇っていただいている会社に文句を言うくらいなら、理想の家づくりをするために独立しよう、となったわけです。
予算は土地で調整する
ウエダ:建築資材が高騰しているのでどうしても外構が削られてしまうという話をよく聞くのですが、そのあたりはどのように進められているのでしょうか?
藤岡社長:基本的に外構予算を削るようなことはしません。うちは最初に予算書をしっかり作り込んでからスタートしてその通りに進めていきます。
あとはご相談にいらっしゃるお施主さんは基本的に土地が無い方が多いので、土地探しから一緒に行っております。例えば総予算が5,000万円であれば建築の総工費を引いた残りで土地を探しましょう、と。土地で予算を調整して建築の費用には手を付けないようにしています。
ウエダ:土地と建築を分けるのではなくて、全部ひっくるめて予算として考えるということですね。
藤岡社長:ファイナンシャルプランナーさんにも入ってもらって資金計画と上限額をしっかり決めるので、ちゃんとその中でやりくりできるように考えています。
どうしても予算を削りたいときは、お施主さんにも家づくりに参加してもらっています。ウッドデッキや外部木部の塗装、中には板張りの外壁を施工してもらったこともありますよ。
いずれにしても外構が決まらないと家が決まりませんから。外構が無い家は服を着ていないようなものです。
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まずは一本の木から始める
ウエダ:これから外構に取組みたいと思ったら、どういった形で知識を身につけると良いでしょうか?
藤岡社長:パートナーとなる外構屋さんを見つけて一緒にやっていくことが大事じゃないでしょうか?細かい知識は外構屋さんが持っているはずなので、一緒にやりながら覚えていくのが良いと思います。
そのうえで、まずは1本の木を植えることから始めてはどうでしょうか?
ホームセンターでも良いのでお施主さんと一緒に木を選んで植える。この一緒に選ぶというのが重要だと思っています。
ウエダ:一緒に選んだ木を植えてもらうことで、より家に愛着を持ってもらえるということでしょうか?
藤岡社長:そうですね。
それに工務店さんも植栽を気にかけるようになると思うんですよね。そこからお施主さんとのコミュニケーションも生まれてくると思います。
それから1本植えたら次は2本、3本と増やしていったり、植栽に合う外構のデザインを考えたりと、少しずつ広がってくると思います。
ウエダ:まずは小さい範囲から始めてみるということですね。
藤岡社長:外構もそうですけど、断熱とか気密とか、そういったところを疎かにしていると淘汰されていってしまう時代だと思います。自分も情報が中々仕入れられずに「今はこんな風になっているのか」と驚くこともあります。
生き残りが厳しくなってきているが「良い家」を作りたいという意欲を持ってこれからもやっていきたいと思います。
ウエダ:ありがとうございました。
編集後記
コスパ、タイパが叫ばれる中で、お施主様一人ひとりにじっくり向き合って家づくりを進められている藤岡社長。
その根底にあるものは「良い家を作りたい」という情熱でした。
そうして情熱を傾けた建築が社長の考え方に共感する顧客を呼び、またこだわりの詰まった家が建つという好循環を生んでいます。
家に関わるすべての要素が良い家につながっていると考えるからこそ、外構も植栽選びから自分で携わって作り込んでいく。
そのぶれない軸が「こなから建築工房」というブランドを形作っているのだと感じました。
そして最後に語っていただいた「1本の木」の話。
試行錯誤しながら自社の「型」を作っていくことが大事なのだと思いました。
こなから建築工房さんでは周りの風景を取り入れて窓からの景色を作る「借景」を積極的に活用されています。
全てを作り込むのではなく、周辺環境を活かすことで自然を感じる住まいづくりに取組まれているのです。
「良い家を作ろうとする意欲のある工務店さんが増えれば、街並みはもっと変わると思います」と藤岡社長は言います。
一つひとつの家の外構が連なることで街の景色を作っていく。
緑豊かで自然を感じる街並みが増えることを、私も期待したいと思います。
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■取材協力
こなから建築工房株式会社
埼玉県所沢市下安松870-3
https://www.konakarakenchiku.com/