見出し画像

ひとりじゃない今日のこと

 拝啓我が友。本日は遊びに誘っていただき誠にありがとうございます。まずはここにて、感謝を。

 本日は2024年10/20日(日)、天気は晴れと快晴の狭間。今日は友に誘われ東京内の中央都、新宿へ赴きました。なぜ新宿に参ることになったのかというと、友が「落語を見てみたい」と仰ったからですね。その友は最近コミュニケーションの論理の本を読んだらしく、なぜ18歳になってそのような本を読んだのか尋ねると、どうやら大学内で友達が出来ないことにコンプレックスを抱いていらっしゃったからだそうです。大学内で親密な関係をなかなか築けないと本人は仰いますが、私は不思議に思いました。それと同時に少しの同情と納得の気持ちを抱きました。彼は欠点がほぼないんですよ。人格も優しく人に話しかけれないという訳でもなく、頭も良いというまさしく優等生な方です。真面目であるにも関わらず、人としてやっていくために必要な無責任な自信も持ち合わせているんですよね。じゃあ欠点があるのかというと、食事の時に少し目立つものがあります。しかしこれは私たち日本人の価値観なのです。というのも彼は中国に生まれて数年育てられ、その後日本に渡り国籍を得た人で、幼い頃から大陸の文化で以て教育されています。そういうわけで食べ方が日本人から見て違うのです。たまに音を立てて食べる以外は基本的には変わりませんが、無料の部分で如実に違いが出ます。彼は食べきれないほどのドエライ量のトッピングを普通にするんですよ。愛知にいる時に豊田イオンのフードコートのうどんを食べたことを思い出しますが、我々純日本人は無料のものも適度な量に控えよー、となるわけですが、彼は天かすをブワァ〜ってやるんですね。そういうわけで、私は彼を小学校の頃から見ていましたが、少し違いがあるのか友達も多いわけではありませんでしたね。しかし一人、彼に関わる人がいたんですよね。その人は我が友と張るくらい頭が良かったので会話レベルが合致したのだと思いますが、しかしその人は中学受験で東海高校に行ってしまったので、そういった人も離れてしまったんですね。隙自語ですが私って小学校までは頭では上から3、4番目には入ってたのですよ。私の上の人等が彼らなのですけれど。我が友はコミュ障ではありません。十何年も日本にいるので日本語はペラペラどころの話ではないんですよ。話は戻って、そういう経験があるからこそ話す能力についての本を読んだのかなぁと勝手に推測しました。して、彼が読んだコミュニケーション論の本にて「落語こそがコミュニケーション論理の抽出体であり会話力が発揮されている場である。」のような記述がされていたそうです。そういうわけで一週間前に落語を見に行こうと提案され、今日新宿に赴いたわけです。
 
 集合は10時30分。JR新宿駅の中央東改札というところでした。私はメトロを使っていて彼はJRを用いたので離れていたわけですが、噂には聞いていましたよ新宿駅、本当に迷路みたいで迷ってしまって。5分前には駅に着いていたのに集合場所に4分遅れてしまいました。恥ずかしや恥ずかしや。して、新宿をプラプラしようと。我らは散歩族でしてね、受験期でも4時間位歩いてましたので当たり前のように会ったらまずは散歩するんですね。道中にて大学の話とか留学の話とか留年の話とかをして盛り上がりました。時刻は12時20分、昼飯時になり、お好み焼きを食べようと。この際大阪風だとか京風だとか広島風だとかは関係ないのですが、お好み焼きを食べようとした理由は、1ヶ月前にお好み焼きがおあずけになったからですね。私は友と会うのは1ヶ月ぶりで、1ヶ月前は会って何をしたのかというと、昭和記念公園に行こう、と立川に赴いたのですよ。そこの晩御飯にお好み焼きを食べる予定でしたが、17時前頃から豪雨と雷で身動きが取れなくなってしまいましてね、なくなくお好み焼きを諦めたのです。今日はそのリベンジにと食べました。大阪風お好み焼きだったのですが、滅茶苦茶味が濃くてですね、水がなきゃやってられないわけです。して、私たちは店員に話しかけるのは退ける質の者達なので、水を飲まずになんとか食べきったのです。しかし会計時にチラッと見えたのですが、セルフサービスでお取りくださいと書いてあったんですよね。もうね、アホかと。馬鹿かと。後悔してその場を離れました。飲み物を求める我らでしたが新宿には、50年前の人が見たら違法だろとビックリするだろうくらいにドラッグストアが並んでるものですから、直ぐに捕まえてお茶を購入。濃すぎるソースに丁度よいお~いお茶濃茶。強い酸性には強い塩基性をぶつけるようなものです。あ〜らそれでは滴定をメチルオレンジでもフェノールフタレインでも色覚判断できちゃうわ。

