踊るかつお節
うどんの湯気がふわりと昇り
白い器の中に広がるお出汁の香り
箸でかき混ぜる湯気の向こうから
母の声、「これを入れると美味しいんだよ」
削り節のひとつまみ
指先からそっとお出汁の上に
ふわりと降り立つと、不思議なこと
それはまるで風を受ける羽のように
ゆらり、ひらりと揺れ始めた
「踊っているみたいだね」
心の中で呟いたその瞬間
削り節の舞いはますます華やかに
お出汁の波に乗り、回り、跳ねる
一口すすれば、踊りの余韻が口いっぱい
旨みの調べが広がっていく
削り節が踊るたびに
うどんが少しずつ特別になっていく
踊るかつお節と湯気の向こう
一椀のうどんに宿る小さな幸せ
今日もまた、心にそっと溶け込んでいく