創作アルバイト募集5
■給与
時給:2,500円(深夜手当込)
※長期勤務ボーナスあり
■勤務地
銀霧荘(ぎんむそう)
(霧谷町座馬5-19-1)
■交通
最寄り駅:座馬谷駅から徒歩8分
※深夜は送迎車での送迎あり
■時間
シフト制(21:30〜翌5:30)
■業務内容
・深夜にご到着されるお客様への部屋案内および簡単な接客
・宿泊エリアの見回りと、夜間静寂の確認作業
・「古い記録」保管庫の確認と定期的な空調チェック
・特定の時間帯に「月光の間」と呼ばれる部屋の窓を開閉
・特定エリアの照明調整および手入れ作業
■待遇
・宿泊客用大浴場を業務後に利用可
・夜勤専用の控室・軽食提供あり
・送迎車による駅送迎サービス
・専用制服貸与
■採用対象者
・20歳以上で、夜間勤務に抵抗のない方
・静かな環境が好きで、ひとりでの巡回が苦でない方
・淡々とした業務をこなせる方、好奇心が強すぎない方
■注意事項
・巡回中、他のお客様には極力お声掛けしないようにしてください
・「月光の間」の窓は必ず指定の時間にだけ開閉すること
・「古い記録」保管庫に入室する際、必ず一礼を行い、必要以上に滞在しないでください
・お客様以外の音がしても、決してその音の方向へ進まないようにしてください
・勤務中、古びた装飾品や備品が動かないか確認する必要はありません
30代男性の体験談
あの日のことは、まだ頭から離れない。30代も半ばに差し掛かり、なかなか見つからない安定収入に悩んでいたとき、ふと見つけた銀霧荘(ぎんむそう)での夜勤バイト。時給2,500円という高給、夜勤手当て込み、シフト制で自由度が高いという条件は、一見して怪しさが漂っていたが、僕にはその条件があまりにも魅力的に映った。
面接も簡単で、年齢確認と「夜勤に抵抗はないか」という質問があっただけで、その場で採用が決まった。銀霧荘自体は、霧谷町の山奥にひっそりと佇んでいる古びた旅館で、昼間に見ても少し不気味な雰囲気が漂っていた。入ってすぐに感じたのは、空気の重さ、そして独特のかび臭さ。この場所には、何か人の影が薄れていくような異様な静寂が漂っている。
初日の夜は緊張でいっぱいだった。21時半から始まるシフトに合わせて控室で着替えを済ませ、少し気を落ち着かせようとしたが、控室の壁に並んだ黒ずんだ写真が視界に入った。古い白黒写真で、どれも笑顔の宿泊客と思しき人々の姿が写っているが、どこか不気味さがにじんでいた。視線が離せない自分に驚きつつ、仕事を始めることにした。
仕事は主に宿泊エリアの見回りと静寂であることの確認、そして「月光の間」という特定の部屋での窓の開閉。月光の間については、必ず指定の時間にだけ窓を開けるよう指示されており、時間を間違えるといけないと念を押された。さらに、「古い記録」保管庫という名前の部屋に定期的に入り、空調チェックを行うのだが、入る際には必ず一礼し、滞在は最小限にすること、と厳しく言われた。
最初のうちは、業務のシンプルさに内心ほっとしていたが、何度かの見回りのうちに、不思議な現象がいくつも起こり始めた。廊下を巡回していると、どこからともなく微かな声が聞こえてくる。まるで誰かが囁くような、不明瞭な音。しかし、そこには誰もいない。初日は「風の音だろう」と自分に言い聞かせ、なるべく考えないようにしていた。
3日目の夜、いつものように「月光の間」で指定の時間に窓を開けていたとき、ふと何かの気配を感じた。背後を振り返ると、部屋の隅に置かれた鏡台の中に、自分以外の何かが映っているように感じた。しかし、見直してもそこには何も映っていない。視線を外そうとするたびに、鏡の中にちらりと影がよぎる。それはあまりにも一瞬の出来事で、確証が持てないまま業務を続けるしかなかった。
「古い記録」保管庫に入るたび、気味の悪さが増していった。その部屋の壁には無数の古びた書物が並び、記録と呼ばれるものが整然と保管されている。しかし、棚の隙間から覗くその記録の一部には、自分が見るべきではない何かが含まれていると直感した。時折、記録の間に古い写真が挟まれているのが見えた。それは、控室の壁にあったものと同じような、どこか不自然な笑顔を浮かべた人物の写真。背筋が凍る思いがして、僕は保管庫から急いで退出した。
その後も奇妙な出来事は続いたが、決定的だったのは「月光の間」での出来事だった。窓を閉めようとした瞬間、耳元で「まだ終わっていない」という女性の囁き声がはっきりと聞こえた。その声は、冷たく、まるで恨みを抱えたような重みがあった。振り返ると、そこには誰もいない。それでも、その声は僕の耳にこびりついて離れず、次の日、僕は初めてバイトを休んだ。
銀霧荘でのバイトを辞めてからも、あの女性の声は何度も夢に出てくるようになった。日常生活にも支障をきたし、眠れない日々が続いたため、精神科に通うことになった。
負った傷病:
「慢性不眠症」と「軽度の心的外傷後ストレス障害(PTSD)」