 時刻は1時00分。腹も膨れたということで次は新宿御苑に行かないかと彼が。今日は提案されてばかりでみっともない。私は東京に来てから新宿御苑はこれで3回目なのですが、彼は初めてだそうです。私が案内するということで、中に入ろうと思ったのですが日曜なので人も多く中々入れず。学割があるので彼は学生証を見せて学歴自慢をしたかった様子ですが、受付の方は忙しいらしく一瞥もくださいませんでした。可哀想。してパンフレットを抜き取って中へ。入ってまず何をするかと言えば、そうですね、森森で自然を演出している中で場違いに鎮座しているドコモタワーを写真に収めることですね。この建造物、御苑内から見ると明らかに場違いなものですが、都会のビル群に囲まれた人工的な箱庭内の自然であることを強調してくれていて、寧ろ趣があるというものです。日本庭園、ツツジ山、整形式庭園、玉藻池とぐるりと周り、植物園を見た後は閉園の16時まで芝生で寝ました。写真には収めていませんが鬱クワガタもやりました。滅茶苦茶気持ちが良かったですよ新宿御苑の芝生。今日は晴れていたこともあって日が暖かかったので、秦谷美鈴の気持ちも分からなくはないですね。秦谷美鈴も鬱クワガタやってくれ。新宿御苑は四季の変化を御苑内で取り入れていることもあって3回目ながら新しいものも見られて、飽きることなく楽しめました。春夏秋と来たので、冬に来るのも良いでしょう。兼六園の足元くらいには及んでくれることを期待しています。

 閉園して今日の目的の落語座へ。時刻は4時25分。寄席は午前の部と午後の部があるらしく、色々昼に行きたいから午後の部を観ることにしようというと決めていました。現代の価値観しか持てない私でも面白いと思えるのかとか、そもそも席はどうなっているんだとか緊張しながらも寄席に到着し、中に入って周りを見渡すわけです。真ん中には映画館の席のようなものが設置されていて、その左右には畳に座ることのできる席が。一番関わりのなさそうな、前から8列目くらいに座って見始めたわけです。始まりましてまずは前座の方から。正直に言って、思わず声が出るほどにちゃんと笑えるものではないですね。しかし前座の方は一番見習いの立場であるというにも関わらず、とても聞き取りやすくお話をしてくださいました。ですが笑いとは程遠いのです。なんか最前列のアリそうな方がことあるごとに爆笑していましたが、そういったものではないです。しかし面白くてですね、聞きたくなるような、そんな話し方をするのです。すごい技術だと思いましたよ。これが下っ端なのですかと。なんやかんやお話をどんどん聞いていたら私も緊張も解けたのか普通にちゃんとした笑いが出るようになってきてですね、周りの御老人達と楽しく観させていただきました。いつの間にか目の前のカップルの女性が入眠について、最後の小噺までするするときてしまいました。トリを飾る方は千秋楽の10日目らしく、皆さまはそれを目当てに観に来ていたようです。私たちは何もそんなことは知らずに訪れています。その方は最後にどどんと締めくくって、笑いというよりは上手さで話をまとめてましたね。階級が一番上の方ですので、やはり年季を感じるお話の仕方でしたね。65歳くらいの若い方でしたがね。寄席が全て終わって、満足感を得て名残惜しく思いながらもそそくさ退出することにしました。 

 様々な方のお話をお聞きしましたが、目的は落語を楽しむことでもありましたが話し方を分析することですから、新宿駅に戻るさなか二人して考えていました。結論としては、非常にありきたりでつまらないものですが、思わず聞きたくなってしまう彼らの話し方の根源は恐らく、抑揚と恥じらいのなさ。思うに我々はなにか人に話すとき、この話をすることで自身の名誉が傷つけられるのではないか、恥ずかしいことを言っていないかなど様々考えた結果、出力されるものがあの「どこを強調すればよいのか分からない、どこで話をまとめ始めればよいのか分からない、聞き手のおかげでかろうじて成り立ってしまう話」なのでしょう。これらの技術は彼らが研鑽に研鑽を重ねた故に成し遂げられる芸当で且つ、寄席という場所においてのみ輝く話し方なのであって、我々が真似できるものでも日常で使えるものでもはないですが、どうも抑揚は大事であることと、自信を持って話すこと、これが一番重要だと思いますが、話の区切りを作ることを学びました。話の区切りというのは、「ここまで理解してくれてよね」というのを間を使って訴えかける技法です。会話とは、これによって今までの情報の相互共有がされたあと、なにかが起こるだろうとかなにか頓珍漢なことを言うだろうとかなにか皮肉めいたことを言うだろうとか、そういった心構えを聞き手に自然と強要し、そして話者が私たちの心積もりその通りに期待を裏切らず話すというその、期待と回答の連続なのです。こうした分析もどきを終え、寄席の総評として、"おもろい"ものを観た、というよりは、歴史と人間の生き様の雅を垣間見た、と評するのが適切だと思いました。民藝のような心地よさを感じました。縁があったらまた来たいですね。
 
 そうしているうちに時刻は8時45分。完全に晩飯時を過ぎましたね。して晩御飯はどうするのかと友と迷っていたら、そういえば寄席で時そばを見たなと。ここではアレンジされていてうどんだったんですけれどもね。そういうわけではなまるうどんにうどんを食べに行こうと。安直〜。私はおろしの乗っかったうどんを、彼は薄着だったということもあり相当夜は寒いらしく温かいうどんを注文していました。うどんというわけでですね、また見られるんですよ。彼の『天かすもりもりトッピング』を。寒さの染みる夜に温かいうどんは格別でしたねぇ。私は最近、「国民が貧乏になっていく様を見るのはいやだ」と思ってうどん屋を避けていたのですよ。こういう機会でもないと外でうどんなんて食べないですからね。本当にいい機会を貰いました。

 私は家に帰り、風呂に入った後にこれを書いているというわけです。とても充実した一日でしたね。今でも関わってくださる友がいて幸せですよ本当に。お好み焼きは美味しかった、新宿御苑は美しかった、落語は楽しめた、話すコツを改めて感じた、美味いうどんを頬張った。最高の日曜ですよ。今日私に与えてくださった友を含め全ての人と物事に精一杯の感謝を。

    ご読了ありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?