IBDを中心とした腸の超音波検査:新しいベストプラクティス

Ultrasound of the bowel with a focus on IBD: the new best practice

Ultrasound of the bowel with a focus on IBD: the new best practice | Abdominal Radiology

Abstract
炎症性腸疾患(IBD)は、終末回腸に好発し、消化管のあらゆる部位に罹患する生涯にわたる慢性疾患である。IBD患者は経過を通じて繰り返し画像診断を必要とするため、安全で、非侵襲的で、利用可能で、再現性のある方法が必要である。画像診断は診断時、定期的サーベイランス時、急性増悪時に必要とされる。超音波画像診断は、高い精度でこれらの要求を満たし、患者に広く受け入れられている。超音波は高解像度の画像を提供し、腸壁や周囲の軟部組織の詳細な評価に優れている。定期的なグレイスケールの腸管評価とカラードップラー画像は、現在では壁厚、腸周囲炎症性脂肪、血流に基づいて疾患活動性を評価する基準として受け入れられており、病期分類や病勢評価に非常に有用である。超音波による高解像度のリアルタイムダイナミックイメージングは、腸管狭窄に伴う蠕動運動障害や不完全な機械的腸閉塞など、形態的な詳細だけでなく機能的な詳細も示すことができる。
IBDの線維狭窄性合併症や貫通性合併症は、超音波検査で容易に評価できる急性または慢性の症状を伴うことがある。造影超音波や剪断波エラストグラフィーを含む超音波の新しいソフトウェア技術は、超音波を基本的な予備的画像診断技術から、IBD患者を管理するためのCTやMR腸管造影に匹敵する高度なモダリティへと変貌させた。腸管の超音波検査に関する我々の長い経験から、新しいベストプラクティスには、疾患のどの段階においても腸管の評価のための最初の検査として超音波検査が含まれることが示唆される。

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Abdominal Radiology 2025年2月号から、炎症性腸疾患(IBD)の超音波検査のレビューです。この分野は、日本では川崎医科大学の畠先生を中心としてかなり以前から行われてきたものです。近年では炎症性腸疾患の分子標的薬の開発が飛躍的に進歩してきたことから、その評価手段として超音波が注目されているのか、ちらほら論文を目にするようになりました。認識が間違っていいたらごめんなさい。腹部超音波検査を行って来た者からすると、IBDを超音波で評価するのは日常臨床のことで、今更感がありますが、消化管の先生が超音波診断学に新規参入したり、関心を持って頂くのは、とても嬉しいことかと思います。

 さて内容ですが、Ultrasound techniqueの章では、まずコンベックスプローブ、次に高周波プローブを使用し、回腸末端から肛門付近まで、長軸、短軸で系統的に観察すべきこと、その後に小腸は腹部を四分割してスイープすること、など、手技について記載されています。

 Bowel assessment: normal and abnormal bowelでは、Table 1 USGA classification systemが良くまとまっていてわかりやすいです。これは知りませんでした。簡単に書き写すと以下のようになります。
       分類
所見     非活動性      軽度       中等度     重度
壁肥厚    <4mm     4-6mm 6.1-8mm >8mm
カラードプラ 無し       点状       血管長が中等度  円周状
炎症性脂肪織 正常とほぼ同様  やや高エコー腫瘤 高エコー腫瘤 極高エコー腫瘤
造影超音波[dB] 無し-15dB 15-18dB 18-23dB >23dB

 最下段の造影の部分は症例毎の違いがあり、CTのような絶対値ではないので意味が無いと思いますが、他の部分は参考になります。周囲脂肪織が高輝度になる認識はありましたが、それも評価に用いるのは面白いと思いました。また急性期では高エコーに、慢性期では低エコーになることが記されています。カラードプラは重症度が増すにつれて連続性が高まり、腸管壁と周囲腸間膜に信号がみられるようになり、color Doppler comb signと言うんだそうです[24, 25]。腸管壁の破壊が進んで穿孔が生じると、肥厚した壁内にガス像が見られるのは深い潰瘍を示すこと、腸管壁が欠損して見えるようになること(Figure 4, 5)、などが綺麗な画像で供覧されています。

 Phenotypes of Crohn's disease and their importanceでは、Fibrostentotic/stricturing phenotypePenetrating phenotype の2つの形質に分類し、前者では腸液で満たされた拡張腸管、to-and-floの動きと狭窄部での壁肥厚が、後者では上記の穿孔所見や腸管外の膿瘍などがみられるという旨が記載されています。 

 Tumor mass lesions associated with the bowel では、炎症性腫瘤と腫瘍の造影超音波検査による鑑別が有用とあります。IBDに合併する腫瘍として大腸癌、NETがあります。

 Ultrasound software advancements contrast enhanced ultrasound (CEUS) and shear wave elastography (SWE)、CEUS quantiication technique、Ultrasound advancements for the bowel: SWE、CEUS and SWE in stricture characterization 
と続きますが、割愛します。

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