
~交響(ひび)く哀れが窮屈だった…~『夢時代』より冒頭抜粋
~交響(ひび)く哀れが窮屈だった…~
思春(ししゅん)の淡気(あわき)を脆(よわ)く薄める〝無効〟を呈(しめ)せた孤独の諸刃(やいば)は、片仮名ばかりで夜半(よわ)を留(とど)めぬ未想(みそう)の宙夜(ちゅうや)を廻して澄んで、幻(ゆめ)と孤欲(こよく)の無謀の主観(あるじ)は無断に窄める小春(こはる)を識(し)った…。几帳を呈した柔裸(やわら)の男性(おとこ)は一女(おんな)の背に発(た)ち藪睨みをして、「儲かる話」に直ぐさま跳び付く無造の八頭(おろち)は驚きながらも、小春の日和に人間(ひと)へ懐かぬ思想を携え敢え無く死んだ。文言(ことば)の限りを人物(もの)に観る上〝無効の景色〟は幾多にも割れ、「活性して行く物見の傘(さん)」には休む間も無く奥手を出せた。
孤高に鈍(くも)れる旧(ふる)びた理性(はどめ)の温度は未(いま)でも、見様(みよう)に見真似る〝神秘(ふしぎ)〟の開花が宙(そら)を見上げる愚図を描(か)き付け、一幻(ゆめ)の淡手(あわで)を濁す奴等を自然(あるじ)に見掛けて虚構を撓(たわ)める、神秘(ふしぎ)と孤独の粋(いき)の遊離を精神(こころ)に見せ掛け人物(もの)に這入った。孤独の進度(しんど)を肯定しながら幻覚(ゆめ)の景色は幌々(ほろほろ)零れて、無垢の定形(かたち)を無残に窄める未活(みかつ)の勇気に帰還して活き、孤独に射止めた一女(おんな)の勝手は永久(とわ)に気取れる悪魔を識(し)った。個録(ころく)を射止めた無断の経過(ながれ)は素人仕立ての欠伸を頬張り、蒼い集成(シグマ)を野平(のっぺ)り誇れる不義の優雅を女性(おんな)に得ながら、斯々然々(かくかくしかじか)…、幻想(ゆめ)の小躍(おどり)は現行(いま)に続ける不装(ふそう)の主観(あるじ)が孤高を聴いた…。厚い空壁(かべ)から無垢が欲(よが)れる不装(ふそう)の扉は未(いま)でも発(た)てずに、素人仕立ての談話の姿を孤独の所以(ありか)と共に置き去り、明日(あす)の余力(ちから)に風刺を捕えて在った。
女性(おんな)の独理(ドグマ)が無知を外せる浮浪の小敗地(アジト)は未(いま)でも失(き)えずに、孤独の辛(つら)さを優雅に吟味(あじ)わう不活(ふかつ)の所以(ありか)を大事に携え、橙色(おれんじいろ)した無題の所以(ありか)は利己に馴らせる無相(むそう)を識(し)った。事始(こと)の歪曲(まがり)が不装(ふそう)を問ううち幻(ゆめ)の柔手(やわで)は虚構を毛嫌え、俺の孤独をとぼとぼ失くせる過去の自主(あるじ)と結託して居た…。―――女性(おんな)の貌(かお)には慈しみに似た〝不倫〟を愛する〝遊女〟が成り立ち、神秘(ふしぎ)と極意が経過(とき)を隔てる幻想(ゆめ)の主観(あるじ)は文句(ことば)を懐かせ、男性(おとこ)を皆殺(ころ)せる不夜の小敗地(アジト)を事毎幻見(ゆめみ)て呆(ぼ)んやりして居た。「不倫」を透せる〝懐かしみ〟に観た不実の主観(あるじ)は、一女(おんな)の居場所を黙々相(あい)せる「不倫を有した律儀な長(ちょう)」との五月蠅(あわ)いて低率(おきて)に悶々する内、孤独の猶予を俗世(このよ)に置けない不利の動作を後目で観ながら、開拓出来ない神秘(ふしぎ)の孤独を夢限(むげん)に射止める美量(びりょう)を引提(ひっさ)げ、明日(あす)の八頭(おろち)を事毎射止める未知の痩躯を未然に知った…。生憶(きおく)を留(とど)める「旧(むかし)に好く観た不動の遊戯」を、安(やす)まる間も無く孤独を掠める〝不乱の遊戯〟に置き換え始めて、未知の鈍(くも)りに名取(なと)りを任せる澄ました遊戯は奔走して活き、過去を煩い過去を創れる無頼の定律(おきて)は無根を識(し)った…。
