マキとマミ

マキとマミ~上司が衰退ジャンルのオタ仲間だった話~
町田粥・KADOKAWA MFCジーンピクシブシリーズ
全4巻・完結済
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こちらWEB発祥なので、数話読むことが出来ます。
https://comic.pixiv.net/works/3579
冒頭1話など試し読みしていただいて、どんな感じかなー、て掴んで頂くと分かりやすいかもですね。
副題がすべてを物語っているのですが、会社の上司が同じジャンルのオタクだった、という話し出しの作品。
「ヲタクに恋は難しい」
などもオフィス舞台のオタク仲間ものですし似た傾向の作品になると思うんですが、こちらは年の差あり、女子と女子、読み専と作り手、上司と部下、というところで、テンションはおとなしめ…いや温度感は結構高いんですが、きゃあきゃあ言うタイプの画面ではないと言うと伝わりますでしょうか。「動物のお医者さん」と似た感じ…大真面目な顔して面白い話してる、って漫画なんですよね。あとお互いがちゃんと礼儀正しい距離感で付き合っているのがすごく安心出来るというか。落ち着いて読めるじっくり型オタクコミックです。
全4巻、つい最近に完結となりました。わーーーお疲れ様でした!めっちゃ面白かったです!(ファンレター)

上司にランチmtgに呼び出され、何かヘマでもしちゃったかしら…とハラハラしていた主人公Aの「マミ」ちゃんは、主人公Bの「マキ」さんに
「あなたと同じ(ジャンルのオタク)グッズを自分も持っている」
と、キリスト教の「イクトゥス」みたいな確認をされてめっちゃ仲良くなります。これダブル主人公スタイルの漫画って認識で合ってると思うんですけれど、違ったとしてもそのまま話進めますね!(強気)
まわりには二人が仲良くなったことはバレるんですが、なんで仲良くなったかは知られていなくて、特にマキさんはクールで近寄りがたいと思われている人ということもあって
「あの二人になんの共通点が…?」
てすごい不思議がられるんですけれど、そこ絡みで全然まったくややこしい展開を混ぜてこなくてオタク話題に注力した作品となっておりまして、べらぼうに好感が持てます。めんどくさい展開とかこの作品にいらないからね!

よくよくお互いのSNSなど確認してみると、実は前から知ってる人だったりするオタクあるある。ふたりは「推しがいる毎日は輝いているけれど、推しの情報更新が無い」毎日を過ごす、「衰退ジャンル」のオタク。既存の情報やわずかな手がかりを元に、推しの諸々をなんとか妄想して日々の渇きをしのいでいます。

ずっと読み専だったマキさんがあまりのジャンルの供給の無さに自分で作品を作るチャレンジを始めたり、マキさんの弟も別ジャンルの濃いオタクだと判明したり、その友達が男性向けの人気サークルだったり…と、
「ええっ…キミにも好きなものが…?」
とお互いを否定せず「楽しいねえ」とひたすら言い合う日常漫画、て感じなんですけれど、それがこんなにも面白い…テンション低めなのになんか一定の温度でずーっと面白い、素敵な作品です。
わたしは幸いにも自分で同人誌描いてたクチですし、いまの仕事もオタクに支えられているような分野のものなんですけれど、そういうのわからない人はこの作品読んで大丈夫かしら…面白いものなのかしら…そもそもわからない人は読まないて部類のものになるのかしら…
彼女らはひたすら好きなものに真摯で、全力でジャンルを応援して、毎日を楽しく生きています。推しがいる・ある生活って羨ましいですよね。そういう「よくわからないけどよかったねえ」って楽しみ方をするんでもいいんじゃないかな。あの、子供さんが好きなもの、同じ熱量では楽しめないけれど、話はなんかわかるし、子供が楽しいならわたしも楽しい、みたいな親御さん気分。その気持ちで眺めたらいいのかもしれない。もしよかったらこれを機にちょっと乙女ゲーとかしてみてくださってもいいんですよ…?同人イベント…はコロナの影響でめっきり減ってしまいましたが、ちょこちょこ開催もされてきましたのでぜひぜひ。あっピクシブなら気軽に読めますし!

…と、オタクになり推しが出来ると、ついつい
「あの、これ面白いよ?」
「わからなかったらなんでも聞いて?」
と、「自分の感じた面白さを人にもちょっと感じてもらえたらいいなあ」て気持ちが膨らんできます。言ってみるとここのnoteだってほんとそれが発端で、「この本面白かったよ」「この作家さんは前にはこんなの描いててね?」ってなもんです。面白いものって紹介したいし、なんなら一緒にその話が出来たらめちゃくちゃ嬉しい、って思っちゃうんですよね。
この単行本内にある
「都合のよい同伴相手を見つけて活気づくオタク」
がもうほんとそれ、です。私が教えますから!って。
なんというか、やっぱり「参加するともっと面白いよ!」ってなっちゃうんですよね。踊らにゃそんそん、てやつです。

オタク趣味って、こう、興味ない人からは
「大人になってもそんな遊びしてるの?お金使ってまで??」
って言われがちなんですよね。最近は相当緩和していると聞くんですが、それでもどうしても敬遠する人も多いですし。
作品内で「幼い日のマキさんを救いましょう!」ってマミちゃんが叫ぶところがあるんですけれど、大人になるとそこがいいですよね。かつての夢や欲望を思いのまま実現出来る…駄菓子の箱買いとかアニメ見て徹夜とか…(そういうレベルのアレです)
でもねえ、日常ってそういうちょっとの「やってみたかったんだこれ」ってものの集合だと思うんですよ。バケツサイズのプリン食べてみたかったとか、電車で遠出してみたかったんだとか、ピラミッド生で見てみたいとか。それがどんなものであれ、自分のちょっとした行動力とお財布事情で解決出来るなら飛び込んで見るのが吉じゃないでしょうか。ただし人様へのご迷惑だけは気をつけてね!

一巻の巻末のあとがき漫画で、作者さんが
「ずっとひとりで絵を描いていました」
と描かれてるんですね。で、マキさんの悲哀はご自身の経験、マミちゃんは自身の思う救いであると。ああーそれでこんなに楽しく優しい話なんだなーって、明るいコメディ作品なのにちょっと心にクるものがありました。
自分を満たすって大事なことです。
それが買い物だったり創作だったりおでかけだったりおしゃべりだったり読書だったり…などなどは人それぞれだと思うんですが、積極的に自分にもまわりにも優しく肯定の日々を送れるとほんと世界平和なんて目の前ですよね。そうもいかないのが世の中なんでしょうけれど…

中身はちょっと特殊用語だのも多いですが、絵柄も親しみやすく丁寧な画面でイヤミの無い作品だと思いますので、なにか好きなものがある人はぜひぜひ読んでみていただきたい。同じジャンルのお友達がめっちゃ欲しくなる漫画です。
推し作品も人と人とも、出会いは運命なので必ず出会えるものではなかったりするのですが、無事出会えたら大切にしないとね…!

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進藤ウニ
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