見出し画像

Heel_plus_plus始動

4月某日。銀座。
一つの試みがなされた。

春から初夏への香りを運ぶ花水木が満開のある日、いつもお世話になっているてつじやの哲司さんから至極丁寧な連絡を頂戴した。
「heel_plus_plusの調査にご協力いただけませんか?」

え。ヒールプラスプラスとはなんぞや。
インソール?にしてはヒールって言ってるし、踵に何か特別な加工を?(興味津々)
ということで、もちろん即決。
「ぜひお願いします!」
予定を合わせていただき、現地へ。
お店に行くのに道を間違えて時間ギリギリになったのはご愛嬌。

そもそもなぜ。私が即答したのか。
巷で売られている靴たちは、当然のことながら目的別に分かれているのは周知の通りだ。
しかし私はどういうわけか、靴を選ぶ時店員さんに聞いて購入して成功した試しがないという不運を不本意ながら背負っている。
それなら勉強しようと始めたまでは良かったが。
靴のことを勉強すればするほど、インソールの勉強をすればするほど。
自分に合う靴って何?という謎が深まるばかりだ。

企業も研究を重ねて、外反母趾対策、足底腱膜炎対策、膝痛・腰痛対策などなどの新製品を開発している。
にも関わらず、整形外科にはその症状の患者さんは減るどころかどんどん増え続けている。
外反母趾だけとっても、1984年から2017年の33年間で約8倍に増加している。

【参考】厚生労働省令和2年患者調査傷病分類編(傷病別年次推移表)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/10syoubyo/dl/r02syobyo.pdf

整形外科疾患対策の靴を作っていて、各々自分の状況に合わせて靴を購入して履いているはず。
にもかかわらず。
なぜ増え続けているのか。

おそらく、
靴業界には靴業界の。
医療業界には医療業界の。
一般人には一般人の。
それぞれ言い分があると考えるのは割と容易なことだ。
ただそれらの内容を把握して、擦り合わせることをしているのは誰なのか。
どの業界なのか。
高齢化や生活習慣を理由にして、どこも関わろうとしていないのではないのか。

それならば。
靴業界の外側から。
医療業界の端っこから。
一般人の中から。
小さいけれど一石投じてみたい。
足や靴を気にしているけれど無視してるサイレントマジョリティに引っ掛かってほしい。
そう思ったからこその、今回の即答だった。

「足趾の安定」

早速靴を診ていただき。
「今回のHeel_plus_plusの目的は、『足趾の安定』なんです」
とご説明頂いた。

足趾の安定。
正直これまでの人生の中で、私は聞いたことがなかった。
浮指は聞いたことがある。
その原因はアーチの崩れ(だけではないが大まか)にあるということもわかってはいる。
足部の安定も聞いたことがある。
むしろ、これまではまさにそこを狙ってきたはずだ。
足部が安定すれば足趾は使えるはずだと。足趾が使えれば蹴り出しができるから動きやすくなるはずだと。
足趾は運動に働くものという認識だった。
その認識のままに靴を選び、インソールを処方してきたはずで、それである程度の解決を見ていた。
そう。あくまで「ある程度」だ。
そこにずっと言い訳を続けていた。
「靴もインソールも完璧ではない。誰にでも合って誰にも合わない中から探すのだから」
もちろんそうだろう。
だが、「ある程度」の時点で完璧からは程遠いにも関わらず、靴はそのまま「問題ないものとする」としていたのだ。
高齢化や生活習慣の変化は問題になっても、靴自体はまるで問題になっていない。
隠れてしまっているのだ。
最近問題が表面化したのは、ハイヒールだ。
ただ「履くのを強制されるの許せん!」という論点だ。
それでも、ヒールが問題に上がってきただけでも良いのかもしれない。
これがきっかけで、実は靴自体が問題を孕んでいるのではと疑って欲しい。
何故なら、ヒールが快適に履けていれば俎上に載せられることもなかったはずだからだ。

話を戻そう。足趾の安定だ。
足趾はご存知の通り、関節が多い。
関節が多いということは、動作重視のはずで、安定には向かないはずだ。
しかし。足底部には強靭且つしなやかな足部内在筋群が存在する。
あの狭い範囲に分厚い4層構造。
そして特徴的な感覚受容器の配置。
特に足趾と前足部は感覚受容器の閾値が低い。要は敏感なのだ。

【参考】足底部位間における動的触覚の閾値について

ということは。
立位姿勢の段階で前足部に刺激が入らないもしくは少ない状態というのは、あらゆるパフォーマンスに影響するということは想像に難くない。
にも関わらず、市販の靴自体の傾きがなぜか前足部が浮いている状態にある。
それならば、そのギャップを適度に埋める加工をしてみようということになった。
ということだ。

元はコレ⤴︎
Heel _plus_plus 加工済⤴︎

お分かり頂けるだろうか。

前足部の接地の位置が変わっている。
これにより、荷重が足部全体に掛かり且つ重心位置が踵骨前方から外果前方の間に収まることになる。

いざ、装着

加工後履いてみると。
・足全体での接地
・股関節荷重位の変化
・骨盤中間位保持が可能
・脊柱の自然なアライメント
・前方推進力の増加
・足趾把持力向上
ざっと上げただけでも、これだけ自覚できる。

上半身の写真で一目瞭然。

姿勢の変化

………ヤバい。だいぶヤバい。
元々ない語彙力が一気に低下するくらいには衝撃を受けた。
ここまでとは予想していなかった。

そして。ここまで一気に変化するということは。
お釣りが出るということで。
ハイ。
翌朝まんまと全体的なうっすら筋肉痛に襲われたのは想定の範囲内だった。

令和6年4月某日。
靴に対するひとつの試みがなされた。
その後の経過も記録を残していくこととする。

いいなと思ったら応援しよう!