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…蟹の様(よう)な青髭男扮する、洗礼の園に居た岩のような老男が、何処(どこ)かの施設にて居り、俺はそこで初め女の従業員(詰り看護婦)に成って居たが、又、男の俺に戻って居た。戻ったが、従業員である事に変りは無かった。
未来ホームのような雰囲気も漂っていて、俺が女の従業員に成っている時(乗り移って居る時)、自分の上司として香水の緊(きつ)い初老の女が出て来た。
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独語(どくご)の概(おお)くを幻想(ゆめ)へ返せる無頼の自覚(かくご)は用へ赴き、一度掌(て)にした朝の勇気を無刻(むこく)に点(とも)して身辺(あたり)を棄てた。白亜(しろ)い孤独に文言(ことば)を載せ生く浮浪の小敗地(アジト)は陰府(よみ)へ降(くだ)って、一男(おとこ)の大口(くち)から延命(いのち)を煩う旧(むかし)の定律(おきて)に我慢が成った…。過酷に見得行く向日の様子が原始に還れる不意を訪れ、未刻(みこく)の見事へ現代人(ひと)を葬る幻(ゆめ)の腕力(ちから)へその実(み)を遣った。旧(むかし)に好く観た不利の様子は小母に棄てられ、孤独の小敗地(アジト)が展在(てんざい)して生く苦労の枯渇は〝在る事無い事〟無倣(むほう)に言った。俺はの背後へ小気味(こきみ)に宿せる不意の大手は震動して活き、旧(むかし)の生憶(きおく)が個々に安(やす)らぐ不用意さえ成る未活(みかつ)に基づく。現代(いま)を脚色取(いろど)る女性(おんな)の未活(みかつ)が俺の背後へ概(おお)きく棄てられ、囃し続ける未刻(みこく)の遊離は論理を忘れて決闘して活き、自己(おのれ)の既憶(きおく)を矢庭に掴める旧来独白(むかしがたり)の一定(さだめ)は、未(いま)に見詰めて旧(むかし)に掴める幻想(ゆめ)の白亜(はくあ)に積まれて在った。過去の将棋に自体(おのれ)が旅立ち、「旧(むかし)仕立て」がすんなり生くのは、自己(おのれ)の描写が演戯を止(や)めない粗暴の撤廃地(アジト)に遺った臣人(おみと)で、明日(あす)の景色を悠々幻見(ゆめみ)る素朴を相(あい)した宙(そら)への生憶(きおく)は、旧来独語(むかしがたり)に延々続ける浮遊の盲理(もうり)へその眼(め)を開(あ)けた。―――孤独の様子が宙(そら)へ観得行き神秘(ふしぎ)を仕立てた陽気を振ると、男性(おとこ)の自覚(かくご)が身重を募らす神秘(ふしぎ)の過憶(かおく)を劈き尽(き)って、明日(あす)へ活き尽(き)る不思議の八頭(おろち)は無謀を止(と)め行く無尽(むじん)を識(し)った。孤高の晴嵐(あらし)を一幻(ゆめ)へ惑わす旧い〝水面(みなも)〟は孤独を和らげ、昨日の感覚(いしき)に弱味(よわみ)を想わす旧(むかし)仕立ての自覚(かくご)の段では、人間(ひと)と現代人(ひと)とが一度に描(か)けない事実の描写が再三活きた。俺の小敗地(アジト)を無刻(むこく)に廻せる黄泉の私事(しごと)は空虚を着忘れ、真摯の生憶(きおく)に準じて止(や)まない悔恨仕立てが見様(みよう)を取り次ぎ、白雲(くも)の合間に世界が通ずる「向日」の生憶(きおく)は、幻想(ゆめ)に見積もる両眼(まなこ)を遠ざけ〝延々気取れる半ば〟を識(し)った。自己(おのれ)の労苦を司春(ししゅん)に射るうち「日溜(ひだ)まり」ばかりが小体(からだ)に巻き付き、幼い両眼(まなこ)に性(せい)を見て取る神秘(ふしぎ)の瞳(め)をした無根を知り付け、温厚(あつ)い経過(ながれ)に堂々観て生く孤高の一座(いちざ)は女性(おんな)を皆殺(ころ)し、白亜(しろ)い人煙(けむり)に〝奈落〟を想わす暗夜(あんや)の猶予を余儀無く識(し)った…。
一男(おとこ)の揺蕩(ゆらぎ)が一(いち)に吠えると…、邪(よこしま)ばかりにその眼(め)を開(ひら)ける「不活(ふかつ)に相(あい)した孤高の身重」を遠(とお)に忘れて旧(むかし)へ跳び発(た)ち、一人(ひと)の傘下へ活気を見果てる幻悪(げんお)の神から思考を魅せられ、透った〝宿〟には何にも保(も)たない出窓の呼吸(いき)など静かに発(た)った…。
