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住宅展示場 清掃・補充スタッフ募集


■給与

時給:2,000円(夜間手当込み)

■勤務地

市内 粗ヶ丘住宅展示場 A棟
粗ヶ丘市 桜通り 2-5-12

■交通

最寄り駅:粗ヶ丘駅から徒歩8分

■時間

21:30〜翌1:00(週2回勤務)

■業務内容

・住宅展示場内の清掃と展示品の整頓
・翌日来場者用のパンフレットやチラシの補充
・各部屋の照明や窓の施錠チェック
・稀に、過去のアンケート記入用紙の整理・保管(年に1〜2回程度)

■待遇

・清掃業務に必要な備品・制服一式支給
・深夜帰宅時にタクシー代を一部支給
・3か月勤務後、ささやかな感謝ギフトを贈呈

■採用対象者

・静かな環境で丁寧に作業できる方
・夜間の建物内での作業に抵抗がない方
・観察力に自信のある方

■注意事項

・展示場内の清掃時、配置物や家具の移動はご遠慮ください
・他のスタッフが退出した後の清掃となりますので、施錠確認を必ず行ってください
・まれに展示場の一角で空調音が変化したり、何かの気配を感じることがありますが、音響システムの影響であるためご安心ください




20代 男性の体験談

このバイトを見つけたのは、静かにできる仕事を探していた頃だった。時給は高くないが、夜に人が少ない空間での作業は自分に向いていると思った。勤務地は粗ヶ丘住宅展示場。最寄り駅から徒歩で行けるし、夜間のタクシー代支給もある。条件は悪くない。面接もあっさり通り、初出勤が決まった。

初日、案内されたのはA棟。昼間は家族連れがモデルハウスを見学する賑やかな展示場だが、夜は見違えるように静まり返っている。夜の21:30、他のスタッフが帰ったあと、俺は一人で広いモデルハウスに残された。最初は、展示品の埃を払ったり、パンフレットを並べたりと、やることは普通の清掃作業だった。しかし、仕事の説明で「施錠確認は必ず行うこと」「配置物には触れないように」という強い注意を受け、何か引っかかるものがあった。

一通りの作業を終えたあと、最後に各部屋を回り施錠の確認をする。戸締りをしている最中、リビングのソファの前に置かれたカーペットに不自然なシワがあった。展示場だから小さな違和感にも気を配るべきだと思い直し、カーペットのシワを直そうとした。しかし、ふと視線を感じて、背後の窓を見ると、カーテンがわずかに揺れていた。夜の展示場は密閉されていて風が入るわけもないのに、カーテンが動いているのが不気味だったが、「空調のせいか」と自分に言い聞かせ、無理に気にしないことにした。

その夜から、徐々に奇妙なことが増えていった。ある晩、地下の収納スペースで古びたアンケート用紙を整理していたとき、手にした用紙の一部に、見覚えのある文字が書かれているのに気がついた。筆跡は俺が書いたものそっくりだった。「…助けて」と。見間違いだろうと思ったが、手にしたアンケート用紙の裏をめくると、今度はかすれたような文字で「ここにいる」というメッセージが浮かび上がっていた。気味が悪くなり、足早にその場を離れた。

数日後の夜、業務中にリビングの照明が一瞬点滅した。驚いてスイッチを確認しにいくと、消したはずの部屋の一角から、また微かな音が聞こえてきた。それは空調音ではなかった。はっきりとは聞き取れなかったが、何かが囁くような音で、まるで誰かが薄暗闇の中で呼吸をしているように感じた。リビングを後にしようとしたとき、ガラスのディスプレイに映った自分の背後に、ぼんやりとした影が映り込んでいるのを見た。振り返っても誰もいない。展示場は無人のはずなのに、誰かの存在がすぐそばに感じられ、鳥肌が立った。

さらに奇妙だったのは、ある晩、物音が聞こえてきたのだ。空調音だと思ったが、違った。明らかに足音のようで、しかも断続的に「トン…トン…」とゆっくりと響いていた。足音はA棟の奥から徐々に近づいてくるように感じた。心臓が跳ね上がり、誰かが本当に近づいてきているのではないかという恐怖に駆られた。咄嗟に階段を駆け下りたが、背後からはまだ音が聞こえ、逃げ場がないように思えた。そのときはどうにか玄関から出たが、そこからは足がすくんで一歩も動けなかった。

最終的に、辞める決意をしたのは夢のせいだ。ある夜、いつもと変わらず仕事をして帰宅後、夢の中で展示場に立っている自分を見た。展示場は夜の闇に包まれて静まり返っているが、そこには俺の他に、顔のない人影がいくつも立っていた。彼らはじっと俺を見つめ、何も言わずに近づいてくる。どうしようもなく逃げ場がない感覚に囚われ、目が覚めてもその恐怖が消えない。日中も展示場で見た幻影がちらつき、現実と夢が混ざり合うような感覚に襲われるようになった。


負った傷病:
慢性的な不眠症と幻覚症状。家にいても不意に足音が聞こえたり、誰かの視線を感じたりすることが続き、精神的に追い詰められている。

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