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職員の離職率が高い医療機関の特徴
医療業界への就職・転職は、資格があることによって、職種によっては決まりやすいのかもしれません。しかし、離職率も他の業界よりは高いです。今回は、医療業界での勤務歴を通して、特に離職率の高い医療機関の特徴についてご紹介いたします。
中途採用者の経験が活かせない環境
採用時の面接では、「今までの経験を、うちで活かして欲しい」的なことを言われて採用されます。しかし、実際に勤務し始めると、転職歴のない上司(管理職)や先輩の意見しか通らない環境は、中途採用者が定着しません。
現状維持を優先し、新しいことを取り入れない
他の医療機関での経験や技術は、他を経験していない人達には邪魔です。その理由を挙げてみます。
①転職歴がなく、勤務歴が長い職員は、新しいことを取り入れたくない。(今さら覚えたくない)
②中途採用者の経験を活かすと、転職歴がなく、勤務歴が長い職員は、自分達の立場が弱くなると考える。
③中途採用者が経験を活かして、医療の質が上がると、今までより仕事が増えてしまう。
以上のような理由から、改革・改善を嫌い、「いかにも」もっともらしい理由をつけて、転職歴のない管理職は、やらなくていい方向に持っていきます。こうやって、中途採用者が「宝の持ち腐れ」的に経験を発揮できないまま勤務することになります。
世間の常識より管理職の常識で運営される
これは、どこでも多少は当てはまることかもしれません。しかし、離職率の高さに繋がる場合は、さらに特徴があります。以下が具体例です。
①常識レベルの勤務体制がずっと整わない
具体例には、休みの取得やオンコール(夜間の緊急呼び出し)時の手当です。最初から制度が整えられないまま何年も経過すると、「他の医療機関では当たり前の体制が整っていない」ことを指摘しても、「今までこれでやれてきた」と、改善しようとしません。
ミスに繋がる勤務体制である意識の欠如や、オンコールには携わらない管理職の意見が強いなど、閉鎖的な考え方が原因です。
②職種による線引きが曖昧
これは、本業以外の業務を、当然のようにさせられる状況が常態化していることを意味します。グレー過ぎて際どい仕事をさせられることも…
最大の原因は、「人手不足」。これを解消しないまま、業務も減らないため、このような状況が生まれます。
③監査など外部からの指摘・患者からの苦情でしか改善に至らない
これは、管理職が、職員の意見に耳を傾けない傾向が強いことを意味します。ミスが起こりやすい状況など、事前に想定できて管理職に報告しても、「何も問題が起こっていないから考える必要はない」など、管理職からリスク管理の甘い回答が返ってきます。この考えのもとで外来を行うと、ミスを防いでくれる仕事ができる人に業務が集中し、疲弊していきます。
戦力面の弱さ
人手不足以外にも、特徴的な戦力の弱さがあります。それは、「1人で業務を行えないままの職員が多い」ことです。これは、引き継ぎや教育期間が終わっても、1人でできないことを意味します。
この状況が常態化すると、必ず誰か他の職員が手を止めてサポートすることになり、他の業務も中断になります。また、常態化することで、緊張感のなさから私語が多くなります。しかも、業務が終わって日を改めても、業務を1人で行えないまま…
このように、常にサポートする側が固定され、疲弊して愛想良く働けなくなり、仕事ができる人から離職していく構図が完成するんです。
まとめ
離職率は、いわゆる「古い価値観」を変えようとしない職場で高い傾向にあります。口では「患者ファースト」「助け合い」と説明しながら、管理職が現場には目を向けていない環境です。「助ける側」が固定している状況は、助け合いではなく、依存関係です。自立して1人で業務をこなす、自立し合った状態で助け合う、こういった基本的な体制が欠けていると、有能な職員は疲弊して辞めていきます。
これから、医療業界で就職・転職を考えている皆さんには、心身ともに搾取されない環境を選んでいただきたいと願っています。