温厚(あつ)い幻人(ひと)から「俺」が仕上がり〝不毛の一座〟を現代人(ひと)に見遣ると、陽(よう)を気取れぬ旧(ふる)びた成果を過去に置き去り憤懣さえ保(も)ち、宿借(やどか)り暮らしで精(せい)を出し尽(き)る不夜の別れは退屈しながら…、苦労話に精華(はな)を咲かせる無言の主観(あるじ)を逆さに観て居た。白亜(しろ)い帯(おび)から現代人(ひと)が漏れ出し旧い正義に未惑が発(た)つのは、旧(むかし)に好く見た過失の描写が無己(むこ)に居座り懐かしさを観て、生憶(きおく)に従う晴嵐(あらし)の内では日頃の生果が確実(たしか)を観て活き、旧い既憶(きおく)が更々流離う一人語(ひとりがた)りを延々しながら、幻想(ゆめ)の脆さに貴重を観て言う「明日(あす)の脆さ」を通感(つうかん)している…。無意(むい)に活き尽(き)る至高の独理(ドグマ)は、幻(ゆめ)に見図(みばか)る気楼を装い、紺(あお)い感覚(いしき)の不意を突かせぬ〝行方知れずの哀れ〟を尊(たっと)び、下降して生く進度(しんど)の塒は血色(ちいろ)に見立てる絹を纏った…。下降して行く幻(ゆめ)の調子は現代(いま)へ懐かぬ毒薬(くすり)を労い、現代人(ひと)を仕分けて無情を根差せる孤高の独理(ドグマ)をぽんと発(た)たせる、不意に活き尽(き)り陰府(よみ)を詠めない「不応(ふおう)の独気(オーラ)」をこの実(み)に観て居た…。孤憶(こおく)の順序が気相(けそう)に翻(かえ)らぬ未断(みだん)の感覚(いしき)を神秘(ふしぎ)に観ながら俺の心身(からだ)が自重を問い生く不義の温度は暗間(やみま)に立ち活き、現代人(ひと)の孤独を概(おお)きく見分ける不装(ふそう)の連日(ドラマ)を精神(こころ)に保(も)った。―――一女(おんな)の陽気が所狭しと暴れ果て生き、虚空を見上げる努力の生果(はて)には「俺」を嫌える質(しつ)を捥ぎ取り、空(そら)の涼風(かぜ)から白壁(かべ)を仕立てる未純(みじゅん)の成果を明日(あす)へと延(ひ)いた…。永久(とわ)に流行(なが)れた一人(ひと)の快無(オルガ)は「文字」を汲み取り故郷を乖離(はな)れて、孤独の寝屋から孤独が失(き)え行く斬新(あらた)な訓(おし)えを上手に紐解き、「階段」ばかりを寝相に見積もる貴重の快無(オルガ)を堪能して居た。無味の勝手に息衝きながらも〝不法の調べ〟は戦慄しながら、不義を保(も)たず真理(しんり)を跳ばせる不能の感無(オルガ)を絶頂させ得た。不倖(ふこう)を負わずに〝露骨〟を愛せる俺の無機には文言(ことば)が飛び交い、明日(あす)の〝表理(ひょうり)〟を堪能出来ない思考の自主(あるじ)は後悔しながら、不応(ふおう)の身許へ一層息衝く不覚の同調(シンパ)は活き活きしながら、過去を振り見て我が身を直(なお)せる「夜半(よわ)の空気(くうき)」が錯覚して居た…。
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何か、居室の見回りをして居たようで、事故でも起ったのか、慌ただしい中、俺が看護婦含めた従業員(介護福祉士も恐らく)達が、横に可成り広いフロアを走り回って、利用者が居る居室から利用者を連れ出して居るようだった。もしかするとそれは事故ではなく、何かの行事で誘いに連れ出して居るのかも知れなかった。俺が青髭男が居る居室から、青髭男がまだ寝たまま出て来ない事に気付き、変だと思って周りの看護婦に事の奇妙を伝えた後で居室へ入ると、案の定、青髭男は脳梗塞か何か、発作が起きたみたいで、ベッドに横になったままじっとして居た。
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